遅くに帰宅した主人が、飲み会での様子を話してくれた。 主人は実際の年齢よりも若く見られる事が多く、今日も 「あれ、春さんってK木さんより年上なの?」 と言われたそうだ。 主人の後輩であるK木は、それを聞いて憤慨したという。 「いやいやいや、僕いつも春さんに敬語遣っているじゃないですか! 同い年だったら敬語遣いませんって」 「ハハハ、そう言えばそうか」
そんなK木氏は、愛妻家である。 K木の娘は、主人曰く「両親のいいとこ取り」でなかなか可愛いのだそうだ。 (因みに息子は父親似でアホ顔。逆じゃなくて良かったと他人事ながら思う) お嬢さん可愛いんだって?と同僚に言われたK木、、 「そうなんですよ。あいつは母親に似まして」 と言ってのけたそうで、横でそれを聞いていた主人は、お茶を噴き出しそうになったという。 「あいつは凄いよ、何たって自分の奥さんが1番だと思っているからな。何かと言うと、二言目には『でもうちの奥さんが1番美人ですけれどね』って言うんだぜ。客観的にちっともそんな事無いのに」 と主人が呆れ果てているので、 「それは、見た目じゃなくて性格が美人だと言う事なんじゃ」 とフォローを入れてみたが、主人はブンブンと首を横に振った。 「全然。あいつの奥さんの事も知っているけれど、性格的にもどうなのよそれはって感じなんだよ。なのに奥さんに首っ丈なんだ」 「あ、そう……」 でも、それはそれで素晴らしい事だと思う。自分で選んだ奥さんを貶すより、よっぽどいいよ。 客観的に微妙な奥さんでも、亭主本人がそこまで気に入っているのなら、本人達は幸せなのではないだろうか。
「ところで、K木は兎も角、貴方はどうなの? 奥さんが1番美人だと思ってる?」 と奥さんとして気になるところを付いてみた。 「うちの奥さんは1番ですよ」 「1番『美人』かどうかを問うているのだが」 「充分可愛いからいいの、見た目じゃないの。うちの奥さんは唯一無二の存在ですから」 とヨシヨシしてくれたけれど、何だかお茶を濁された気分だ。
夕食が早過ぎたのか、夜になって、急に空腹感に襲われた。 主人が 「こないだ買ったチーズでも食べる?」 と言うので、一口分けて貰った。
ホントに美味しい……!
リッツに付けて食べてみた。やはり美味い。 今度は酒が欲しくなる。チーズには赤ワインだと主人が言うので、貰い物の赤ワインを開けた。
うえ〜〜〜
やはりワインは苦手だ。一口飲む度に、酷い顔になる。 そんなに不味そうに顔して飲まなくても……と主人は言うが、開封しちゃったんだし、飲まなきゃ消費し切れないだろうが。 責任を持って主人に全部空けて欲しいところだが、彼はほんのふた口、お猪口1杯分でもう真っ赤っ赤で、これ以上飲んだら死んでしまう。 仕方が無いので、私が飲むしかない。 1人で半分ほど空けた。流石に1本全部は無理。 アルコール容量的にではない。味の問題だ。 美味しかったら余裕で空けるんだけれどな。 チーズとリッツも結構食べた。 これは、心配だ。 折角頑張って、食べる量を減らしていたのに、これでは元の木阿弥ではないか……!
それでも結構いい気分になって、お片付けに台所に立った主人に絡んでみた。 そしたら主人がひょいと避けたので、バランスを崩した私は、そのまま横にひっくり返った。 体を支えようと手を付いたのだが、それが間に合わずに変な方向に捻ってしまった。 「シオン、大丈夫か」 「ううん、大丈夫じゃない……肩が、肩が痛いよう〜」 嗚呼これはまずいと思いつつ、自分でもどうにもならなかったのだ。 咄嗟に体が動かないというのは、恐ろしいと思った。 老人体験装置というのがあって、視界の狭い色付き眼鏡をかけたり、腕や脚に錘を付けたりするが、そんな物無しでも老人の気分を体験する事が出来た。 体の自由が利かないのは恐ろしい。 どうせなら、元気な年寄りになりたい。
でも、出来れば歳は取りたくないな!(無理)
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