ちゃんちゃん☆のショート創作

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茂保衛門様 快刀乱麻!!(14)≪前編≫
2003年12月28日(日)


※とりあえず、3ヶ月ごと更新・・・を目標にしていたはずの(汗)榊さんシリーズです。今回は、一連の怪奇事件に一応の決着が訪れます。そして今回の話こそが、ちゃんちゃん☆ が一番書きたかったことだったりします。
 人間の強さは、腕力や剣術の巧みさだけじゃなく、いざって時に踏ん張ってどれだけ頑張れるか、ではないでしょうか。でわ、後書きにて。


***************

 ───剣術が出来ないと、弱いの?

 どこからか聞こえてくる、女童のあどけない声。

 ───弱い男の子は、男の子じゃないの?

 面前に浮かび上がるは、途切れ途切れのたわいない光景。
 貧しいながらも綺麗に整えられた部屋の中、病に伏している明らかに顔色の悪い童。
 だけど彼は、今とても幸福そうだ。目の前にいる女童に、文字の読み書きを教えているらしい。

 ───・・・そんなこと、ないよ。お夏、知ってるもの。頑張ってること。

 笑い合う子供たち。わずかに日の光が入るだけの薄暗い室内が、そこだけ暖かく見える。

 ───いつかお夏が、お嫁さんになってあげるね・・・。

 いつまでも、そんな楽しい日々が続くと信じていた彼らだったのに。





「榊さんーーーーーっ!?」
「・・・!?」

 悲鳴のような御厨さんの呼びかけで、あたしは我に返る。
 途端に自覚する、背中の紅蓮の熱さ。
 さっきまでの儚げな夢幻の世界が、まるで嘘だったかのように。

 一体、さっきの風景は何だったの・・・?
 それにあたしは、今何をしているんだったかしら・・・。

 なんて現実逃避してる暇なんぞ、どこかへ消し飛んでしまう。そう、どう解釈しても夢でも幻でもない、痛みと熱さのせいで。

「ぐぅ・・・っ!」

 ───そうだ、思い出した。
 あたしは捕り物の途中で、火の化け物に攻撃されかけた女童を庇おうとして・・・背中に炎を浴びせかけられたんだったわ!
 正直言って、焼かれた背中は半端じゃなく痛い。一瞬だけとは言え意識が飛んでたってのも、恥でも何でもなく即座に納得できる。めちゃくちゃ痛い。その場をのた打ち回りたいほどに痛い。
 だけど今のあたしには、思いのままのた打ち回ることが出来ない事情があった。

 何故なら、あたしの懐にはまだ女童が抱きかかえられている気配があったから。
 痛みのあまり、あたしは目も開けていられないんだけど、子供特有の温かみは確かに感じていたから。
 なのに、背中の炎が消えているかどうかも分からない今下手に動けば、巻き込んでしまうかもしれない。このままなら、懐に抱え込んでる状態なら、このコだけなら何とか焼かれずに助かる可能性があるのだ。

 けど、背中の熱さと来たらますます激しくなるばかり。激痛のあまり声すらも出せず、動くことも出来ず、頭の中がどうかなりそうな苦悶のまま、あたしは意識を失いかけた。

 その時だ。

『剣掌・神氣発勁ッ!!』

 蓬莱寺の声が高らかに聞こえたかと思うと、冷たい刃物を・・・そう、『村雨丸』みたいな刃物を、素肌に沿って素早く滑らせられたような涼しさを、背中に感じて。
 何故かあたしは勢い良くもんどりうって、背中から床の間に転がる羽目となった。

「・・・・・・・っ!!」

 悲鳴を上げるのは何とか堪え。
 女童を庇うため、その場に四つんばいになろうとしたあたしは、背中にほんの少しだけ、床の冷たさを覚えることに気づく。
 ・・・ひょっとして火、消えたの? さっきの蓬莱寺のワケワカラナイ術で?

「か・・・はっ・・・」

 それでもあたしは、女童を放り出すことはしなかった。
 さっきの蓬莱寺の術は、その声から察するに、どうやらあたしたちから相当離れた場所から放たれたもの。多分あたしが意識がなかったあの瞬間、炎がほうぼうに散るか何かして、《龍閃組》も《鬼道衆》も、そして御厨さんも、その炎を消すのにおおわらわになったに違いない。
 つまり、あたしはいわば孤立無援。手負いの上、頼みの綱の『村雨丸』まで放り出してしまっている今、体を張る以外、女童を庇う方法なんてないのだ。

 呼吸するたびにビリビリと来る痛みを懸命に堪え、あたしはゆっくりと目を開けた。そして体を起こしながら今一番の懸念事項である、勇之介の怨霊の姿を探すことに意識を集中させる。
 勇之介は───こちらを見ていた。だが様子がおかしい。さきほど呪詛を吐いた時の禍々しさが、なりを潜めている。
 そして。

「やめてよ・・・もう、やめてよ! 勇之介ちゃん!」

 あたしの胸に抱きかかえられている女童がそう叫んだ途端、勇之介はわずかにひるんで見えた。
 あたしの戸惑いをよそに、女童───大家の話だと、確かお夏って名前だったんじゃなかったかしら───はボロボロと涙を流しつつ、それでも怨霊に訴えかけるのをやめなかった。

「どうして勇之介ちゃんが、おとうを殺そうとするの? どうして? 勇之介ちゃんはあんなに優しいのにっ!」

 その時。あたしは自分の勘違いに、やっと気づいたのだった。

 ───そうだ。あたしは日本橋の小津屋焼け跡で《鬼道衆》に再会する前、てっきり御厨さんに油売り・彦一の居場所がここ、神田だと聞かされていたものだと思い込んでいた。
 だけどソレは違う。御厨さんが教えてくれたのはあくまでも、おろくたち姉弟が以前住んでいた場所の方だったのだ。勇之介の次の狙いが油売りだと知って混乱してしまい、うっかり混同していたのだけれど。

 ついでにあたしは思い出す。このお夏ってコ、さっき小津屋焼け跡で顔を合わせてた、あの女童じゃないの。そう、わざわざ野の花を供えに来ていた、あの時の・・・。


 って・・・ちょっと待ちなさいよ!?
 ひょっとしてあの時の花って、勇之介を供養するためのものなんじゃ・・・。お夏の口調からも、2人が知り合いだったってことはもはや疑いないことだし。
 けど、けど・・・勇之介はこのコの父親でもある油売り・彦一すらも自分の仇だって思い込んでるのよ!? 殺したいって憎んでるのよ!?
 それってあんまりにも・・・!

