お手頃価格で美味しい果物があるので、車で行くスーパーだけではなく、徒歩圏内のスーパーも結構利用している。
ある日、そのスーパーに行くと、他の客が目に付いた。 普通のお客とは違う、一種異様な雰囲気。 知的或いは精神障害者だと思われた。 それだけなら別にいいのだが、その客、豆腐売り場で、
陳列された商品を端から1つずつ、 指でぷにぷに確認していた。
何を確認していたのかは判らない。 それがお豆腐だけなら、百歩譲って、鮮度を調べていたのかも知れないと思えない事も無いが、豆腐→油揚げ→がんも→と渡り歩いているのはアウトだろう。 それって、子供ですら許せない行為である。 見ず知らずの他所の子供がやっていたら、 「買わないんなら触るんじゃないよっ」 と迷わず注意するだろう。 しかし相手は大人。中身は兎も角。 どんな反応が返って来るか、私には未知の領域である。 うへぇ……と思いつつ、見守る事しか出来なかった。 そういう時に限って、近くに店員いないし。 でもバイトの女の子じゃあ、どうにも出来ないかなあ。 勿論犯罪ではないけれど、他のお客には不愉快である。 少なくとも、私はもうここで豆腐類を買う気にはなれなかった。
それ以来、他所で買った豆腐でも、パッケージごと洗ってからでないと、開封出来なくなってしまった。 案外繊細なのね、私。
また硝子製品が1つ消えた。 今度はデザート用の器。 これは結婚した時に、実家の納戸に眠っていたのを、親から貰って来た物だ。 どこかからの頂き物だそうで、家に来てからは毎日のように活躍していたため、壊れてしまうとちょっとしょっく。 2人家族なのに3個セットだったから、困る事は無いのだけれど。 今回は床に落とした訳ではなく、洗い物をしていた時に他の食器にぶつけてしまい、結構大きな罅が入ってしまった。 私がしょぼんとしていると、主人があーあと言い、 「シオン、最近よく物を壊すよねえ」 と余計な事を口走ったので、物凄くカチンと来て、言い返した。 「はあ? そりゃ貴方と違って、私は全部洗って棚に仕舞うまでが仕事なもんで、食器に触れている時間が永うございますからね。割る確率だって貴方と比べたら高くなるのは当然じゃないの? 算数苦手なの? 頭弱いの?」 「そうじゃなくて、シオンは物の扱いが乱暴だから……」 「へえそう、私のせいだって事ね。じゃあ貴方が食器洗って、見本見せてよ。言っておくけれど、ちゃんと汚れを落とさないと意味が無いんだからね? 勿論、目が悪いからよく見えなかったとか言う言い訳は無しよ。さあどうぞ!」 捲くし立てているうちにヒートアップしてムカついたので、スポンジを流しに叩き付けようとしたその時、主人が口を開いた。 「駄目〜。お皿洗うのはシオンの仕事☆ だって洗い物嫌いなんだもん……」 上目遣いでこっちを見る。 ……。
可愛いんですけどー!
「反則! 50近いおっさんが可愛い振りして、ずるいぞ! そうやって私の怒りを殺ごうという腹積もりなんだろ! そうはイカの[ピー]」 「やめなさい、そんなの女性が口にする言葉じゃありません! てか可愛いってなんだよ、そんなの意識して出来る訳無いでしょ」 えっじゃあ、無意識に可愛い仕草をしているのか! 正確には、私が可愛いと思う仕草だが。 しかしそれで結果的に私の攻撃を躱しているという事は、自然に身に着けた技なのか。 それはそれで、防衛本能って凄いと思った。
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