あれからいくつもの季節が過ぎて、カカシにもガイにも、いろいろなことがあった。ガイも上忍へ昇格し、お互い担当上忍となり、部下を持ち、自らの技を彼らに伝授して・・・。 ガイの春の風物詩の方も、作ったり、作り損ねたりした。 去年はフキノトウを口にした覚えがない、とシカマルは言ったが、カカシもそうだった。ガイはその頃、懸命なリバビリに取り組んでいて、季節を感じるどころではなかったから。 ・・・それだけの心の余裕が、なかったから。 幸い、木ノ葉の里は戦禍を逃れていたから、カカシは忙しい日々の合間にあの居酒屋を訪れ、店主に直接、ガイの負傷と無事を、知らせることが出来た。 店長は手放しで喜んでいた。情報が錯綜していて、一時はガイが戦死した、と言う誤報すら流れていたため、心配していたのだと言う。 ただ、彼が毎年フキノトウを収穫していたと言う秘密の場所とやらは、戦争のせいでかなり荒れたらしい。その年は何だかんだで、いいものは収穫できなかった、と嘆いていた。 『アタシもフキノトウも待ってるから、また作ってって伝えてくれない? ガイちゃんに』 知り合いが大勢亡くなって辛いから、病院には行きたくないのだ、と、店長は苦く笑った。 ------------------------------------ そして今年。 火影となったカカシは忙しい毎日の中、たまたま外に出る機会があった。その際、徐々に暖かくなりつつある風の中に、懐かしい春の香りを嗅ぎ分けたのだ 不意に、あのほろ苦い味噌の味を口にしたくなって。 けれど自分は火影邸に詰めている身だし、ガイはガイで車椅子ながらも上忍として任務をこなしている毎日。とてもあの居酒屋に、揃って出かけられる状況ではない。 半分諦めかけていた矢先、本日のガイ班任務のドタキャンがもたらされたのである。 ───このチャンスを逃したら、来年まで巡ってこないかも。 そう思うといてもたってもいられず、急いで居酒屋の店主に連絡を取った。今年のフキノトウの出来はどうなんだ、と。・・・わざわざ手紙をしたためて暗部に託したため、何かの極秘暗号と勘違いされそうになったのは、余談である。 すると、去年の分を取り戻すぐらいに豊作だ、と返事が来たのだ。 「ってわけで、話をつけた。ガイ班は店長と一緒に、フキノトウの収穫とその後のもろもろの処理をお願いねー。調理にはココの台所、貸すから。後片付けもお願いv」 「「「はあっ!?」」」 一見、下忍が割り当てられそうなこの唐突な任務に、ガイ班は皆、豆鉄砲を食らった鳩、みたいな表情になる。 「カカシよ・・・何もそんな任務、俺たちに頼まずとも・・・」 「他の班には無理だからね、この任務。 まずは、火影邸に出入りできるぐらい信用の置ける立場じゃないと、ダメだし」 「信用・・・あたしたちはそれだけ信用されてる、ってことなんですねv」 「当然だよー。それに、フキノトウの取れる場所って一応、店長の秘密の場所らしいから、そっちとも馴染みがないと教えてもらえないだろうし。あ、もちろん、他言無用だからね」 「も、もちろんです! 男に二言はありません」 口八丁に持ち上げれば、若手二人はあっさり陥落。 「それにあいにく、他の班は別の任務で全員、出払っちゃってるの。今日戻ってこられるかどうかも、怪しいし。おまけに、春の天気って変わりやすいでしょ? 今日は晴天に恵まれてるけど、明日から崩れてくるって話だし」 「むむ・・・仕方ないか」 まるであつらえたような状況に、さしものガイもそれ以上口を挟まない。 一方、まだまだ少年の域を脱していない2人の部下は、何やら楽しそうな素振りだ。 「それにしても、フキノトウかあ・・・ネジが結構、気に入ってたよね」 「そうでしたねえ。一度お弁当に焼き味噌を、手ずから作ってきたこともありましたし」 「「え?」」 思いもよらない言葉に、カカシとガイは目をしばたかせる。 「そんなことあったの? ガイ」 「いや、俺も初耳だ。・・・本当なのか? テンテン」 「え、あれ? ガイ先生は知らなかったっけ? お弁当、ってことは、里内にいた時よね?」 「でも、確かにあの年の春は、ガイ先生は特別任務だからって、僕たちとは別に里外に出られてたことが、何度かありましたから」 「ああ・・・あの頃のことか・・・」 心当たりがあったらしい。ガイは亡き弟子の隠れたエピソードに、少ししんみりとした表情となった。 「まさか覚えていたとはな・・・実は一度だけ、こいつらを連れてあの居酒屋で、夕飯を食ったことがあったんだよ。で、例のごとく頼まれて、焼き味噌を作ってやってたら、あいつだけが興味を持ったんだ」 「ネジ君だけ? リー君たちは?」 「あたしたちは一応は食べては見たけど、あんまり好きにはなれなかったんですよ。苦かったから」 「僕も。効き目が滋養強壮ぐらいだし、無理に食べなくてもいいんだぞ、って先生が言われたので、つい」 ただ、その中でネジだけが、少しずつだけではあるものの、箸をつけていたのだという。あれだけダメ出しの傾向があったのに、今になって思えば確かにあまり文句が出ていなかったな、と、ガイは感慨深げだ。 「だが、特にネジに作り方は教えなかったんだがなあ・・・」 「じっと見てましたよ、あの時、先生の手元を。僕、覚えてます」 「ただし、何を食べさせれるのか心配だ、って雰囲気でしたけどねー」 「ガイ・・・教え子たちに日頃、一体何食べさせてたわけ?」 「失敬な。食えるものしか食わせとらんぞ、俺は」 「ええ、もちろんですとも!」 「主にカレーとか、カレーとか、カレーですけどね」 「・・・・・」 「言うね、テンテンちゃん」 そして、リーたちの話によれば、翌年の春。里内で修行の日、ネジが件の焼き味噌をおにぎりと共に、持参したのだそうだ。そして、どうやらその様子から察するに、ガイに味見をしてもらいたかったらしい。 もう少し自分好みにしたいから、コツを知りたい、と。 だがその直前、肝心のガイは急遽特別任務とやらで、里を離れてしまっていたのだ。それも、長期にわたって。 だから結局、ネジの手作りの焼き味噌が、ガイの口に入ることはなかった。リーたちも、何となく遠慮して、食べようとはしなかった。 『ガイがどんな気持ちで、これを作っていたのか。 ほんの少しだけではあるが、俺にも分かる気がしたよ・・・』 ネジが焼き味噌を持ってきたのは、それっきり。 だが、おにぎりと一緒にじっくりと味わいながら、彼はそう呟いていた───。 「その時僕、どういう意味ですか? って聞いたけど、ネジは教えてくれなかったんですよね。ガイ班にいれば、そのうちに分かるさ、って」 「そうそう。けど、あたしにも未だに分からないんですよ。ガイ先生、どういう意味なんですか?」 「・・・・・・」 首をかしげるリーとテンテン。彼らの様子に、カカシはガイと顔を見合わせ、あいまいに笑うしかない。 きっとネジも、若くして上忍にまで昇りつめた彼も、気づいたのだろう。 天気の良い、春に、フキノトウを、収穫し、調理する───たったそれだけの一連の作業が、どれほどかけがえのない平和の象徴なのか、と言うことに。 だから、こればかりは、言葉で説明しても意味はない。 「だからだ。それを今から、確認しに行くんだ。さあ、出かけるぞ。リー。テンテン」 「いってらっしゃい。