 一方、火を消し終わったんだろう。あたしの側に駆け寄って来たらしい御厨さんが、うめくように呟くのが聞こえる。

「榊さん・・・もしかして、油売りが仕事の手を休めてまで勇之介を小津屋に連れて行ってやったのは、何も親切なだけじゃなく、娘の友人として勇之介のことを知っていたからなんじゃないんですか・・・? そうだ、だからこそあの時、又之助に詰め寄ったんじゃ・・・!」

 御厨さんらしい、人情的な推理ですこと。


「そんな馬鹿な! だ、だって勇之介は行商だって男のこと、全然知らない風だったんだ! それが友達の父親だなんて、そんなことありえるはずがないじゃないのさ!」

 もっとも、桔梗の方は否定したがってるみたいね。・・・まあ確かに彼らの言い分じゃ、勇之介は彦一のことを『行商のおじさん』としか言ってないんだから。
 だけど、そういうことって意外と、よくあることよ。自分が知らないだけで、相手の方は自分のことをよく知ってるってことは。人のつながりなんてものが、本人も思いもよらないところで生じてることが、どんなに多いと思って? 子供は自分のことで手一杯で、視野が狭いから気がつかないかもしれないけど、ね。

 一方、勇之介の正体を未だ知らないはずの《龍閃組》(蓬莱寺と涼浬の2人だけだけどね)は、と言うと───自分たちが相対しているこの怨霊がお夏と親しい仲で、しかも彼女の父親のことを殺そうとしている、ってところは何とか把握したみたい(ま、ピンと来ない方がおかしいけど)。
 それでとりあえず、勇之介を刺激しない程度に静かな足裁きで、油売りの彦一の近くへと移動したみたいだ。いざって時は、彼を守ってやろうって寸法なんだろう。
 で、勇之介を『説得』しに来た《鬼道衆》の方は、あろうことか、あたしと御厨さんの側にいる。主にお夏と、そしてどうやら与力であるはずのあたしを守るかのように。

 それらは全て、怨霊の勇之介から目を離さないまま移された行動だ。今、下手に彼から視線をそらせようものなら、張り詰めた緊張感が一気に瓦解してしまうだろう。
 ・・・だから誰も、今のあたしの大火傷の具合を聞いて来ようとしない。気にはしているらしく、あせっている様子は伝わってくるんだけど。
 あたしもあえて、皆の『無関心』にはこの際、目を瞑ることにしている。正直現状は、あたし1人の火傷云々の問題じゃ、ないからね。(さっきから何度も痛みで目を瞑ってるじゃないか、ってのはナシよ)

 ・・・などと、あたしがそうやって、苦しい息の下からも何とか周囲の状況を把握している間にも、お夏の悲痛な嗚咽はやまず、勇之介の戸惑う声もそれに続く。

 そう。お夏の登場により、明らかに勇之介は困惑していたのである。


「やめてよ、勇之介ちゃん・・・お夏ヤダよ・・・おとうが勇之介ちゃんに殺されるなんて・・・」

 ───ダ、ダケド、ソノオジサンガ僕ヲ小津屋ヘ連レテ行カナカッタラ、
僕モ姉上モ・・・。

「おとう、勇之介ちゃんのこと、ずっと誉めてたんだよ? 体は弱いけど、優しいコだって。お夏がお嫁さんになってあげるんだ、って言ったら、それもいいかもな、って言ってくれたたんだよ? なのに・・・」

 ───デ、デモ、ソノオジサンガ止メテクレタラ、
姉上ハ火アブリニナラナクテ済ンダンダ・・・。


 どうやら勇之介の怨霊は『自分たちを救ってくれなかった人間に対して復讐する』って考えに、凝り固まってしまってるみたい。だから、いくらお夏が懸命に訴えても、決まりきった一辺倒な返事しか、出来ずにいるのだ。先ほどから比べれば随分と、気持ちが揺らいではいるみたいだけど

 そのことを、お夏も幼いながらに気づいたんだろう。涙をきゅっ、とばかりに拳でぬぐうと、とんでもないことを提案してくれたのだった。
「だ・・・だったら勇之介ちゃん、お夏も殺してよ・・・」

 ───!?

「お夏、おとうが殺されるのも、勇之介ちゃんがおとうを殺すのも、見たくないもん。だから、それを見ずに済むんだったら・・・」

 何てことを口走るんだ、この子は・・・!

 その場にいた一同は、そろってそう思ったろう。いくら知り合いとは言え怨霊相手に自分を殺せ、なんて言い出すのは正気の沙汰じゃない。ましてやそれが、年端も行かない少女では尚更・・・。

 が、そう思ったのは大人たちばかりではなかったようで。

 ───ド・・・ドウシテ僕ガ、オ夏チャンヲ殺サナキャイケナイ・・・? 

 目に見えて勇之介は混乱し始めた。

 ───僕ガ殺サナキャイケナイノハ、姉上ヲ苦シメタ奴ナンダ・・・。
オ夏チャンハ違ウ・・・ケド、オ夏チャンノ父親ハ、
姉上ヲ助ケテクレナカッタンダ・・・。
デモ、オジサンヲ殺セバ、オ夏チャンモ苦シム・・・。
アア・・・苦シイ・・・オ夏チャンヲ悲シマセタクナイノニ・・・
オジサンヲ殺サナカッタラ、姉上ガ浮カバレナイ・・・
姉上ノ無念ヲ晴ラセバ、オ夏チャンガ苦シム・・・
姉上・・・オ夏チャン・・・アア・・・・・苦シイ・・・
ドウシテコンナニ苦シインダ・・・!

 勇之介は苦悩しているのだ。姉の無念を晴らすことは、お夏を苦しめることを意味する。おそらくは比べることが出来ぬほど、どちらも彼にとっては大切な存在だったのだろう。

 ───いつかお夏が、お嫁さんになってあげるね・・・。

 気を失っていた間に見た、あの幻を思い出す。
 どうしてあたしがあんなモノを見たのかは分からない。けどきっとアレは、楽しかった頃の勇之介とお夏の思い出なのではないか。・・・何の根拠も脈絡もなく、あたしは唐突にそう思った。

 ───だとしたら! 起死回生するなら今しかないってことじゃない!

 そう判断したあたしはとっさに、声を張り上げていたのだった。死せる勇之介に向かって。


「あなた、勇之介でしたね! あ、あんたは今あんたが味わってるその苦しみを、このお夏にも味あわせようとしてるのよ! 分かってるの!?」

 ───ナニ・・・?

 効果は抜群。今まで恨みに凝り固まっていたはずの勇之介が、あたしの言葉に耳を貸したのだ。・・・今だけ、かもしれないけど。

 この機会を逃せば、おそらくこの場の全員が救われない───あたしはそれこそ必死だった。
 半ば裏返っている声を必死に言語へと代え、怨霊の説得、なんて、火附盗賊改・与力としても前代未聞のことを、やろうとしていた。

「だ、だってそうじゃないですか! あんたがこの子の親を殺せば、間違いなくお夏は救われないわ! 目の前で父親を殺されるのを止められなかった、って自責の念に一生、さいなまれることになるのよ!? あ、あんたには分かってるはずよね!? 姉上を止めることが出来ずに死んだ弟のあんたなら、その悔しさと苦しさがっ!」

 ───・・・っ!

「こ、このままあんたが本懐を遂げでもしたら、このお夏は生きながら地獄に落ちるのよ!? 今のあんたと同じ苦しみを、生きてるこのコにも味あわせたいって言うの! イヤでしょ、そんなこと、あんたは絶対させたくないんでしょうがっ!」

 皆、息を呑んで、あたしの説得工作を見守っているのがヒシヒシと感じられる。
 痛いほどに視線を浴びる中、勇之介は相変わらず姉上にこだわる発言を続けていた。

 ───ケ、ケド・・・ダッタラ、姉上ノ無念ハドウナルンダ・・・
誰カガ姉上ヲ止メテクレタラ、姉上ハ苦シミノウチニ死ヌコトハナカッタノニ・・・。

「あんたの姉上はね! あんたの成仏をこそ、望んでいたのよっ! じ、自分は地獄行きかも知れないけど、優しいあんたは極楽浄土にたどり着いて欲しい、って言ってたんだからっ! あんたは、そんな優しい姉上の気持ちも、ないがしろにするつもりなのっ! お夏の父親を殺せば間違いなくアンタ、地獄行きになるじゃないっ!」

 ───ア、姉上ガ・・・!?

