| 2026年10月21日(水) |
アジアパラ大会 ブラインドフットボール 日本−イラン |
私はフットボールファンだが、好奇心強めの人間として様々な障がい者フットボールも観てきている。が、パラリンピック種目のブラインドサッカーは未見だった。 現在行われている。名古屋アジアパラ大会。アジア大会と同じタイミングで行われる障がい者のための総合国際スポーツ大会である。ある程度メジャーなスポーツならば、その障がい者スポーツもまた盛んに行われており、パラリンピックだと車いすテニスや車いすバスケが有名だ。フットボールにも様々な障がい者スポーツがあるが、パラリンピック採用種目は1スポーツ1種目。フットボールの場合はブラインドサッカー。今大会での表現ではブラインドフットボールだ。会場は名古屋駅から中央本線で少し入った鶴舞(つるまい)駅そば、テラスポ鶴舞(つるま)だ。公園内のピッチ。ブラインドフットボールはフットサル大の20×40メートルのサイズで行われるので、グラウンドを狭く切って使う。したがって余った人工芝部分は余剰スペースとして使われる。
主たるルールを説明しよう。キーパ1人とフィールドプレーヤー4人から成り、攻撃する相手ゴール裏にガイドという目の見えるコーチが指示役になる。ピッチ横からは監督も指示する。またキーパーも見える人(弱視含む)なので、要するに三か所から指示が飛ぶ。キーパーのプレーへの直接関与はかなり制限されていて、もちろん自らドリブルで攻め上がることはできない。フィールドプレーヤーはアイマスクをつけて全く見えない状況でプレーする。ボールは中に鈴があり、転がせば音が鳴る。ボール持っている選手に近づく際は「ボイ!」(スペイン語で「行くぞ!」という意味)という声をかけ、見えない中での激しい激突に備える。とはいえ、激突は避けられない競技であり、勇気を求められる。両足に交互にタッチするドリブル主体で、パスは相手が見えないので、指示に従いサイドチェンジか、タテに蹴り出すパスのみ。サイドは腰高の壁に囲まれ、壁にぶつけて外に出ないので壁付近での激突も多い。コーナーキックはパスの出しどころが分からないので、守備側はキーパーとフィールドプレーヤ計4人がコーナーに近づいて守る。もちろん一定の距離は離れなければならない。ゴールキックではなく、キーパースローまたはゴールクリアランスから再開するが、どうやらノーバウンドでハーフウェイラインを超えると「オーバースロー」の反則である。キーパースローの際はフィールドプレーヤーが壁際の深くで待ち、一気に進むチャンスである。 選手個人については、まずマッチョであることが求められる。激突が多く、身体をこじ入れるドリブル主体だからだ。そして想像力が必要だ。通常の?フットボールも想像力(創造力)のスポーツだが、ブラインドサッカーは音で位置を判断し、正確にドリブルのコースを想像しなければならない。そして精神力が必要だ。見えない中集中し続けるスポーツだけに消耗が激しいだろう。 部外者から見て、圧倒的な習熟性に驚かされる。私の考えでは障がい者スポーツは競技者に同情して観るものではなく、高度な競技レベルに感嘆して観るものだと思う。想像力があるものにとっては彼らは高度な能力を備えたアスリートだ。障がい者がただ頑張っているという程度のものではなく、才能あるものが鍛え抜かれてこの場にいる。以前ブラインドサッカー選手が見えない中で正確に円形をドリブルできるという映像を見たことがあるが、そんなことよりも遥かに高度なプレーを見せている。目の見える人の指示通りにプレーなんてスポーツじゃない。 観客は声を出してはならない。目の見えない、音が頼りのプレーヤーにとって邪魔だからだ。思わず出る歓声はアリらしいのだが。この点私はうっかり歓声を上げていた。
さて試合である。第1位試合は韓国対タイ。遅刻した。世界ランキングではタイのほうが上で、実際実力ではタイが上だったが、第1ピリオド(前半)は0−0。前後半それぞれ20分間のランニングタイムで行われる。第2ピリオド、タイが中央ドリブルから正面で左に切り返しシュートが決まり0−1。以降もタイが押して結局0−1で勝利した。
直射日光がきつく、第2試合は日本対イランで混むだろうし、暑くて前半で帰ろうと思った。サポーターが何故かゴール裏ではなくメイン(ベンチと逆側にしか席がないのでバック?)に陣取り声を出すので邪魔でイランサイドに移動した。観客もイランサイドのほうが多い。サポーターが鬱陶しいのか、単に入口に近い自由席だからか?
日本対イランはスターターは日本のほうがマッチョである。イランとは男子A代表や男子フットサル代表では日本と宿命のライバルだが、イランの最大の武器はアーリア人特有のゴツさだ。筋肉ではなかなか勝てない。だがブラインドサッカーについてはイランの福祉が手厚くないのか?競技人口が多くないのか?なんと筋肉で日本が対抗できている。さらに世界ランキング3位の日本はパスが他国とはレベルが違う。サイドチェンジがぴたりと決まる。ただイラン相手だと身体をこじ入れるドリブル成功とまではいかない。前半残り数秒で日本の右コーナー。ゴール裏のガイドがシナリオを伝える。そのシナリオ通り、コーナーからドリブル、8番が左足を振りぬき1−0と日本先制して前半終了。
しかし後半はイランがスターターの8番に加え、ゴツい5番を前線に入れてパワフルなドリブルを仕掛け、日本も止めきれなくなる。そしてついに8番がドリブルからミドルを右隅に叩き込み1−1へ。日本も盛り返し、互角の展開になる。そして残り1分48秒、日本のキャプテン10番が叩き込み2−1へ。残り時間、日本が上手く時計を進め2−1で日本が勝利、決勝進出を決めた。
ハーフタイムで帰るつもりが熱気に当てられて最後まで見た。なるほど、高度な専門性を持ったスポーツで、しかも聴覚障碍者のデフサッカーと比べて一目瞭然の違いがある。パラリンピック採用も納得である。なかなかないだろうが、機会があったら是非一度見てほしい。
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