お昼は店長が、お弁当用意してくれるってさ」 「ええー、つまり、午前中いっぱいは収穫に時間をかける、って意味ですかあ?」 「修行ですよ、テンテン! そう思えば、苦にはなりませんよ、きっと」 「リーの言う通りだ! 天気もいいし、たまにはこういうのも楽しいぞ!」 門の前で待つ『依頼人・その弐』の元へ、部下を引き連れ赴こうとしたガイだったが、不意に振り向いたかと思うと、ぽつり、カカシに告げた。 依頼人・その壱、の六代目火影に。 「カカシ。・・・スマンな。ありがとう」 「俺も食べたかったんだよ。気をつけて行っといで」 木ノ葉随一の機動力は伊達ではなく、言うが早いか3人は姿を消す。 彼らを見送り、火影邸へ引き上げようとしたカカシは、ふと、僚友の残した言葉に、苦笑するのだった。 「スマン、ってのはともかく、ありがとう、って・・・木ノ葉の平和をありがとう、って意味もあるのかね、ガイ?」 ───それは、お互い様デショ・・・? そうして。 春の香が立ち込める中、騒がしく執務室へとやってくる一同の気配。 「おーい! 今年はなかなか、いい出来のが出来たぞ、カカシ!」 「あれ、シカマルくんもいらっしゃったんですか」 「お邪魔するわよお。あらあら、本当に火影様やってるのねえ? 元・写輪眼サマは」 「平和な泥だらけ、って言うのも、たまにはいいもんですねー。あとで銭湯に直行だけど」 「ご苦労様、みんな。おっ、気がきくねえ、ガイ。ちゃんと白米も炊いてくれてたんだ」 「さすがに昼間から酒、というわけにはいかんからなあ」 炊き立ての白米をおにぎりに、焼き味噌をつけていただく。 これに勝る平和が、そうそうあるだろうか? 「・・・うん、随分久しぶりだけど、美味しいねv」 「ホントだ・・・アタシの味覚、変わったのかしら? あんなに苦いと思ってたのに」 「大人の味ですねえ。意外にいけます」 「お店ではお茶漬けにもするのよ? シメにサイコー! ってねv」 「それも美味しそうだなあ」 「・・・カカシさん、今は執務中ですから。ンな恨めしそうな顔、しないでくださいよ」 「そうだぞカカシ。何のために白米を炊いたと思ってるんだ」 「分かってるよー二人とも。言ってみただけだってば」 ───あの日、危機的状況の中、うちはマダラの前で。 『木ノ葉の碧き猛獣は終わり 紅き猛獣となる時が来た』 そう、ガイは覚悟を決めていたけれど。 「ガイー」 「何だ? カカシ」 「やっぱりお前には、紅き春より、碧き日々の方が似合うンじゃない?」 カカシがこめた言葉の意味を正しく知るのは、カカシ自身とガイ、そうしてあの場に居合わせたリー、の3人だけ。 でも。 「・・・そうだな。願わくばこの碧き春が、出来うる限り長く続くよう、励むだけだな」 ガイがそう答えるのに、だがこの場にいる皆が、同意するのだった。 フキノトウの花言葉は、待望、愛嬌、真実は一つ。 そして───仲間。 ■終わり■ --------------- 実は別所には、フキノトウの別の花言葉について、短く解説してあります。できたらあっちも、読んでくださいねーv CMでしたvv
「ガイちゃんなら来てないわよお?」 任務完了の報告を滞りなく済ませ、開放されたカカシはとりもとりあえず、ガイの行きつけのあの居酒屋を訪れた。 ちょうど夕刻に差し掛かる頃で、営業開始の暖簾を用意している店主と、実に1年ぶりに顔を合わせたところ、開口一番、そう言われてしまった。 とりあえずお入りなさいな、と促され、店内に足を踏み入れたところ。 「・・・・・この香りって・・・!」 「断っておくけど、ガイちゃんには今年まだ、作ってもらえてないのよねえ。でも、お客さんからの注文があるし、今回のは仕方なくアタシのお手製、ってワケ」 嗅ぎ覚えのあるフキノトウの香りに、思わずその場に立ち竦む。が、店主の告白にどこか力が抜けて、そのままカウンター席に陣取った。 簡単な料理を注文したものの、何から聞けばいいのか躊躇しているカカシをどう思ったのか、店主はどこか痛ましい表情で話しかけて来た。 「ここのところあなた、ガイちゃんとずっとすれ違いばっかりだったんですって? 体が鈍る、とか言って、退屈そうだったわよん」 「・・・来てたの、あいつ」 「一応常連だしねえ。けど、それも1週間も前の話。詳しくは教えてくれなかったけど、特別任務を命じられたとかで、しばらくは戻れない、って言ってたわ。 折角の花見の時期なのに、帰って来る頃までには散ってるだろう、って残念がってたわねえ」 「・・・・・」 カカシが里を出た頃は、桜はまだ蕾のままだった。そして戻って来た今は、ほろほろとほころび始めていた。満開はこれからだ。 その桜が散るまでにガイが戻らない、と言うことは、相当長い期間任務に縛られることを意味する。 「・・・けど、野生のフキノトウは出始めているよね? ガイに例の焼き味噌、頼まなかったの?」 つい咎めるような口調のカカシに、店長は難癖には慣れているのだろう、軽く肩をすくめて見せた。 「あなた、よほど木ノ葉から離れていたのね。道理で見かけなかったはずだわ。 あのね、里はここのところずっと雨が降ってて、収穫なんか出来なかったの。ガイちゃんも何かと、忙しかったし」 「・・・つまり、店長があいつに焼き味噌をせがむのは、天気が良くてフキノトウが取れて、ガイの体と時間が空いてる時期に限られてた、ってワケ?」 「チッチッチッ。甘いわね。写輪眼ともあろう男が、肝心な条件を忘れてるわ」 もったいぶりながら言葉を切り、出来上がった料理をカカシに手渡してから、厳かに告げられる店主の言葉。 「最大不可欠な条件、それは、ガイちゃんが無事で、心身ともに健康であること」 ───ああ、やっぱり。 ここの店にとって、フキノトウの焼き味噌はつまり、ガイが無事であることの証、みたいなものだったのだ。 忍をやめたと言う店長はともかくも、ガイがこれほど香りの高い食材を扱うとなると、さまざまな意味で慎重にならざるを得ない。 調理を行なう手が無事なのは言うに及ばず、ガイに血生臭い任務が割り振られていないことが、最低条件。任務直前でも、任務直後でもダメだ。 直前なら、不自然に強すぎる残り香が体につき、隠密を必要とする任務に支障をきたすかもしれない。あれほどカレーの好きなガイが、重要任務の前後には決してカレーを作らないし口にしないのと、同じ道理だ。 そして直後だと、体にまとわりついた血の香りが、折角のフキノトウのいい香りを、台無しにしかねないから・・・。 あの草むらで、フキノトウを摘むのをやめた時、カカシはそのことに気づいたのである。 ガイのお手製のあの焼き味噌は、彼が束の間ながら、当面の平和を勝ち得た年のみ、振舞われるものなのだ、と。 「・・・アタシがまだ忍やってた時・・・あ、結局下忍止まりだったんだけどね、色んな任務してて。ちょうどやっぱり下忍だったガイちゃんと、知り合ったのよ」 すすまないまでも料理に箸をつけたカカシの傍で、店主は昔語りをする。 「ひどい戦闘があってね。みんな全滅するかも、って覚悟したぐらいに、ひどいの。けど、ガイちゃんだけは前向きでねえ。 『絶対に生きて帰るんだ、だから皆も頑張れ!』 