買い物に行ったら、スーパーで尿意を覚えたので、トイレに入った。 用を足して個室のドアを開けると、私とほぼ同時に誰かが個室から出た模様。 手洗い場でぶつかるかな、と思っていたら、その人物は何の水音もさせずにさっさとトイレから出て行ってしまった……。
後姿をチラッと見ただけだったが、子供だった。
私は手を洗ってから、店内に戻った。 顔は見ていないが、服装は覚えている。 目で探すと、その子は遠くない場所にいたが、私が近付くと何故か逃げる。 走って捕まえるのもどうかと思ったので、「一寸待って」と声をかけた。 彼女は素直に呼びかけに応じ、立ち止まってこちらを見た。 いつもの詰問調にならないように気を付けながら、なるべく優しく言ってみた。(努力するほどの事なのか) 「ね、貴女、さっきトイレにいたよね」 「はい」 「でも手を洗わなかったでしょう? 戻ってちゃんと洗ってらっしゃいな」 トイレの後で手を洗わないのは駄目だという事は判っているようで、彼女はばつが悪そうに俯いて、小さく「はい」と返事をすると、小走りにトイレに戻って行った。
何年か前に、TVで見た男子トイレの映像を思い出した。 あれはアメリカだったと記憶しているが、トイレで用を済ませた後、水場をスルーして手を洗わない人、しかも大人が、実際に半数ほどいたのだ。 手を洗って拭くという動作が、面倒臭いらしい。 ……男性なら余計に手を洗って欲しいのだけれど。水だけではなく、石鹸でごしごしと。 ああいうのは、教育によるのだろうなあ、自分は良くても他人には迷惑だし、逆の立場を考えたら洗うべきだと考えないとはなんという想像力の欠如だろう、と思ったものだった。 私がスーパーで見かけた子供は小学校中学年ぐらいの年頃だったが、悪い事だと判っていて、どうして洗わなかったのだろう。 面倒だったからだというなら問題だが、後ろの個室から私が出て来たために吃驚したのかも知れない。 でも世の中の親達にはお願い。 トイレの後には必ず手を洗うように躾けてね!
主人とスーパー・マーケットに、買い物に出掛けた。 服なら兎も角、食品売り場でウィンドウ・ショッピングはしない私。 それに対して彼は、あれこれ見て回るのが大好きで、デパ地下なども滞在時間が永いため、一緒にいると私は疲れてしまう。 今日も私は目当ての物を買ったらさっさと帰るつもりだったのだが、主人が魚を買った後も肉売り場を見て、お惣菜コーナーでも足を止めていた。 「これ美味しそう」 と主人がお惣菜を差して言うので、私は心の中でやれやれと溜息を吐いた。 「今日はもう買ったでしょ。そんなに色々と見ていたら目移りするし、次々買っていたら食べ切れないでしょ」 「食べ切れるもん、大丈夫だよ」 と口を尖らせる主人。子供か。 勿論却下である。 「そんな事言ってるから、いつまで経っても痩せないのよ!」 そう言い捨てて私がさっさと歩き出すと、シオン、自分が思うように痩せないからって、人に当たっちゃ駄目だぞう〜などと言いながら主人が付いて来る。ムカつく……! 「ほら、馬鹿な事言っていないで、豆乳とヨーグルト買って帰るよ」 と乳製品売り場に行くと、売り子さんが試食を配っていた。 「美味しいチーズですよ、どうぞ〜」 主人が取ってくれたので、私も食べてみた。 「まあまあ美味しいね。モッツァレラか」 と御馳走様をしてその場を離れると、売り子のおばちゃんが次のお客に試食品を手渡しながら言っているのが聞こえた。 「美味しいモッツァル…チーズですよ〜」
モッツァル・チーズ? 思わず振り向いてしまった。 主人の袖を引っ張る。 「今の、聞いた?」 「うん……」 その後もおばちゃんは、1度も正確な商品名を言う事が無かった。 「違う! モッツァルじゃなくてモッツァレラ!」 と少し離れた場所で突っ込みを入れる主人に、そんなに気になるならおばちゃんに言って来なよ……と勧めたのだが、それは嫌だと言う。 「どうして自分の目の前にある商品名を、ちゃんと読まないんだろう」 「うーん、多分片仮名が苦手なんだよ……だって、モッツァル・チーズと言い切らずに、モッツァルと言った後にゴニョゴニョとなんか言い淀んでいたもの」 と会話を交わしている間も、おばちゃんはずっと「美味しいモッツァル…チーズですよ、どうぞ〜」と言っていた。 嗚呼、気になる……。 そう呟いたら、シオンが言って来りゃいいじゃんと主人に言われた。 でも私も嫌よ。 人が少ない時間帯なら兎も角、引っ切り無しに客が試食しているその場で指摘する勇気は、流石に無いかなー。
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