 おろくの最期の言葉を聞かされて、さすがに動揺したのだろう。復讐と怨念に支配されていた勇之介の態度が、少しずつ変わっていくような・・・。

「それに、お夏は、これからも生きていくのよっ。死んだ者のことを悲しんだり悔やんだりするのも確かに大切だけどっ、これからずっと生き続ける者のためを思うんだったら、これ以上人を恨むのは・・・っ・・・!?」

 そこまで一気に言ったところで。

「ゲホッ・・・ゲホゲホ・・・ッ・・・!」

 あたしは喉へせり上がって来る感触に、大きく咳き込んでしまった。多分さっきの炎で、五臓六腑の一部をやられたのかもしれない。胸の辺りが煤けたように、熱くて痛くて不快だ。
 ・・・結構、マズい状況かも知れない。

「榊さん!」

 御厨さんが気がかりそうに声をかけてくるけど、ただ左右に首を振るだけで済ませる。
 そんなあたしに、何故か勇之介が声をかけてきた。

 ───オ前ハ・・・苦シクナイトデモ言ウノカ・・・? 
何ノ関係モナイノニ、僕ニ焼キ殺サレカケタクセニ・・・
恨ミニ思ワナイトデモ言ウノカ・・・? 
ソンナニ苦シソウニシテイルクセニ・・・。
僕ト同ジ苦シミヲ味ワッテイルト言ウノニ・・・!
憎イダロウ、僕ガ。殺シテヤリタイダロウ、僕ヲ・・・!


 悪魔の囁き、というものがこの世に存在するなら、まさに今のがソレでしょうね。
 まあ勇之介にそんなつもりはなくて、単に自分と同じく焼き殺されかけてるくせにそんなおためごかしを言うつもりか、って気持ちなんでしょうけど。

 あたしをこんな目に遭わせたあんたが、憎い。殺してやりたい。
 ───そう口にしたら最後だ。あたしは直感的に思ったから、口に出してはこう言ってのけた。

「あいにくだけど・・・あたしは忘れてあげますからね、あんたの、やったこと、は」

 ───・・・・・!?

「そりゃ、苦しい、し、どうしてあたしがこんな目に、って気分にはなりはする、けどね・・・死んだ人間をどう、恨んだり、殺したり、出来るって言うんですか? それに、この件をもみ消して、お夏たち父子を不問に付すためには、あんたがあたしにやらかしたことをある程度、忘れる必要があるんですからね・・・」

 ───オ夏チャンタチヲ・・・不問ニ付ス・・・?

「っ!?」

 あたしの言葉に、傍らの御厨さんがギョッ! とする気配を感じる。まさか与力のあたしが、今回の大騒ぎをもみ消そうと考えているとは、そしてそれを皆の前で宣言しようとは、全くの予想外だったようだ。
 だが、彼は何も言わない。何の言葉も発しない。今何かを言って話の腰を折ることが命取りだってことを、重々理解しているからである。

 後でこの堅物を納得させることの方が、よっぽど難問かもしれないわね───チラリと意識の端で考えながら、あたしは勇之介の説得を続けた。



〜茂保衛門様 快刀乱麻!!(14)≪中編≫に続く〜



Darling(7)SD・流×彩?
2003年11月10日(月)

 とりあえず、カラ更新しない程度には新作UPしておこう、のちゃんちゃん☆ です。
 ホントは「茂保衛門様〜」書きたいんですけど、アッチは長編。ちょっとやそっとじゃ書けないんで、とりあえずアチコチからご要望の高い(実際、一番反響大きいんだよなー)、流×彩?シリーズのコッチを更新しときます。
 流川のハードルは、今回更に高くなります(汗)。ま、これは恋愛モノじゃ通過儀礼ってコトでv
 そー言えば書くの忘れてましたが、前回の試合は県予選です(汗)。でわっ!

*************

Darling(7)

 それから2日たった時のことである。富ヶ岡中学は試合をするために、総合体育館を訪れた。
 県予選の2回戦目に参加するためだ。初戦こそエース不在、という不安要素で部員の意気も消沈がちだったのだが、今は違う。「候補」という接尾語がついてはいるが、流川楓と言うエースがいるのだから。
 当然この試合も、相手チームの2倍以上の点数差をつけての圧勝だった。「破竹の勢い」というヤツである。

 が、流川にとっての試練は、実はこの試合終了後・直後に訪れたのだったりして・・・。

    ――――――――――――――

「あっ、またパスミス! ったく、もう少しうまくボール回しなさいよっ!」
「・・・・・・☆」

 さりげなく彩子の隣り、と言うベストポジションを取ったにもかかわらず、流川の表情はいつも以上に仏頂面だ。
 ここは観客席。三回戦目の相手の情報収集をしようと、部員全員で試合を見ていたのだけれど。

「そこでどうしてパスカットされるの? もっと根性見せなさいよねっ!」

 一方のチームの敗戦が確実になっているというのに、彩子は何故かその敗戦しかけているチームにハッパをかけているのだ。
 所謂「野党根性」というヤツか? とも思ったのだが、どうも違う。先ほどから彼女が注目しているのは、敗戦確実チームの一選手としか考えられない。

 背番号はエースナンバーの4。頭が丸刈りで、観客席から見下ろしても流川より背が高いことが分かる、北村中の選手である。
 その彼に、ゴール前で何とかパスが渡った。

「よし! 決めろっ!」

 彩子の声援が聞こえたとは思えないが。
 その選手は、両手でボールを抱えたまま、ゴールネット目掛けてジャンプした。

「!? まさかっ!?」

 流川も一瞬、度肝を抜かれてしまう。

 ガコンッ!!!

 もはや勝てる可能性はないとは言え。
 そのシュートが決まった時、さすがの相手チーム・高橋中も、そして富ヶ岡中のメンバーも、呆気に取られて今のシュートを眺めていた。
 まさか中学生がダンクシュートを決めるとは、誰が思うものか。

『ナイスシュート、赤木』
『おう』

 背番号5と眼鏡をつけた選手が、大喜びでエースを祝福している。

「北村中の赤木、かあ・・・」

 興奮で顔を赤くした彩子がそう呟くのを聞いて、流川はイヤな予感がした。

 ───確かに、今のシュートは脅威だ。体格もバスケ向けと言えよう。・・・だがパスのマズさやドリブルの悪さなど、欠点がより際立って見える、あの選手。どうして彩子が、注目するのだろう?