って叱咤激励されちゃった」 「はは、ガイらしいな・・・」 「でしょでしょ? おかげで全員、無事木ノ葉に帰り着くことが出来たんだけどね」 見れば店長は、自分で作ったというフキノトウの焼き味噌を、手近な器に盛り付けている。 「その時のアタシ、結構ヤバい怪我してて。もし意識を失っちゃったら、そのままこの世とはサヨウナラ〜、って状況だったの。だから、ガイちゃんってばアタシに肩を貸しながら、何かと色々話しかけてくれててね、意識を途切れさせないようにしてくれてた」 そうして、見栄えだけはガイの作ったものと遜色ないものを、カカシに差し出した。 「その時に話してくれたことの1つが、このフキノトウの焼き味噌の話。ガイちゃんのお父さんの好物だったんですって?」 「そう、聞いてるよ」 「任務で収穫の手伝いに行った時、そこの農家の人から作り方を教わったんですって。 あんたたちがこの辺を守ってくれてるから、今年もこの平和ないい香りと再会することが出来たんだ───って、そのお礼に」 「・・・それで?」 「何となく、察してるでしょ? その思い出話聞いてるうちに、これ以上ないってご馳走に思えてさ。食べてみたいな、ってアタシがつい言ったら、『生きて帰ったらいくらでも作ってやる』って、ガイちゃんが約束してくれたってワケ」 「それを律儀に、今でも守ってるわけだ、あいつは。・・・マメだねえ」 ───自分以外の人間にも、相変わらず熱血で情熱的な態度をとってたんだ。 それが微笑ましくて、それでいて少し悔しい気持ちもして。 カカシは軽く両手を合わせてから、店長お手製とやらの焼き味噌を口にした。 似た香りで、似た味、似た苦さ。 それでもやはり、あの時食べたものとは何となく、違う味。 「これはこれで、結構美味しいんだけどなあ・・・」 「でしょ? でもどこか、味気ないのよねえ」 アタシの熱血と根性と青春が足りないのかしら? と本気で首をかしげる店長に、カカシは思わず吹き出す。 ───任務は無事遂行したものの。 ガイが両手に大火傷を負い、木ノ葉の病院に担ぎ込まれた、とカカシが聞いたのは、それから10日後のことだった。 ------------------------------------ 「あの・・・カカシさん?」 「何? シカマル? その書類にはちゃんと、サイン入れたデショ?」 「いえ、そのことじゃなくて・・・」 その日。 六代目火影として、執務室でさまざまな雑務を進めていたカカシは、彼の側近となった奈良シカマルに、それは怪訝な目を向けられた。 何かしくじりでもしただろうか? と首をかしげていると、「プライベートに口出ししたくはないんスけど」と前置きした上で、シカマルはぼそぼそ、と言葉をつなげる。 「その、さっきからこの辺一帯に漂いまくってる、青臭いっていうか、独特の匂いが気になって。・・・何なんスか?」 「え? ああ、これ? ゴメンゴメン、すっかり鼻が慣れちゃったから、意識してなかったよ。ひょっとしてシカマル、こう言う香りって苦手な方?」 「苦手、ってほどじゃねえけど。・・・漢方薬でも煎じてるとか?」 「漢方薬、ねえ。まあ、広い意味では、似たようなものかもしれないけど」 ───ナルトたちと比べて随分大人びていると思ったんだけど、意外にそうでもないってことね。いい香り、って思えるには、もう数年必要ってトコロ? 何だかんだ言って、シカマルもまだまだ青年の域なんだな、と、ちょっとだけ微笑ましくなるカカシである。 「どっちかと言うと、ご飯のお供というか、酒の肴、の類だよ。ガイに頼んで、厨房で作ってもらってるんだ」 「・・・ちょっと待ってください。ガイ班って、今日から短期の里外任務のはずじゃ」 「あーそれね。今日になってドタキャンされちゃって。いい迷惑だったよ」 もちろんキャンセル料はたんまりせしめたけど、とカカシが浮かべた黒い笑顔に、シカマルもそれ以上は突っ込まない。 「・・・で、折角ガイの体が空いたから、どうせなら、って俺が依頼したんだよ。材料調達から後片付けまで一式、全部やってくれ、って。ガイ班総動員で」 「仮にも上忍に、腐っても火影が、何て気楽に依頼してるンすか」 「腐っても、って・・・何かトゲを感じない? その言い方。 けどその分だとシカマルの家じゃ、今の季節食卓に出さないってコト? ヨシノさんなら手ずから、作ってくれそうだけどなあ」 「は? 俺んちの食卓に、っスか? 何を?」 「ヒントは、この香り。それと、今の季節限定の食材。・・・さすがの木ノ葉一の頭脳派も、分からないかな?」 「変なことで挑発しないでください」 半分からかわれているのを察したのだろう。目をつぶって春の香りを確かめながら、頭のデーターブックを総動員した後、おもむろにシカマルの口を突いて出た、言葉。 「フキノトウ・・・か?」 「ごうかーくv やっぱり君の知識の泉は広いねえ」 「それ、単にオッサンくさい、って言われてる気、するンすけど。 ちなみにうちでは、おふくろが天ぷらにします。揚げたてならそこそこいけるンすけど、冷めると結構苦いから、俺はあんまり食わねえな」 もっとも、と、切ない思い出にかられたらしく、少しだけシカマルの顔がうつむき加減になる。 「親父は、好きだったみたいですね。そう言えばこの季節、親父が家で夕食をとる日は決まって、食卓に並んでいた気がします」 「・・・そっか」 「去年やおととしは・・・どうだったかな。あの頃は色々といっぱいいっぱいで、食欲とかあんまりなかったから、出てなかったかも」 精をつける、と言う意味でも、息子が苦手なものを食卓に並べるような母親では、なかったろう。きっと、少しでも箸がすすむよう、好きなものばかり作ってやっていたに違いない。 今になってその配慮に気づいたと見えて、一瞬惜しむような表情を浮かべて両眼を閉じ。 再び開いた時には、シカマルにはいつものけだるそうな目が戻っていた。 「・・・それで、カカシさんのトコはどうだったんスか? 何か、味噌の匂いまでしてるけど、そう言う調理方法だったとか?」 「違ーうよ。俺の懐かしの味じゃなくて、あいつの親父さんの好物」 「は? ガイ先生の親父さんの味を、リクエストしたんスか? 何で?」 「んー。平和になったなあ、って思ってねえ」 「?????」 さすがのシカマルにも、その辺の事情は推理できないだろう。情報が足りなさ過ぎて。 ───あの年の晩春。 何とか時間を見つけてカカシが見舞いに訪れると、ガイは病室で食事の真っ最中だった。 指に巻かれた包帯と痛みに悪戦苦闘しながらも、戸口の友人の姿を見つけた途端、いつもの開けっ広げな笑顔を向ける。 『火遁使いがいたんだって?』 『おうよ。結構ヤバかったな。何せ火に邪魔されて、なかなか近寄れなかったんだ』 『・・・どうせお前のことだ。無理やり火の中に突っ込んで、突破口を開いたんだろう?』 『さすがだな、そこまで見抜いているとは。それでこそ、マイ・ライヴァルだ!』 つい恒例のナイスガイ・ポーズをしかけて、指の痛みがぶり返したらしい。「痛くないぞおおおおっ!」と、無駄な気合を入れるのを、カカシはどこか安堵した気持ちで眺めていた。 ───おそらくは、火遁使いが一番の難物だったのだろう。 むろん敵が単独で行動するわけもないから、他の仲間たちは別の忍たちからの攻撃をしのぐのが、精一杯で。