友人にメールを打っていて、はたと手が止まった。 湊かなえの「告白」で、少年Bの母親役をやっていた、あの女優さんは誰だっけ? ポンズやナビスコのCMに出ていたあの人……うーんうーん。 目の前の箱で調べればいいのだが、ブラウザを立ち上げて、名前以外の思い付く限りのキーワードを打ち込むのが面倒だったので、後ろを振り返って主人に訊いた。 「ねえ、ヒガシの奥さんって誰だっけ。顔は判るんだけれど、名前が出て来なくて」 「ヒガシの奥さん……僕も名前が出て来ないな。でもあの人だよね、ええと、『マリーの桜』でデビューした」 「『マリーの桜』?」 「そういうドラマがあったの。名前は加藤なんだっけな」 と主人。 私の知らないデビュー作まで知っているとは恐れ入ったが、あの女優さんの顔を思い出して当て嵌めたが、加藤という名前はしっくり来ない。 「違う。加藤じゃない」 「そうだっけ? じゃあ『マリーの桜』で探してご覧」 と言うので、結局また前を向いて、インターネット・ブラウザを立ち上げた。 「マリーの桜」で検索してみると、出て来たのは
かとうかずこ ……。 「違う! ヒガシって言ったらそのまんま前知事じゃなくて、少年隊のヒガシの事でしょ!」 「えっ違うの。東って言ったら東国原の事かと。と言うか、少年隊の東山は結婚していたのか」 「してるよ。今度子供も生まれる筈。しかし、かとうかずこのデビュー作なんてよく知ってるね。そのドラマ、観てたの?」 「ううん、観ていない……でも何故かそれでデビューした事は知っている。何でだろ」
肝心の女優の名前は、グーグルで検索する前に思い出した。 木村佳乃だった。
TVゲームが嫌いだ。
ゲーム自体は好きだ。 うっかり1時間2時間が平気で過ぎるほど夢中になる。 大好きだが、主人がプレステ系を始めると、TVを占領されてしまうのだ。 最近は見たい番組自体が減ったから良いが、ニュースなどを今!今見たいの!という時は困る。 震災後は主人のゲーム熱も冷めたようで、やれやれと思っていたが、いつの間にか新しいソフト(我が家において新しいという意味で、世間的には全く新しくない中古品)を買っていた。 しかも我が家のコントローラーでは動かないと知って、新しいコントローラーまで。 ……まあいいけれどね、稼いでいるのは主人だから。
今日はコントローラーが届いて、早速新しいゲームをやっていた。 私がトイレから戻って来ると、彼が言った。 「シオン、今何か言った?」 「言ってないよ。そもそもこの部屋にいなかったじゃん」 「ふーん……」 あーまた何か聞こえたのか。 言いたくなさそうだったが、質してみると、 「後ろで誰かが『死んでいいよ』って言った」 だそうで。 女の声? 子供の声? と重ねて訊いたが、わからないと言う。 またかよ……また何かいるのかこの部屋に。 しかし見えないものは仕方が無いので、私はまた家事に、主人はゲームに戻った。 そしたらほどなく、 「死んでいいよ」 と。今度は私にも聞こえた。 「これだー!」 とTVを指差す2人。 そう、ゲームの声であった……。 「何が『後ろから聞こえた』だよ。思いっきり正面じゃねーか」 「あー良かったー」 泣きそうな顔の主人であった。
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