「ワクワクするなあ。赤木さんって、どこの高校に入学するのかな?」
「赤木、『さん』?」
「? なに? 流川」
「・・・・・イエ別に・・・・・」

 別に気にすることではないのかもしれない。エース番号をつけていることから察するに、どうやらあの赤木と言う男は彩子より年上だ。わざわざ「さん」付けにしたのも、年上の相手に対しての単なる礼儀だという可能性もある。
 でも・・・。


『どうだね? 神奈川でも1、2を争う進学校を志望校にしたら?』


 2日前の、彩子と教師の会話を思い出す。
 おそらくはあの赤木と言う男は、特にバスケ推薦などされることもないだろう。となると当然、公立校へ行くコトになる。それもバスケ部のある高校へ。

<まさか・・・先輩、あいつと同じ高校行くとか、言い出すんじゃねえだろうな・・・>

 試合は終わった。北村中は負けた。
 だが、どうにも未練が残っている風の赤木を見るにつけ、流川の中では決着は全然ついていない気がするのである。

≪続≫

*******************

※ハハハ・・・ついに最大のライバル? 赤木が登場しましたねー。(こっそり小暮さんも)ここから話は急展開を迎える・・・予定なのですが(汗)。
 でも冷静に考えたら、北村中が2回戦を戦えてるのかなあ? 一回戦敗北常連校じゃないかなあ、って首傾げちゃいます。(原作21巻参照)まあご都合主義ってヤツで、勘弁してやってください。
 とりあえず、気長に続きをお待ち下さいませ。
 ・・・どーでもいいんですが今回、流川と彩子、まともに話しとらんなあ・・・・・☆


追伸:「エンピツ」経由で来るメール、ちゃんとチェック入れてますv 返事は出せませんが、皆さん感想ありがとうvv


 




茂保衛門様 快刀乱麻!(13) 外法帖
2003年08月30日(土)


※ふふふ・・・このシリーズの更新は、いったい何ヶ月ぶりでしょうか? 数えるのが異様に怖いですわ☆
 さて世間ではいよいよ、魔人学園の続編(と言うか、番外編?)の製作発表が公表されましたねー。主人公がトレジャーハンターと言うのは、学園モノには違和感バリバリという感じがしないでもないですが(汗)。おまけに制作元があのAT○ASとは・・・多分ちゃんちゃん☆ は首、突っ込まないでしょう。二次創作にコトのほか厳しいことで有名なところですから。・・・でも頼むから、「魔人學園」最終話はシャフト単独で作ってくれ・・・☆
 まあ、今はともあれ、榊さんです。今回榊さんは、とんでもない受難に逢ってしまいます。イヤイヤついた任務ではあるみたいですが、やはり榊さんにとっては火附盗賊改与力というのは天職ということなんでしょうかねえ。人間と言うのはとっさのときに本性が現れる、と言いますから。でわ。

 ところでこのコーナー、魔人ファンの方もボチボチ読んでくださっているようですが、最近SDの流×彩方面でこちらに来られる方も多いみたいです。メールで感想いただきましたし・・・またそっちの続きも書かないと。でも、もうしばらくお待ちくださいね、ichanさんv


*****************

「あなた・・・涼浬、と言う名でしたね、どうしてここにいるんですか!」

 一瞬の茫然自失状態から無理やり抜け出して、あたしは何とかそう尋ねていた。

 確かこの女・涼浬が、骨董屋を営んでいるのは王子のはずだ。ついでに言えば、涼浬が属してる《龍閃組》の本拠地は、内藤新宿。
 そしてここは神田。どう考えても、たまたま見かけたから挨拶でもしようと思って着いて来た、なんてことはありえないのだけれど。

「日本橋辺りで、馬で爆走なさるお二方をお見かけいたしました。ただならぬ様子でしたので、後を追って参ったまでです」
「日本橋って・・・」

 さては、おろくの火事について調べてたのね。
 口では何だかんだ誤魔化してたけどこの女、やっぱり笹屋の奥方とあたしの話を盗み聞きしてたってことか、天井裏で。でないと、おろくの火事と笹屋をつなげて考えようなんて、思わないはずだもの。

 が、色々と思案をめぐらせてるあたしをよそに、涼浬はこの場に居合わせるはずのない連中の存在に気づき、いきなり敵意をむき出しにしてたりする。

「なっ!? 貴様たちは《鬼道衆》!? 何故榊様たちと一緒にここにいるのだ!?」
「・・・多分お前たちと同じ理由だと思うがな・・・」

 苦笑いして答えるのは九桐。
 ・・・お前『たち』?
 彼の言葉の真意を測りかねていると、その答えは外から騒々しく突入して来たのだった。

「御厨ーー! 榊ーーー! 無事かーーーー!?」

 げげっ・・・☆ あの声は紛れもなく、蓬莱寺京梧じゃないの!?
 御厨さんじゃああるまいに、何で黙って入って来られないワケ? 涼浬を見習いなさいって! てぐすね引いてお待ちかねの鬼火にとっては、絶好の標的になっちゃうじゃないのさ!

 が。鬼火の方は人間の混乱した事情など、わざわざ把握してくれるはずもない。蓬莱寺の叫び声に呼応するがごとく、戸口めがけていっせいに襲い掛かったのだ。
 あたしが思わず、想像したくもない「黒焦げの半死体」を頭に想像したその時、凛とした声が聞こえ・・・。

『剣掌・・・発勁ッ!!』

 ジャッ!

 続いて、焼けた石に水をかけたような音が響いたかと思うと、戸口に迫っていた鬼火はすべて、その一刀のうちに切り伏せられてしまっていた。

「ったく・・・少しは相手をちゃんとみて襲い掛かって来やがれ。俺は『てめえら』の言わば、天敵なんだよ。涼浬同様な。・・・おっ、2人とも何とか息災ってか?」

 不敵な笑みと共に、怪我ひとつない体で戸口をくぐって現れるは、蓬莱寺京梧。

「な、何であんたまでここにいるのよ!? 蓬莱寺!?」

 つい毒ついたのは彼の<力>を信じていなかった自分を取り繕うためと、あからさまに彼を案じてしまっていた気恥ずかしさからだったんだけど・・・肝心の蓬莱寺の返答と来たらからかいも、理不尽さに対する文句も飛んで来やしない、いつもと違い極めてまっとうなものだった。・・・怒鳴りつけたことをこっちが後悔するくらいに、ね。

「別に俺だけじゃねえぜ。雄慶や藍も来てる。もっとも雄慶は『火』とはあんまり相性良くねえから、入れねえでいるけどよ。藍たちは長屋の連中を宥めてる最中だ。何も知らされねえで待機だけさせられる、なんて、結構神経的に堪えるらしいからな」
「・・・悪かったわね、徒に住人を不安に陥れちゃって【怒】」
「へ? イヤ、別にお前らのやり口を責めてるつもりはねえんだが・・・」


 どこか呑気にも思える会話は、だけどさっきまでは決して起こりえなかったことではある。
 それが許されるのも、鬼火たちが蓬莱寺を遠巻きにして牽制しているからだ。彼の言葉「天敵」を、まさに裏付けるかのように。
 その隙に涼浬は、どこから取り出したのか、あたしの目の前の床にトスッ、と、1本の刀を突き刺した。そして鞘を両手で掲げてみせる。

「榊様・・・どうかこれをお使いくださいませ。どれだけか戦いを有利に運べると存じます」
「これは?」
「銘は『村雨丸』。かの、里見八犬伝にてその名を知らしめた、常に刃に水を湛える刀にございます。この場においては、最良の武器かと」
「むっ、『村雨丸』ですってえ!?」

 里見八犬伝を読む限りじゃ、滴り落ちる水のおかげで切れ味が落ちないって話だけど・・・確かに鬼火たち相手にはもってこいの刀では、あるわよね。
 しかし、てっきり伝説か、作り話の世界の物体だとばかり思っていたけど、実在するものだったとは・・・骨董品店って言うのも、案外侮れないわ。もちろんこの刀がホンモノの『村雨丸』だったとして、の話だけど。

 ゴウッ・・・!