何とか迅速に動けるガイが、やや強引な方法で火遁使いを倒した、といったところか。 両手指の大火傷は、その代償だ。 分かっている。それしか方法がなかったのだ、ということは。 けれど、もう少しやり方を考えろ、と思わずにはいられない。 そうでなくても、もともと体術使いは直接的な攻撃な分、ダメージもまともに食らってしまうのだから。 『・・・今年はもう、例のものは作ってやれないなあ・・・』 味気ない病院食に、記憶が刺激されたのか。ボソリ、と呟くガイ。 『命あってのものだね、だろ? 店長も分かってくれるんじゃないの』 『そうは言っても、この機会を逃したら、次は1年後だ。それも、作ってやれるかどうか、約束できるものでもないし』 悔しそうに呻くガイの横顔を見ながら、カカシは改めて確信する。 やはりガイにとっても、フキノトウの焼き味噌は、平和な春の訪れの証だったのだ、と言うことを。 あれだけ渋々、と言う体を装いながら。 まるで、分かる者には分かる、合言葉のように。 だからこそ、店を訪れた多くの客が、店長の作ったものより、ガイのものを好んだのではないか。 『・・・あのさ。妙にこだわるよね。親父さんの好物だ、って言ってたけど、ダイさんはひょっとして毎年作ってたわけ?』 『言われて見れば・・・そうだったな。下忍止まりだったから、よほどのことがない限りめったな任務は回ってこなかったらしい。ほぼ毎年、食ってたっけ・・・』 その思い出故に、毎年の春の風物詩として、ガイは覚えているのかもしれない。子供の頃の出来事は、1年1年が全て大切な宝物なのだから。 『・・・現状を嘆いても仕方がない。もっと俺が、強くなれば良いだけの話だなっ』 退院したら早速修行せねば、と。 ガイが出した結論は結局、呆れるくらいいつも通りのポジティブなものだった。 ■続く■ ※スミマセン・・・後編まであります・・・
実は別所にも投稿してあるんですが、こちらにも。いーかげん更新しないと、投稿できなくなるかもしれないし。 以前UPした「夏の色」及び「いっしょにごはんを食べようか」と、時間枠は一緒と思ってください。ただ、【鳴門】完結後に発表された公式小説の設定を一部使っているので、おそらく色々と矛盾があります。大目に見てください。m(__)m ※一応、念のため。 作中で引用している文章は、清少納言の「枕草子」の一文です。「枕草子」には著作権は発生しませんので、本文の引用自体は著作権違反ではありません。 ※タイトルを「はるのかはあお」と読むか、「はるのかはみどり」と読むかは、読者次第です。「木ノ葉の気高き碧い猛獣」なんだから「あお」なのかも知れませんが、言葉的には「みどり」でもいいな、と思ってしまったもので・・・優柔不断でゴメン★ ※久々に、長すぎました。前後編になります。 ---------------------------- 春の香は碧 木ノ葉の上層部に命じられ、某国へ逃れようとした抜け忍を『処理』し。 少しチャクラを消耗した はたけカカシが、開(ひら)けた草むらで大の字になって休憩している時に、それは漂ってきたのだ。 その、どこか懐かしく感じられる、青い香りが。 体を起こすのも億劫で、横たわったまま視線を右へずらせば。 そこにあったのはまだ蕾が開ききっていない、フキノトウの群生。 ───そうか。もうこんな季節だったんだな・・・。 ふと、同期で自称・ライバル、マイト・ガイの明るい笑顔が脳裏に蘇り、カカシは静かに目を閉じた。 確かあれは1年前のこと。 いつも通っている飯屋が臨時休業で、カカシがすきっ腹を抱えて夜の街を歩いていた時に、ちょうど任務明けだと言うガイに出くわした。 「空腹中に勝負しても、そんなのホントの勝負じゃないデショ?」 相も変わらずけしかけられる恒例行事を、そう言ってかわし。ほとんど話のついでに聞いたのだ。どこか良い雰囲気の食堂はないか、と。 すると、やはり今晩は外食予定だったガイから、有力情報が与えられたのだ。 「だったら、今から俺の行きつけの居酒屋へ一緒にどうだ? ご馳走と言うほどのものは出さないが、馴染める店だぞ」 空腹に耐えかね、そう誘われるままについて行ったカカシだったが、店の暖簾をくぐったところで我に返る。 ガイの行きつけなのだから、彼のような血の気の多い男たちばかりが、集う場所なのではないのか? ───疲れてる時に、熱血はゴメンなんだけど。 カカシは若干及び腰になったが、そこそこ繁盛している店らしくカウンターしか席は残っておらず、渋々座ったそこで、店の主に引き合わせられた。 元・忍だと言う店主は、自分たちとそう変わらない齢で、浅黒く日に焼けた男のくせに、わざとらしい女言葉を使う人物だった。何でも、特にソッチの気があるわけではないのだが、柔らかいこの口調の方が変にトラブルを招かなくて、便利らしい。 とりあえず食べられるものを。 いくつか料理を頼んで一息ついた頃、そう言えば、と、その店主がガイに話しかけた。 「ねえねえガイちゃん、もう春でしょ? 材料揃えてあるから、例のもの作ってくれなあい?」 「・・・例のもの?」 「またか? いい加減、作り方覚えたらどうなんだ。教えただろう」 「でもお、やっぱりガイちゃんの作ったものの方が、評判イイんだってばあ。アタシが作っても、どこか味が違うのよ。ね? 今晩もビール1杯、お礼に奢っちゃうし。そっちのお兄さんの分も、サービスするわよおん」 「何かよく分かんないけど、ガイくーん、俺にビール奢ってv」 「カカシ、お前な・・・。しょうがない、今日だけだぞ?」 「とか何とか言っても、毎年1回は作ってくれるんだから。すっかりウチの風物詩よねえ」 「勝手に決めるな。ったく、今度はバイト料とってやろうか・・・」 おそらくは毎年、繰り返されているやり取りなのだろう。押し切られる風を装いつつも、どこか面映い表情のガイは、慣れた手つきで店のエプロンを身に着けた。 そうして、興味津々のカカシの目の前でガイが作ったのが、フキノトウの焼き味噌、だったのだ。 ミキサーも何も使わず、洗ったフキノトウをまな板の上で荒いみじん切りにし、味噌と食用油と酒を適度に合わせ、そのまま包丁でたたく。 その間に店主がいそいそと、浅く広い皿にアルミホイルを覆うように敷き、その上に薄く食用油を塗り始めた。 そうして手渡された土台に、ガイが左官よろしく、包丁をこてに見立てて、フキノトウ入り味噌をざっと載せる。・・・一見無造作だが、何かしらコツみたいなものはあるのだろう、という雰囲気で、均等な厚さに。 「ふんふんふ〜ん♪」 一方店主は、と言えば、いつの間にかアルミホイルを敷いた平たいフライパンを用意し、皿と同様表面に食用油を塗った上で火をつけ、炙っている。鼻歌交じりに。 その上にガイが、慎重な手つきで味噌を下にして皿を置くと、味噌とフキノトウの香りがたちまち、店内へと漂い始めた。 不意に、カカシの口をついて出た言葉がある。 「蓬の車に押しひしがれたりけるが、輪の廻りたるに、 近う うちかかへたるもをかし・・・」 (清少納言 枕草子「五月ばかりなどに」より) 「・・・よもぎ? 何だ、呪文か? それは?」 「呪文って、あのね★」 「聞き覚えがあるわ。確か・・・木ノ葉に良く似て四季がある『和』の国の、むかしむかーしの有名な作家が書いたって随筆、だったかしら?」 