日々あんだら
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2017年11月14日(火) 喪中葉書



郵便受けに、見覚えのない名前の人からの喪中葉書が入っていた。
恩師の奥さまからだった。

その方は大学時代のゼミの教授で、2年間教えを受けた。
今までお世話になった何十人の先生の中で、本当に「恩師」と呼べるのは数人しかいないんやけど、
その方はその中の一人。

僕は「可」をかき集めてギリギリ卒業できたという、学業の面ではいわゆる不肖の弟子だった。
でも、先生の言葉はいくつも自分の中に残っている。

いつも仰られていたのが「腰は低く、志は高く」。
我々が言われたのは「30分話して僕の知らないことが1つも出てこなかったら、その人のことを『つまらん人やなぁ』って思うんです。僕の研究室にはいつ来てもらってもいいですが、僕の知らない話をなんでもいいから1つは用意してきてください」
なのでいつも研究室のドアを叩く前に話す内容を頭の中で整理する癖がついた。(笑)

他のゼミでは新ゼミ生を選ぶのは教授本人だったけど、先生は我々学生にそれを任せてくれた。
「君たちの後輩なんやから、君たちが選びなさい」と仰られて。
一つだけつけられた注文は「なにかひとつすごい人を選んでください」ということ。
「すごく頭がいい、でも、すごくアホ、でもいい。すごく真面目でもすごくええかげんでもいい。普通のやつはいらん」と。

論文指導でも、ご自分は数理経済学が専門なのに、我々がそういう論文を書こうとしたら嫌がられた。
曰く「君らが書くようなことは、僕には全部わかっとる。わかりきったことを延々読まされることほど苦痛なことはない。だから、多少荒唐無稽でもええから、僕の固くなった頭では浮かばないような自由な発想で書いてください」と。
なので、我々のゼミからは、学部の論文審査で上位の論文はめったに出なかった。(笑)

我々の卒業に際して贈ってくれた言葉は「阪神大震災の時、高速道路が横倒しになったやろ?あれは縦揺れは想定していたけど、横揺れは想定していない設計やったからなんだそうです。無駄がないものは人でも物でも、想定外のことに弱い。君らは無駄なことをたくさんしなさい。それが君らの強さになる」
この言葉は今でも僕の行動指針の一つで、写真も山もこの言葉のおかげだと思っている。

そしてその2年後、定年まで数年を残して母校を退官され、新興の大学へ移って行かれた。
「ここにいたら自分のやりたいことはなんでもできるし、会議で意見を言うたらたいてい通る。でもそれってつまらんやろ?」と言い残して。
本当に、好奇心とユーモアと柔軟性を持ち、それを持ち続けようとされている先生だった。

卒業してから何年かはOB会でお会いしてたけれども、現役生がいなくなってOB会も途切れてしまった。
またいつかお会いしたい、と常々思っていたんやけど、年末年始のご挨拶を送る程度だった。
そして、もう会えなくなってしまった。

会いたい人には会いたい時に会いに行かなあかん。
人生何回目かわからない後悔。

林敏彦先生のご冥福をお祈りします。


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