 と、そのうち。
 蓬莱寺とまともに戦っても埒が明かないと見たか、早速1匹の鬼火がおあつらえ向きにあたしめがけて襲い掛かって来た!

「うわわわわわわっ!?」

 情けない悲鳴を上げて攻撃をよけると、あたしは思わず『村雨丸』を引っこ抜いていた。そしてそのままの勢いでほとんどヤケクソになって、鬼火に切りかかる。

 ジャッ!

 ───一刀両断、とはよく言ったもの。今まで苦戦していたのが嘘と言わんばかりにあっさりと、鬼火はその場で切り捨てられた。

「こ・・・怖い刀だわ、これ・・・☆」

 改めて刀を見やりつつ、あたしはゾッとせずにはいられない。

『村雨丸』が聞きしに勝る、涼やかな冷気を持った刀だからってこともある。でもこれはどちらかと言えば、切れ味が良すぎてかえって寒気が来る、ってヤツね。
 正直これは、使いすぎると危険な刀だわ。このまま下手に、たくさんの鬼火を「気持ちよく」斬り続けて御覧なさいな。きっと勘違いして、自分が天下無敵に思えて来るに違いないわ。
 そうしてそのうち、切れ味の良さが忘れられずに夜な夜な獲物を求めて、辻斬り三昧・・・。

 ブルルルッ☆ しゃ、しゃれにならないわよ、火附盗賊改が辻斬りなんてっ。

「・・・役目が終わったら、とっととつき返しましょ(汗)」

 硬く硬く心に戒めて、あたしはとりあえず当面の敵を切り伏せることに専念するのだった。


*******************

 戦況が逆転したのは、それからまもなくのこと。

 この手の相手とは場数を踏んでいるらしい、《鬼道衆》の3人。
 「火」の天敵らしい、蓬莱寺と涼浬の乱入。
 そして、「火」に対しては絶大な切れ味を生む『村雨丸』が冴え渡ったおかげで、この室内を覆い尽くさんばかりにいた鬼火たちは、見る見るうちにその数を減らしていった。
 おかげで、今まで把握できずにいた室内の様子が、一目で分かるようになる。

 とりあえず壁も天井も床も、まだ焦げないままで済んでいるようだ。そして、この部屋に唯一ある襖は押入れのものらしく、わずかに開いた隙間から布団が入っているのが伺える。そしてその布団が、少しだけ震えているのも。
 どうやらこの部屋の住人・油売りの彦一は、鬼火に襲撃された際、とっさに押入れに逃げ込んで難を逃れていたみたいだ。

「・・・榊さん」
「ええ」

 御厨さんも、そのことに気づいたみたい。鬼火たちに察知されないよう目配せで、あたしに知らせてくる。

 やれやれ。何とか無事で良かったわよ。これだけ大騒ぎしておきながら、結局焼死体が1体見つかった、なんてことになったらやりきれないもの。

 そうして・・・。

 ドコッ!!


 風祭の拳が、最後の1つの鬼火を打ち砕いた。
 後に残されたのは───明らかにかつては「人」だったもの。惨たらしい火傷の跡を隠そうともせずあたしたちを睨みつけて来る、小さな子供の幽霊だけだった。
 おそらくソレは、姉・おろくの起こした火事で焼け死んだ、勇之介の成れの果て。

 ───オノレ・・・オノレぇっ・・・! ドウシテオ前タチハ、邪魔ヲスルンダぁ・・・!


 聞いてるだけで気がどうかなってしまいそうな怨嗟の声に、それでもあたしは踏ん張っている。
 理由の1つは、運良く今あたしは1人じゃなかったから。「味方」がいる心強さとか、変な見栄っ張りとか言った感情が、かろうじてあたしに冷静さを失わせないで済んでいるのだろう。

 そして、もう1つの理由は・・・きっと皆の胸を去来する感情と同じものがあたしの心にもよぎっていたから、に違いない。

「勇之介・・・」

 だけど。
 幽霊に対してそう、呼びかける桔梗の表情と来たら、あたしたちのような「悲しさ」を既に通り越して、むしろ「悲痛」と呼べる代物だ。

「ねえ勇之介、もうやめとくれよ、ねえ? これ以上恨みをあちこちに振りまいても、あんたが苦しいだけじゃないさ? 姉さんをハメた挙句にあんたを見殺しにした2人は他ならないあんたの手で、もう十二分に報いを受けてるんだから・・・」

 ───ウルサイ!

 勇之介が吐き出す言葉の1つ1つが、未だ毒と、紅蓮の炎を帯びているように聞こえる。

 ───誰モ助ケテクレナカッタ。ダカラ姉サンハ、サンザン苦シンデ死ンダンダ。
ソノ苦シサヲ、コノ江戸中の人間ニ思イ知ラセテヤルンダ! オ前ガ言ッタヨウニ!!

「・・・・・っ!?」

 桔梗の顔が、目に見えて歪む。

 きっと彼女は、勇之介に<力>を与える時に言ったのだろう。自分と姉のおろくを救ってくれなかった連中に、今こそ思い知らせてやれ、とでも。
 それは《鬼道衆》の野望のためになるというよりは、無念のうちに非業の死を遂げた姉弟に同情したから、だったのかも知れない。
 ───でも結局、過ぎた復讐は憎しみを倍増させただけ。勇之介の気は、これっぽっちも晴れちゃあいなかったみたいだ。

 何とか説得して凶行をやめさせようと思っていたのだろうけど、自らの『好意』が裏目に出てしまった今。桔梗は項垂れて顔色も悪い。
 そして彼女とは裏腹に、冷静な表情と確固たる決意を胸に前へ進み出たのは、九桐だった。

「・・・もうやめておけ桔梗、こうなることは半ば、分かっていたことだろう」
「く、九桐・・・」
「下がっていろ。一気に済ませる」

 そうとだけ言い、九桐は槍を構えたかと思うと勇之介に切りかかる体勢に入る。仮にも子供の「なり」をした幽霊を手にかけようというのに、その顔つきからはまるで罪悪感などは感じられない。少なくとも、表からは。

 あえて下世話な言い方をすれば、自分たち《鬼道衆》にとって不都合を招くから勇之介を始末する、格好になるのだ。・・・だがそれについて何も言い訳を口にしない辺り、潔いというかなんと言うか。
 おそらくは蓬莱寺の方は、そのことを察してるんでしょうね。「自分たちがそそのかしておきながら」云々、と噛み付こうとする涼浬を、やんわりと押しとどめているのが見えた。


 後になって思い返せば───その時のあたしたちは、勇之介の幽霊に対してのみ完全に、意識を集中させてしまっていた。
 室内にいた鬼火を全部切り捨てた後、って安心感や、戦闘後の疲労感も作用していたのだと思う。そして、あとはこの勇之介さえ何とかすれば騒動は解決するんだ、って油断も。

 だからよもやこの場面に、予期せぬ第3者が表戸を開けて乱入してくるなんて、全くの想定外だったのだ!!