「よく知ってるねえ。アカデミーでも習わないのに、これ」 アカデミーでも教えていないものを覚えているとは、二人とも随分酔狂だな。 そう言わんばかりのガイをよそに、店主とカカシの会話が弾む。 「知り合いに、老舗和菓子屋がいるから。今の季節によく蓬餅を作るんだけど、よく引き合いにこの言葉を口にするのよ」 「ああ、なるほど」 「・・・で、どういう意味なんだ? カカシ」 「牛車に押し潰された際に漂ってくる、蓬の香りが趣があって好ましい、って意味。 ほら、蓬も独特の香りがするデショ? フキノトウの香り嗅いでたら、思い出しちゃって。 多分フキノトウも、牛車に踏まれたら今みたいな香りするんだろうねえ」 むろん、その時はこれほど香ばしくはないのだろうが、それはそれで風流があるに違いない。 が、店主の方は随分と現実的な意見を述べた。 「あら、牛車が通るような道なんだから、フキノトウみたいな凸凹する草なんかは、真っ先に引っこ抜かれそうだけど。あるいは、踏み固められちゃって生えてこないとか」 「あー、そうかも。車輪が引っかかっちゃうか。風情も何もないねー」 「だが、蓬なんぞ一年中見かけるぞ? どうして今の季節に、蓬餅なんだ?」 「・・・蓬が一年中生えてるの、よく知ってたねガイ」 「カカシ、それは俺が情緒を理解せん、と言う意味か? 俺は木ノ葉一、風情を愛する男だぞ! 花粉症だし。それに蓬なら、修行場によく生えてるじゃないか」 「イヤ、花粉症と風情は別問題だし★」 「確か、今の季節の葉の方が、柔らかくていい香りがする・・・んだったかしらあ? ゴメンなさいねえ、忘れちゃったわ。 それよりほらほら、手が止まっちゃってるわよ、ガイちゃん。次、次」 変に薀蓄披露になる前に、店主がそれとなく話を打ち切った。・・・それなりに空気を読む人物らしい。でなければ、サービス業は務まらないだろうが。 いくら今は手元が忙しいとは言え、このまま話に加われないとなると、何だかんだで構いたがりで構われたがりのガイが、不愉快になるのは目に見える。 幸いにも、二人の心遣いを知らぬまま、店主と雑談を交えながらもガイは、同じような焼き物を5つばかりこしらえた。 どんだけ大量のフキノトウが用意されていたんだ、一体。 ってか、仮にも客のガイに、どんだけ料理させてるんだろ、図々しくないか? 思わずあきれていたカカシだったが、ふと第三者『たち』の視線がこちらに集まっていることに、そっと周囲を見やる。 先刻から気づいてはいたが放置していたのは、特に害がないものだと分かりきっていたから。だが改めて観察すると、店内の客が皆、フキノトウの香りを楽しんでいるのが分かり、目を瞬かせた。 そして、食事をしようと新たに店へ入って来た客も、店内に満ち溢れている春の香りで一瞬、戸口で足を止めるのも伺えた。 忍も一般人も、店にいる客は皆、どこか無防備な表情を浮かべている。それも、ひどく嬉しそうに。 それは決して、カカシにとっても悪い気分ではなかった。 「何も、春の香りは桜、ばっかりじゃないんだねえ・・・」 「当たり前だ」 どうやら後は焼けるのを待つだけ、になったと見えて、ガイがカカシの傍らに戻って来た。 「どちらかと言えば空を見上げるより、地べたばかり睨みつけていた方だからな、俺は。フキノトウやら蓬の方が、樹の上の花よりも、春の香りという意味では馴染みがあるぞ」 「それも修行場での話?」 「おう、修行場で良く見かけたな。だが、桜餅もあれはあれで好きだぞ。うまいし」 「・・・奢らないからね、俺」 「ケチ」 思えば、カカシに勝負を挑んでは負け、修行中にも失敗や挫折を繰り返してきた男だ。地に伏し、悔しさで涙を流している時、同じ目線に生えていた草木に、親近感を抱いていたのかもしれない。 自分もこいつら同様、踏まれても吹きさらされても、枯れたりはしてないぞ、と。 ───それにしたって。 「カレーなら分かるんだけどね・・・」 「ん? 何がだ?」 「イヤ、お前がカレー好きで、カレーを得意料理にしてるのは知ってるよ。けど、フキノトウ味噌、なんて季節を感じられるものにも心得がある、ってのはちょっと意外だなあって」 「失礼な。俺は風情を愛する男だ。さっきも言ったはずだぞ? それに、これは父さん直伝なんだ。この季節になるとよく、酒のつまみに作っていたからな。以前任務で農家の手伝いをした時に、ついでに教わったと言ってたような・・・今じゃ、俺の好物だ」 「・・・ホント、仲がよかったんだね、ガイたち親子って」 知らず知らず、口調が僻みがちなカカシである。 が、人の感情にも案外敏感なガイは、不思議そうに眉をしかめた。 「何を言ってるんだ、カカシ。お前もサクモさんと仲がよかっただろう。 さっきの・・・ええと、蓬が何とか、なんて話、サクモさんの趣味関係だったんじゃないのか? そもそも、忍に不必要なものには興味を示さんお前だ。でなきゃ、諳んじられるはずもないだろうが、そんなもん」 「・・・・・・・!」 思いもよらぬことを言われて、カカシはとっさに返事が出来なかった。 確かに、サクモがまだ生きていた頃、他の国の文学について色々と教わった覚えがある。 繊細な父は情緒豊かで、忍の心得以外にも、いろんなことを知っていた。文学もその一つで、きっと彼はそれで不遇な立場を慰めていたのだろう。 しかもカカシ自身が、無意識のうちに諳んじることが出来るぐらいに。 ガイから言われるまでその事実に気づけなかった一方で、ガイの方は気づいていたと言うことに、カカシは若干ショックを受けていた。 とは言え、それを素直に表現できるような年齢を、彼はとっくに通り越している。 「・・・そんなことな〜いよお。イチャイチャパラダイス大好きだし〜」 「サクモさんが草葉の陰で泣いてるぞ・・・っと、来た来た」 「お待たせえ〜v サービスのビール2人前と、フキノトウの焼き味噌よおんvv」 「ふーん、結構いい香りだねえ。 ンじゃ、ガイの尊い労働力に、敬意を表して」 「お互いこの季節を無事に迎えることが出来た、幸運に」 カツン、とジョッキを軽く合わせてから、カカシもガイも自分の杯を同時に空けた。 一仕事終えた後のビールがうまい、と喜んでいるガイを尻目に、早速フキノトウの焼き味噌にカカシは箸をつける。 苦味と、塩辛さと、春の独特な香りに、知らず知らず顔がほころぶのだった・・・。 そもそも、好んでは山菜を口にしないカカシがフキノトウを食べたのは、あれきりになる。 あの居酒屋にも、それから足を運んだことはない。料理はそれなりにうまかったし、値段も手ごろ、雰囲気も嫌いではなかったにも、かかわらず。 ただ、一度きりで印象が強かったのか。そばに生えているフキノトウを見た途端、あの日の風景が一気に甦って来て、カカシを妙に落ち着かない気分にさせた。 『蕾が開ききらない方が、フキノトウはうまいんだぞ』 酔って饒舌になった口で、そう偉そうに言っていたガイの声音すら、呼び起こされて。見れば傍らのフキノトウは、おあつらえ向きに蕾が閉じたままだ。 チャクラが回復したところでカカシは体を起こし、そっとフキノトウに手を伸ばしかけて・・・。 「・・・っ・・・」 自分の指先に、浅黒いものが付着していることに気づき、動作を止めた。 周囲の穏やかさと、フキノトウへの感慨につられて忘れかけていたが、カカシは先刻、抜け忍を『処理』したところだったのだ。 グッ、と拳を硬く握り締め、目を閉じる。 この手で、香り高き若葉を摘み取ってはいけない、と言う思いに囚われたから。 何をきれいごとを、とあざ笑う別の自分がいる。だが、血にまみれたこの手で集めたものを渡しても、ガイは喜ばないような気がした。 別に、ガイを神聖化するつもりはない。どころか、彼だって血生臭い殲滅戦に赴いたことすらある。他ならぬカカシが、その見届け人として同行し、その見事なまでの徹底振りに、戦慄したぐらいだ。 けれど・・・。 ふとそこでカカシは、ガイに焼き味噌の調理をせがんだ居酒屋を思い出し、急にいたたまれない心境に陥る。 そして、すぐに帰郷しなければ、と言う奇妙な義務感に襲われ、休憩もそこそこにその場を後にした。 ───ひょっとして・・・・。 ■続く■
カカシ視点。未来捏造 ※これは以前発表した「追憶」の続きに当たります。 ※ち☆ は単行本で原作の流れ追ってます。WJは運の良い週しか立ち読み(こら★)出来ません。しかも単行本も、ガイ先生メインの巻ばかり揃えているため(しかもコンプリートしてないと見た★)、知識が著しく偏ってます(ーー;;;)当然二次創作の内容も、ガイメインです。 ※かなり以前に思いついた構想を元に、話を作ってます。未来予想と言うよりは未来捏造の部類になります。間違いなく。「原作と全然違うじゃねーか!」というお叱りはごもっともですが、あえてそれを承知で書いてます。閲覧される方も、それを十分認識した上でよろしくお願いします。・・・ってか、自分の好きなように書くのが、二次創作の醍醐味ですよね? 以上のことに、少しでも引っ掛かりがあるようでしたら、読むのはご遠慮ください。 ここから先は自己責任の世界です。 -------------------------------- 思えば、自分の周囲が静かなのは、下手をすれば任務中だけだったとか? と、今頃になって気づくカカシだ。 担当上忍になってから───特にナルトたちを受け持ってからは、日常的に騒がしかったし。 もっとさかのぼれば、『彼』と知り合ってからこのかた、ほぼ毎日と言っていいほど五月蝿かった記憶もある。 むろん、『彼』がいかにタフだとは言え体はひとつきりだから、自分の生徒につきっきりの期間は姿を現さなかった。が、それと入れ替わるようにしてカカシも、生徒を受け持つこととなって。 当然、生意気盛りの子供らが大人しくしているわけもないから、騒々しいのが当たり前の日々がずっと続いていた。 だから、カカシのテンションの低さとは裏腹に周りがやかましい、という境遇に、不本意ながら慣れてしまっていた部分がある。 それだけに。 里内がこうも不自然なくらいに静かなのは、落ち着かない。 ───五月蝿い五月蝿い、と辟易はしていたものの。 自分が望んでいたのは、こんな時間だったのだろうか・・・? 「カッカシせんせー、元気になったかってばよ」 「このウスラトンカチ、元気じゃねえから入院してるんだろうが」 「ちょ、ちょっとナルト、サスケくん、ここ病室だから静かに、ね?」 今日も今日とて、カカシのところへ元祖・第7班が見舞いに訪れる。 あの悪夢のような戦争が終結した直後、彼らが慕うはたけカカシは疲労とチャクラ及び体力不足で、ただちに病院へと担ぎ込まれたのだ。幸い、ナルトが自分のチャクラを分け与え、サクラも得意の医療忍術を発揮したため、大事には至らずに済んだが。 彼らの、今となっては微笑ましいレベルの諍いに顔をほころばせ、カカシは生徒たちに答える。 「だいじょーぶだよ。もうじき退院して後は様子見の通院、ってことになりそうだ。この大変な時期に、倒れちゃってゴメンね」 「そんなことありませんよ。今きちんと治しておかないと、長引いちゃいますから。 その代わり、完治したらこき使うから、って、火影様からの伝言です」 「うわ〜、やぶ蛇〜」 「・・・鬼だな・・・」 「ばあちゃんてば、相変わらず人使い荒い・・・」 綱手の暴挙? にひとしきりの感想が挙げられたあと、唐突に間が空く。 しばしの間、三人が無言のまま目と目で合図をかわしてから、ナルトが代表するかのようにおずおずと、カカシに問いかけた。 「・・・と、ところでさ・・・ゲキマユ先生ってば、まだ、目が覚めないのか?」 ───自分を見舞う客が、必ず口にする質問。 カカシはその言葉も、それに返すしかない決まりきった文句も、正直言って苦手である。 かと言って、沈黙したままで許されるわけもない。だからしょうがないな、と言わんばかりの呑気さを装って、答えるカカシだ。 「まだだよ。 ホントにね、寝つきも目覚めもいいはずなのに、いつまで寝とぼけてるんだろうね〜、ガイの奴」 ------------------------------------ ナルトの言うところの『ゲキマユ先生』こと、カカシの同期でもあるマイト・ガイは、戦争終結後意識不明となり、未だにベッドにつながれている。 それもある意味、無理はない。 彼はあの うちはマダラ相手に体術一本で立ち向かい、八門遁甲の陣『夜ガイ』まで繰り出して奮戦したものの、叶わず。挙句、無理矢理リミッターを外したせいでそれを閉じる手立てがないまま、チャクラを枯渇させて危うく死ぬところだったのだ。 運良く、その後駆けつけたナルトが、当人曰く『うまく説明できない』方法でチャクラの流出を止めるのに成功し、何とか助かった───はず、だった。 だがまさか───ガイが満身創痍の身に鞭打って行方をくらます、などという無茶を自らの意思で行なおうとは、一体誰が想像できただろうか。 あの日、真っ先に異変に気づいたのは、近日中に暗部へ所属されることが決まっている、うちはサスケだった。 ナルトやサクラと久方ぶりの、口論と言う名のコミュニケーションをとっていた時、不意に眉をひそめたかと思うと、カカシに詰め寄ったのだ。 『おい、カカシ。ガイ・・・先生はどこへ行った? さっきまではその辺に、リーたちと一緒にいたはずだろう?』 ───その言葉の深刻さに、誰もがすぐには気づけなかった。 オーバーアクションと騒々しさから皆がいつもは忘れているが、ガイは上忍にまで上り詰めた叩き上げの実力者。その気になれば一瞬で、姿を消すぐらい造作もない。 ただし───それは、体が万全であれば、の話。今、そんな馬鹿な真似をすれば、治る怪我も治らないではないか・・・! 一同騒然となる中、白眼で探そうとするヒナタをとっさに押しとどめ、カカシは思い当たる場所へと一気に駆けつけた。 そして見つけたのだ。木ノ葉の里の外れ、墓地の一角で倒れているガイの姿を。 彼は既に意識を失っていて、カカシが声をかけても、その後駆けつけたリーたちが呼びかけても、目を開けることなく───今に至る。 『何故、こんな馬鹿なことを・・・』 その後カカシも極度の疲労で昏倒したので、状況は又聞きでしか知らない。 ただ、ガイの治療に当たった医療班が、口々に言っていたらしい。「こんな体でよく、あんな遠くまで移動できたものだ」と。 そして更に口をそろえて、「下手に動けばこうなることは、本人が一番良く分かっていたはずなのに、どうして」とも診断されていたようだ。 