「おっ父(とう)!!」
「・・・・・・・・・!?」


 おそらくは裏道を駆け抜けて、外で待機していたはずの《龍閃組》の目に止まることもなしに、この家へたどり着いたんだろう。油売りの父親、恋しさに。
 だけどこの場合、それは最悪のたいみんぐに他ならなかった。

 ───死ネ!!

 憎しみと殺意に支配されている勇之介の呪詛の声を聞くや否や、あたしは弾かれたように飛び出していたらしい。
 それはほとんど無意識の行動。後先なんて何も考えていない、全くあたしらしからぬ無謀な動作。

 それが正解だった、と実感したのは、小娘を懐に抱きかかえたまま前のめりに倒れこんだ直後。こともあろうに勇之介は、父親思いのこの娘を(お夏とか言った名前だったかしら?)焼き殺そうとしていたのだから───父親の目の前で!!
 幸いなことに油売りは、子を殺される親の悲惨な悲鳴を上げずに済んだけど。

 グォオオオオッ・・・・・!

 熱く、赤く炎が立ち上り。

「あ・・・・・・あああああああっ!?」

 代わりに室内に響き渡ったのは・・・・・背中から全身を炎に包まれたあたしの大絶叫だった・・・。


《続》

***************************

※今回、ちゃんちゃん☆ は、今シリーズを書く際に取り決めていたモットーを、自ら破ってしまいました。
 それは、「外来語を使わず、日本語だけで文章書くぞ!」ってこと。まあ漢字と平仮名だけだと読みにくいことはなはだしいので、適当にカタカナを混ぜてはいたんですが、日本語以外は使いたくなかったんですよ。だって榊さんはれっきとした純日本製の侍ですし、勝麟太郎のように国外のことに詳しいわけでもないですから。
 でも・・・でもねえ・・・「タイミング」に該当する日本語がどーしても思いつかなかったんですよお!! 苦し紛れに「たいみんぐ」と平仮名で表記してますけどね。うう、日本語ってホントウに難しいよお・・・。

 そーいえば今度「外法帖」をリメイクしたゲームが作られるそうですねえ。これ書いてる途中でのっぺりに知らされ、おいおい・・・と思いましたわ。
 よーするに「剣風帖」においての「朧綺譚」みたいなものだったりするんでしょうか? だったらちゃんちゃん☆ が望むのはたった1つ。
「今度こそ榊さんED作ってくれ〜!!!」(笑)


 ちなみに今回執筆中、聞いていたBGMはアニメの「はじめの○歩」だったりするんだな。いつもこのシリーズ書く時は、絶対「魔人學園」のBGMだと決めていたのに・・・意志が弱い筆者を許してくれ・・・☆



まどろみの彼方 おざなりダンジョン(笑)
2003年05月30日(金)

 ───モカ。

 己の名前を呼ばれた気がして、少女はゆっくりと重いまぶたを開けた。

 ───モカ。私が見えるか?

 彼女の目の前にいたのは、どこか高潔な雰囲気のある長い髪の男性。自分とは違い、何やら動きづらそうなズルズルベッタリなフードを着た青年が、こちらに優しいまなざしを向けて微笑んでいた。

 懐かしいような、忘れていたような、そんな切なさにも似たものを覚える笑み。

「・・・・・?」
 
 どうやら向こうは自分を知っているようだが、あいにく彼女の記憶には残っていない。・・・いや、正確に言えば、どこかで会ったような面影は、感じてはいるのだが。
 こちらの戸惑いに気付いたのだろう。青年は今度は苦笑を浮かべ、再び言葉を紡ぐ。

 ───確かに私が、この姿で君の前に出るのは初めてなのだな、モカ。私が誰かは、さすがに分かるまい・・・。

「ウチに分かって欲しかったら、ちゃんと名乗りでんかい」

 モカの言い草に、青年の笑顔に翳りが浮かんだ。

 ───無理なのだよ。この世界の私は、自分の名前は名乗れぬから。・・・もどかしいものだな。これまで、ずっと一緒に旅をしていたと言うのに、もはや自分ではお前には名乗れぬ存在に、成り果ててしまうとは。

 ずっと一緒に・・・?

 その言葉に、モカはあまり働かせるのが得意ではない頭脳を、フル回転させる。

 自分と一緒に旅をしてきた者・・・。
 それは、盗賊であり、鍵開けの天才でもあるブルマン。
 操る魔法は確かに強力だが、無口で何を考えているのかさっぱり分からない魔法使い・キリマン。
 自分こと、ケンカと冒険が3度のメシより好きな、戦士・モカ。
 そして・・・・・。

「・・・・・・あ」

 やっと思い出した。と言うよりも、考えがいたらなかったのだ。
 確かにずっと一緒にいた。他の2人よりは短い間ではあったが、いつも側にいた。
 ある時は剣として。ある時は空を駆けるものとして。自分とずっと一緒に戦いつづけながらも、ついこの間、時空の歪みに巻き込まれて生死不明となってしまった・・・。

「あんさんか・・・どうりでどっかで会った事ある、思うたわ」

 彼の名前は、敢えて口にしないモカ。
 だって「それ」はまるで、人づてに聞いた御伽噺の登場人物のようなもので。自分は結局、1度として彼の名を呼んだ事はなかったのだ。
 だから、この期に及んで口にしたところで、嘘っぱちなような気がしたから。
 モカにとっては、「彼」は「彼」でしかありえない。それだけに「あんさん」としか「彼」のことは、例え様がなかったのである。

 随分自分勝手な理屈ではあったが、青年には通じたらしい。相変わらずだ、と笑ってから、少しマジメな顔つきになる。

 ───モカ、やはり君は、ローレシア大陸に行くのか?

「当たり前やないか。何かすっきりせえへんもん。ごちゃごちゃ考えとるよりはまず行動や。その方がウチらしいんと違うか?」

 ───てっきり私は、未知の大陸があるから血が騒ぐ、とでも言うと思ったのだが。

「あ、いや、それもちょっとはある、思うけどな」

 ───フフ、君らしいな。・・・だがモカ。もし君がローレシアへ赴くのが、単にアベルとの約束のためなのだったら、そして再びアベルを助けるためだけなのなら、やめておいた方がいい。彼も言ったはずだ。『新しいアベルは自分とはかけ離れた存在になるだろう』と。君がローレシアの『アベル』を助ける事は必ずしも、君の知る『アベル』が望む事では、ないのかも知れぬから・・・。

「何や、それ。禅問答かいな」

 モカはかなりムッと来たようだ。

「ウチも言うたはずやで。あんさんと一緒に黒い龍のオッサンと戦うた時に。これからいい事する奴でも、今悪かったらお仕置きするもんや、て。それとおんなじや。もしこれから悪いことする奴やったとしても、今困っとったら助けたる。
大体ウチには、小難しい事分からんさかいなv」

 ───モカ・・・。

「・・・何であんさん、いきなりそないなこと言いに来たんや? いつものあんさんなら、そないなこと言わんへんのに」

 てっきり分かってくれてると思ってたのに、とまるでふて腐れたようなモカに、青年は寂しそうな視線を向けた。

 ───そうだな・・・君と一緒にいた頃の私なら、こんなことは言わなかったのかもしれない。だが・・・今の私は少し不安なのだ。

「何が?」

 ───色々と、だ。スマンな。今の私には、それを告げる事はできぬのだ。

「・・・・・・」

 珍しく、モカは沈黙した。
 かと思うと、おもむろに彼女は、青年の方へと掌を差し伸べるようにする。
 果たして───彼の体に触れる事は出来なかった。すぅっ・・・と、まるで幻のように姿が透けて見える。

 モカの表情に、いらだたしさがうかがえたのはだが、一瞬だけ。

「ま、ええわ。今度ちゃんと会えるんやから」

 あっけらかん、とモカは笑った。
 「会えたら」ではない。「会える」と彼女は言った。まるでそれが夢まぼろしではなく、期待でもなく、約束された未来のように・・・。

 ───・・・ローレシアの私も、君の知る私とは違うかも知れぬぞ?