カカシにもその理由は分からなかった。第一、あの時ガイに何かあれば、そばにいた一番弟子のリーが自分を責めて悔いることなど、彼が知らないはずもなかろうに、と。 ・・・現に今、まさにそうなっているし。 その認識が若干変化したのは、こちらも怪我をして療養中だった火影・綱手に再会してからだ。 部下の様子を見に訪れた彼女は、ガイも見舞った帰りだと告げ、その病状について教えてくれた。 『リーたちにも言ったのだがな。今のガイの治療は正直、芳しくない。体があちこちガタが来ているし、よしんば起き上がれるようになったとしても・・・おそらくもう、忍として働くのは不可能だろう』 『やはり・・・そうですか』 『中忍試験の際のリーの怪我もひどかったが、今回のは比べものにならないぐらいだ。多分、手術すら出来る状態じゃない。 ・・・本人はこうなる可能性を、初めから分かっていた筈だがな』 『自分の体は自分が良く分かっている、って奴ですね』 『ああ。だが、こう言う言い方はマズいのだろうが、今のまま眠っていた方が本人にとっては幸いなのかも知れんな。あいつが忍をやめるなど、想像すら出来ない』 『・・・俺もです』 『あるいは・・・ガイがあんな無茶をやらかしたのは、己の忍としての寿命を認めたくなかったからかも、知れんな。自分はまだ動けるのだ、と証明したくて、けれど出来ずに倒れた・・・と言ったところか。 もっともそうなると、今度はどうして自分の父親の墓前へ赴いたのかの、見当がつかないがな』 『・・・・・・・』 ガイが元気なら、前向きな性格そのままに『そんなことはない!!』と断固否定しただろう。 が、当の本人は未だに意識が戻らない。そう、本当に現実逃避をしているかのごとく。 ───これではまるっきり、話に聞いた『無限月読』だ。 幸せな夢ばかりを見せられて、いつまでもその世界が続けばと願い、ずっと閉じこもっているようで・・・。 もしそうなのなら、今頃ガイはどんな夢を見ているのだろう。 カカシが見る限り、ガイはいつも意欲的で、彼曰くところの『青春』を謳歌していたはずだ。だから逆に、彼にとっての『繰り返し味わいたい幸せな夢』が何なのか、全く思い当たらない。 むろん、長い忍人生の間、苦汁を舐めたことも数え切れないはず。だが、少なくとも任務以外の時には、辛そうな姿など見せたことがなかった。ある意味、強がりの格好付けだから。 ・・・いや。 そういえば、彼らしからぬ表情を浮かべていたことが、ほんの一時期だけカカシにも、覚えがある。 あれは忘れもしない、ガイの父親・ダイが亡くなった頃だった・・・。 ------------------------ 「ねえ、カカシ。まだガイの奴、目を覚まさないの?」 翌日。 赤ん坊の定期診察のついでにと、カカシの元を訪れた同僚の夕日紅が開口一番、そう聞いて来た。 あまりの不躾さに、返す言葉も自然、棘のあるものとなる。 「・・・あのね。何いきなり、本題に入ってくるの、紅。あのナルトでさえ、一応は俺の体調心配してから、聞く気配りあるんだよ?」 「あんたの体調なんて、見れば分かるじゃない。口が利けるし・・・それも図々しい口が。体も起こせるし。悪いけど、元気そのもののあんたの心配してる暇なんてないわ」 「あ、そ」 彼女の長所は、失礼ながら女性らしからぬサバサバしたところだと、カカシは思っている。今回もそれは有効なのか、単刀直入に疑問をぶつけたようで。 さすがに彼女の前では、カカシも漏れるため息を隠すこともせず、答えることにした。 「今のところ、その兆しはないみたいだね。 俺もあれから会えてないから、詳しくは知らないんだけど」 実は、ガイがこの病院に担ぎ込まれてから、諸事情により面会謝絶になっている。どころか、彼が意識不明になっていること自体、伏せられている状況だ。 もっとも、既に身内がこの世にいない身なので、例外的にガイ班の生徒たちは会うのを許されている。 時々カカシは、廊下で彼らとすれ違うことがあるが、表情から察するに経過はよろしくないらしい。 「あたしはあいにく、倒れてからのあいつの顔を見てないんだけど・・・そんなにひどい怪我なわけ?」 「・・・少なくとも、あんまり思い出したくないくらいに、ひどいよ。 何なら、あいつのチャクラが尽きかけた時の状況、懇切丁寧に実況しようか?」 「やめて。気を悪くさせたのなら謝るから、八つ当たりしないでよ」 ひどいおじさんよね〜、お母さんいじめるんだから〜。 そう、腕の中の赤ん坊につぶやくことで、紅はカカシの怒気をそぐ。 「・・・ゴメン、カカシ。けど、体力バカで健康優良児そのもののあいつがベッドから起き上がれないなんて、全然実感沸かないの。だから、つい」 「だろうね。けど事実だよ。 あいつはマダラ相手に体術一本で向かって行ったから、その反動も直接的だったのは仕方ないってところさ。それは分かる」 そこでカカシは一旦、遠慮の欠片もなく長嘆息をついて俯いた。 「・・・俺が分からないのは、皆が心配するのが分かっているのに、あいつはどうしてあの体に鞭打っていなくなる、なんて無茶をやらかしたか・・・だよ」 火影はああ言ったが、正直なところカカシは彼女の説には否定的だ。 ガイは叩き上げなだけあって、人の生き死に、戦力の有効無効については恐ろしくシビアなのだから。たとえ自分に対しても、もし忍としての寿命が尽きたと知れば、きちんと受け入れるに違いなく。 それならむしろ、長らく墓参りをしていない父親に会いに行った、と言われた方がまだ納得だ。ただ、何もあんな体調の時じゃなくても、との疑問は残るが。 ───そこでカカシは、てっきり自論をぶち上げると思っていた紅が、やけに静かなのに気づき、顔を上げた。 果たして彼女は、眉をひそめたまま、まっすぐカカシを見つめていた。 「・・・・・・何?」 「ちょっと驚いてるの。まさかカカシから、そんな言葉が聞けるとは思わなかったから」 「そんな言葉?」 「皆が心配するのが分かっているのに、無茶をやらかした、ってくだり」 「・・・・・・言いたいことがあるんだったら、言えばいいじゃない、この際」 何か含むことがある表情を向けられ、カカシはいらだたしげにそう返す。 すると紅は、そうね、と呟いてから、同僚の要望に応えた。 「さっきの言葉、そのまんまあんたに返してあげるわ、カカシ」 「え」 「少なくとも暗部時代のあんたは、あたしたち・・・あたしやアスマやガイの心配をよそに、結構・・・じゃないわね、相当、やり過ぎなんじゃないかってくらい、無茶やらかしてたわ。正直あたしは、あんたが死に急いでるんじゃないか、って思ってた」 責める口調ではない。むしろ、昔を懐かしむように言われたからか、カカシの脳裏にいきなり、暗部時代の光景が蘇る。 「・・・ゴメン。 今更こんなこと言えた義理じゃないけど、紅たちが心配してくれてるのは、分かってた」 「あのね、カカシ。あたしたちだって、あんたが世間で言われるような冷血じゃないことぐらい、知ってたわよ。でもね、あたしたちの気持ちがちゃんと届いてるよ、ってあんたが反応示してくれなきゃ、そんなの、届いてないと同じなの。 ・・・今のガイみたいに、ね」 すい、と顔をそむけた紅の視線の延長上にあるのは、おそらくはガイが寝かされている病室。 「心配してたのに、あんたが知らん顔し続けるから、そのうちあたしも気持ちが折れちゃって。どうしようもない、って諦めちゃったっけ」 「・・・・・・」 「けど、あいつは、ガイは違ったわよね。こっちがあきれ返るほど、あんたのこと執拗に追い回してたから。何だかんだ言いながら、あんたもガイには向き合ってたから、内心ホッとしたのよ」 「いい加減な受け答えしようもんなら、もっとこじれるからね、ガイの場合」 そう。どんなに冷たくあしらおうが、突き放そうが、あの暑苦しいまでの執念で噛り付き、何らかの返事をもらうまで決して引き下がらなかった。 『カカシ、勝負だ!!』 そんな言葉と共に───。 「・・・まあ、あんたもこうやってガイに袖にされてることで、あの頃のあたしたちのもどかしさが、少しは分かったでしょ?」 ちょっとだけ鼻声となった紅の呟きに、カカシは再び現実の世界へと戻ってくる。 「それが分かったんなら、これからせいぜい素直にしてよね? それこそ、ガイが気持ち悪がるぐらいにさ。あたしそれを見て、あんたたちをいい笑いものにするの、楽しみにしてるんだから」 言いたいことが言えてすっきりしたのだろう。紅は先ほどとは打って変わって晴れやかな表情で、カカシに笑いかけてきた。 だが、カカシの、冷静な忍としてのの頭脳が、今の話を前向きには解釈できずにいる。 「・・・そう、出来ればいいのは山々なんだけどね。そんな悠長なこと言っていられる時間が、果たしてガイに残ってるのかな・・・?」 「え・・・?」 カカシの危惧は翌日、火影がわざわざ病室へ訪ねてきたことで、的中することとなる。 ------------------------------------ 「忙しいところを呼び出してすまない。リー。テンテン」 その日。 火影が来るのと前後して、第3班のリーとテンテンも、カカシの病室へ押しかけた。どうやら火影が2人を呼び出したらしい。 わざわざ自分の病室を待ち合わせ場所にした理由は、何となくカカシも見当がついていた。が、一番火影が話したかったであろうリー当人たちは、不安と期待の混ざった表情で立ちすくんでいる。 とりあえず座った方が、とカカシがすすめた椅子も、ここでは最上位の火影が立ったままなので、他の誰も使わないままだ。何より、苦渋を隠しきれない彼女の空気が、腰掛けることを躊躇わせる。 彼女は、巻物を一つ持参していて、リー、テンテン、そしてカカシから集まる視点から目を逸らすためのように、それを静かに広げた。 「・・・実はな。この戦争が始まる前、自分にもしものことがあった時のために、と、ガイは遺書を遺していたんだ」 「遺書、って・・・」 「ガイ先生はまだ亡くなっていません! そんな言い方はしないでください!」 火影の言葉の意味を、テンテンはまだ飲み込めていないらしい。そしてリーはと言えば、『遺書』と言う言葉に過剰反応した。 「まあまあ、2人とも。例え本人が生きていようとどうだろうと、万が一亡くなった時のために遺すのが遺書、ってもんだ。揚げ足取りみたいなことはどうか、と思うよ?」 まさか年少者を宥めさせるためにここを待ち合わせ場所にしたんでもあるまいに、と思いつつも、カカシは分別のある言葉でリーたちをなだめる。 元々礼儀正しいリーではあるから、すぐに自分の失言に気づいた。即座に「スミマセン」と頭を下げるのを、火影は力なくかぶりを振ることで許す。 「イヤ、お前らの気持ちは分かる。だが、もう残された時間が少ないのでな。もったいぶる事も出来ないが、気を悪くしないでくれ」 ───やはり、か。 こんな形で、自分の推測が当たって欲しくはなかったものだ、とカカシは口布の下で密かに、唇をかむ。 「この遺書は、ガイが、自分にもしものことがあった時のために、と託されたものだ。今から読み上げるから、よく聞いてくれ」 そうして火影は、固唾を呑んで見守る一同の前で、静かに言葉をつむぎだす。 「わたくし、不肖 マイト・ガイが10日以上意識を取り戻さず、 なおかつ、意識を取り戻す手立ても可能性もない場合。 あるいは、戦闘中等に死亡が確認された場合。 以下のことを執り行ってくださるよう、切に願います。 わたくしの身体を、骨の一本も、 内臓のひとかけらも残さぬよう、 全て火葬して灰にしてください」 ───これ以上ない重苦しい衝動が、病室にいる人間全てを襲った・・・。 ◆続く◆ ------------------------ ※別所にて、「ガイ先生が無限月読に巻き込まれていなかったら」と言う特殊条件の話を発表したんですが、実はこちらの方が先に思いついた話です。 大元は一緒だったんですよ。いつの間にかカカシも知らないうちにガイが居なくなった、って前提は。けど、向こうはカカガイ前提なのと、いなくなった理由がリーを助けるためだった、ってこともあり、全く違う話になっちゃいましたが。当然、書きたいことも全然違うんだな。 尚、ガイ先生が行方不明になった理由は、前作の「追憶」でガイ先生自ら語ってくれましたが、さすがに他人であるカカシたちはそう言った事情は全く、分かってません。いくら察しのいいカカシでも、ガイの行動のすべての理由を分かっているはずはないんだということを、表したかったんです。まあだからこそ、言葉を交わして理解しあおうとするんでしょうし。 ちなみに、サスケがガイの不在に気づいたのは、初対面の頃のデ・ジャヴを感じていたから。ガイ先生初登場の頃の「俺はカカシより強いよ」のアレで、目に見えてたはずなのにいなくなっていた状況と同じだったから、だったりします。あの時と同じで、サスケもガイ先生に一目置いてくれてたらいいんだけど・・・最近の原作、ガイ先生欠片も出て来やしねえ・・・★ さて・・・これから後編書くんだよな・・・約一ヶ月かかってるんだよな、今回の話書くだけでも。一体どれだけの執筆期間になるんだろお・・・(ーー;;;)
かねてから言っていたように、こことは別のところへ【鳴門】小説を掲載することとなりました。なんでかっっーと、ぶっちゃけ や●い だから。 が、まだこの作品をこちらとは別にした最大の理由「おとこどーしのきっちゅ」にはまだ到達してません。あまりにも長くて、前後編に分ける羽目になったせいです(ーー;;;)別に何もやらかしてないのに、何でこんなに長引いたんだ・・・。 と言うわけで、下に別所の場所を書いておきます。リンクは貼らないので、コピペでどうぞ。ちなみに今回の小説のタイトルは「螺旋覚睡」です。ど! シリアスです!! http://pixiv.me/chanx2 尚こちらには、以前こちらへ夏休み中に投稿した「夏の色」も発表しました。こちらへのコマーシャルをしたい、ていうのともう一つ。 盗作予防も兼ねてます。 この日記の最初辺りに書きましたが、どんなにマイナーなジャンルでも、盗作される時はされるんですよ。でもそれに手をこまねいていてもなあ、と思い、せめて多くの人の目に触れやすいところにも発表してやろう、と決意した次第です。 あちらに小説を投稿するからと言って、こちらをやめるつもりはありません。こちらは老若男女OKの小説オンリーですので。
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