「そんなん、会って見んと分かるかいな。ウチはあんさんの側へ行く。ウチが決めたんやから、それでええやろ」

 ───君の知る私が、それを望まなくとも、か・・・。フフ、愚問だったな。君はいつもそうだった。結果を恐れず、正しいと思うことを、なすべきことをして来たのだから・・・。

 諦めたような、それでいて嬉しそうな目の青年を、しばらくモカは黙って見ていたのだが、おもむろにボソリ、と言った事がある。

「・・・何や。ひょっとしてあんさん、色々ある言うて、そいでウチと会いとうない、会うんが怖い、思うとったんか?」

 ───・・・・・・!?

「ウチのこと見損なわんといてや。そないなことでウチは傷つかん。それに、あんさんがウチに会いとうない、言うても、ウチは絶対押しかけて行くからな。そいでまた、一緒に冒険するんや!」

 どこか儚げな存在だった青年が、その時だけ目を見開いた。そして、心から嬉しそうに笑った。

 ───そうか・・・。なら止めないぞ。君の思う通り、君の進むべき道を来るといい。そして・・・。


 何時でもいい。いつかきっと、私に会いに来てくれ───そう言った青年の声は囁きにも、反響ともつかぬ響きを持っていて。
 モカの耳には、きちんとは届かなかった・・・。


***********

「なーんか変な夢、見たような気がするなあ・・・」

 旅の途中。起き掛けに朝食と相成ったモカは、ブルマンとキリマン相手にそう呟いていた。

「夢!? モカでも夢なんか見るのか!?」
「・・・何やブルマン、ウチが夢見るのがそんなにおかしいか?」
「イヤ、その、いつも寝に入ったら即座に爆睡してるからさあ・・・」
「△※→×◎」
「キリマン・・・そこで恐々、ウチを拝むんはやめい☆」
「そ、それで、どんな夢を見たのさ?」
「それが・・・全然思い出せんのや。おかしいなあ・・・」

 夢を見た。それは覚えている。なのに、どんな夢を見たのかは、覚えていないと来た。
 それが夢と言うものだ、と言われればその通りなのだが・・・。

 酷く懐かしいような空間に、いたような気もするのに。

「ああ、ええわ。思い出せる時は思い出すやろ」

 そう言って立ち上がろうとした時、モカは無意識に腰の「それ」に手をやろうとして・・・違和感にふと、そちらを見やった。

 そこにあったのは、ずっと持ち慣れて馴染んでしまった「彼」の姿ではない。グレイト・ソウルにたくされた、ロゴスの牙より作られた黒い、剣───。

「・・・モカ・・・」

 心配そうにするブルマンに気付き、モカは気合入れとばかりに、自分の腰をそのままパアン! と叩いた。それからようやく、ロゴスの剣に手をやる。

 きっと何時かは、慣れてしまうだろう。「彼」のいない違和感に。
 そしてロゴスの剣を振り回すのにも、自分は慣れてしまうのだろう。

 だが自分は必ず、「彼」に会いに行く。
 違和感をふさぐためでもなく、ましてや約束のためでもない。
 自分が会いたい、それだけのために。

「じゃ、早速出かけるかぁ!」

≪終≫

************

※何だこれは、とは言ってはいけません。きっと誰も書かないであろう(涙)、こやま基夫著「おざなりダンジョン」のパロディーSSです。作中ではついに名前を出す事ができなかったエスプリ、彼とモカのコンビがスゴく好きなんですよねえ。
 最終巻でモカは、アベルを救う事が出来なかった事で号泣しますが、これってきっとエスプリとの最後の約束を果たすことが出来なかったから、もあるんだろうなあ、と勝手に思ってます。
だから「なりゆきダンジョン」がああ言う形で連載停止したのは、今だにすごく悲しいです。モカはエスプリにも会いに行ったんだろう? だったらせめて、それらしいキャラ出してくれよ〜とか何とか思って。(イヤ、まさかとは思うが、アイツがそうだと言うんじゃないだろうな・・・☆)
 もしこのSSにピンと来た方は、是非「おざなりダンジョン」全17巻、読んでください。ワクワクしますからv 


Darling(6)SD・流×彩?
2003年04月21日(月)

 えーーー。「茂保衛門様」書かずに、いきなりこちらの更新です。最後に書いたのが2001年11月02日だったから、実に1年5ヶ月ぶりの新作と言うことになるんだなあ・・・(滝汗)。
 何で久しぶりにこのシリーズを? とお思いでしょうが、色々なワケがございまして。
 1つ目は、せめてこのレンタル日記を1ヶ月更新状態にしておきたいと言う事。でも「茂保衛門様」は、書くのにそれなりの労力が必要になるので、そっちを1ヶ月更新というのは、さすがに無理。それで、一応まだネタが残ってるし、そんなに長丁場でもないこのシリーズを、久しぶりに書いてみようかということであります。
 そして、もう1つの理由。・・・実はこのシリーズに、初のメールでの感想が送られてきたんだったりして(感涙)。VETTYさん、ありがとうございます。都合で返事書けませんが、とりあえず新作復活!ということで、良かったらお許し下さいませ。

**************

Darling(6)

 睡眠不足の体を抱え、流川は富ヶ岡中学の廊下を不機嫌な顔で歩いていた。

「・・・見つかんねえ・・・」

 断わっておくが、家ではきちんと睡眠をとっている。ただ困ったことに、学校の授業中眠ろうとしたところ、全然眠くならなかったのだ。

 そもそも授業中に眠るとはどういうことだ、と教師から反論が来そうではあるが
、そこは流川の日頃の行ないがモノを言った。いつもぐーだらと眠りこけている問題児が、目の座った顔で親の敵を見るような目つきでこちらを睨み付けてくるのである(本人は単に、不機嫌だっただけだが)。その間、教師とクラスメートたちは(一部女子生徒を除き)生きた心地がしなかった。
 教室の平和と、教師の心の平安のためには、やはり流川にはいつもの通り眠っていてもらった方が良い、と、半ば野放し状態に決定されてしまったのであった。むろん、本人は知らぬことではあるが。

 とにかく今の流川は、安眠できる環境を手に入れようと、校内を徘徊している状態なのであった。
 2年の教室棟まで来た時である。何やら廊下のつきあたりで人だかりを見つけた。
 見れば掲示板に、テストの成績が張り出してあるらしい。皆が悲喜こもごもの声を上げるのを、単なる傍観者の流川はさめた目で見ていたのだが。

「げーーーっ、彩子ってば、また順位上げたわよ」
「バスケのマネージャーしてて毎日クタクタのくせに、バケモノよバケモノ」
「天はニ物を与えるって、やっぱアリなのかねえ」

 ・・・少々のやっかみと、好意を感じる声に、ふと成績表を見やる。
 確かにそこには彩子の名前が、何と10位以内に書かれていたのだった。

<ま、俺にはカンケーねーけど>

「あれ、どうしたの流川」
 声をかけられ、振り返る。
 そこには、流川がずっと探していた彩子。
「あんたが2年の教室棟まで足を運ぶなんて、一体どう言う風の吹きまわし? 困るわよー、今日は傘持ってきてないんだからさ」
「雨なんて降らねえっス」
 笑いながらのからかい言葉に、さすがの流川も即座に反論を返していた。
「あはは、ゴメンゴメン。だけど、本当にどうしたのよ? いつもなら休み時間なんて、あんたの絶好のお昼寝タイムじゃない」
 何で知ってるのか、とか、あんたは俺が昼寝してるところを見たのか、とか、色んな言葉が頭の中を交錯したが、あえて流川が口にしたのは1つだけ。
「イエ・・・眠れなくて」

 ───流川のその言葉を聞いた時の彩子の表情と来たら。
 こういう表情こそ、「鳩が豆鉄砲を食らったような」と言うにふさわしいものだろう。

「眠れないって・・・あんたが?」
「そう」
「一体何があったのよ? 何か拾い食いでもして、お腹こわしたとか?」
「俺は犬じゃねえ☆」
「だ、だけどさあ・・・」

 彩子の心配そうな声が、耳に心地よく響く。
 女の声は高いから苦手だし、おまけに結構大きな声だと言うのに、どうしてだ? と流川が訝しがった時。

 ぺとっ。

 彩子の、柔らかくてすべすべした掌が、流川のおでこに押し付けられた。

「・・・・・っ!?」

 流川はあろうことか、ひどく動揺した。そして思わず後ずさってしまう。
 当然、彩子の掌はおでこから外れたわけなのだが・・・。

「あ、ゴメン、イヤだった? でも熱はなかったみたいで、安心したわ」

 流川の今の態度を、女性への嫌悪と受け取ったのだろう。苦笑まじりに彩子は、手を元の場所に下ろす。
 そのやわらかな手を、流川は半ばボーゼンとして見送っていた。

 ───あの手の感触がなくなったおでこが、こんなにもスースーするものだとは、思いもよらなくて。

「でも気分が悪くなったら、ちゃんと保健室に行くのよ? 我慢しちゃダメよ流川」

 彩子の忠告にも、ただ馬鹿みたいにブンブンと首を振るしか出来なくて。

 ───この時。
 さしもの流川も、自分がどうやら彩子に対して特別の感情を抱いていると言う事実を、自覚せざるを得なくなったのだった。


 実のところ、流川が休み時間を利用して2年の教室棟まで来たのは、彩子に会うためだったのである。
 昨日、試合帰りのバスの中、流川はいつの間にか彩子の膝枕で寝てしまう、という失態を起こしてしまった。目が覚めた後でチームメートから、完全にやっかみの声を浴びせられたわけだが、別にそんなことで堪える流川ではない。

 ただ・・・彩子の膝枕の使い心地はと言えば、家の自分のベッドでの寝心地に勝るとも劣らないものだった。ふんわりとして、あたたかくて、時々いい匂いがして・・・。それを思い出すと、教室の固い机の上などではどうにも眠ることが出来ず、結果寝不足になってしまった。
 それで、出来たら膝など貸してもらえないだろうか、と、後先まるで考えずにここまで足を運んでいたのだけれど。

<出来るかああっ! 掌だけでこんなにドキドキすンのに、膝枕してくれなんて、言えるわけねえええっ!>

 外見こそいつもの無表情な流川であったが、その中身は相当焦りまくっている。
「? どうしたの、何か顔赤くない?」
 おまけに、心配そうに彩子が顔を覗きこんで来ては、表面上はただただ沈黙を守るしかなくて。
 そんな流川の葛藤にケリをつけたのは、だが、新たなる葛藤の始まりを告げるものでもあったのだが・・・。

「彩子くん、テストの結果見たよ。すごいじゃないか」
 いきなり彩子にかけられた声に、我に返る流川。見れば声の主は流川も知っている、バスケ部の顧問教師だ。
「ええ、まあ、今回は頑張りましたから」
「しかし、バスケ部のマネージャーは休んでなかったじゃないか。私も鼻が高いよ。『バスケばっかりやって、勉強がおざなりになる』なんて言葉、平気で使ってくる先生もいるからねえ。彩子くんを見たまえ、と言ってやりたいよ」

 完全に流川の存在は無視されている。イヤ、気付いていないのかもしれない。
<そろそろ教室に戻るか・・・>
 一抹の寂しさと、どこかしらの安堵感を覚えつつも、流川はこの場を立ち去ろうとしたのだが。
「どうだね? 神奈川でも1、2を争う進学校を志望校にしたら?」
 教師の口から飛び出した言葉に、思わず足を止めていたのである。


 ・・・突然だが、流川の学校での成績はというと、さんさんたるものだ。いつも授業中居眠りしているのだから、当たり前ではあるが。
 だから、進路希望相談係の教師からは、「バスケで行ける高校を目指したら?」とまで言われるくらいで、本人もそのつもりでいた。
 バスケ顧問の教師から、爆弾発言が飛び出すまでは!

「そこって、バスケ部あるんスか?」
 流川は感情の赴くまま、彩子と教師の話に首を突っ込んでいた。
「る、流川?」
「は? バスケ部? い、いや、確かなかったと思うよ。進学校だからね、どちらかと言えば文科系の部が多いところだし」
 教師はとりあえず、そう答えたが。
「・・・・・・・」
 目の据わった流川ににらみ付けるようにされては、それ以上の言葉を口に出せずにいる。
 そのうち。

 キーンコーンカーンコーン・・・。

 休み時間終了を告げるチャイムが鳴り響き、とりあえず教師に安堵の息をつかせたのだった。

「早く教室に戻んなさい」と彩子に促され、教室への階段を降りる流川。だがその内面はと言えば、平穏なものとは程遠かった。
 目はすっかり覚めている。と言うより、睡眠不足を忘れてしまうほど、彩子の進路方向は彼にとって、青天の霹靂だったのだ。

 下手をすれば、自分が彩子と一緒にいられる時間は、あと2年しかないと言うことになるじゃないか!

 恋心を自覚した直後の衝撃の事実に、流川は足元がおぼつかない自分を感じるのであった。

<続>

***************

※良いのか? 流川。あんな言い方じゃ、聡い先生なら流川→彩子に気付いてると思うんだけど(汗)。
 ところで今回出てきた、バスケ部の顧問教師ですが、実は登場は初めてじゃないんですよねえ。以前、塚本と彩子の問題で、キャプテンの二階堂と一緒に、流川に話を聞いていた教師と同一人物だったりします。新しいキャラ持ってきても、ややこしいだけだからなあ・・・。


 
 




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