土曜日だったが主人は既に出勤し、私は「パズル」の録画を観ていた。 前日21時は主人と2人で「インディ・ジョーンズ」を観たので、「パズル」はビデオに撮っておいたのだ。 主人は、このドラマがさほど好きではないらしい。私は好きなのに。 2匹目の泥鰌を狙っているのは明らかなのに、「トリック」ほど面白くないという事で、低目の評価を付けている人が多いらしいが、所々に鏤められた笑いの仕掛けが私には堪らない。
ニヤニヤしながら観ていると、突然揺れた。 いつもならすぐに収まるのに、今日に限って永い。 これは、大きい。自分史上最大の揺れだ。 慌ててビデオを止め、次にどうするかを考えた。 住まいの建物は古くはないが、上が落ちて来たらひとたまりも無い。 財布と通帳を持って外に出るか? いやしかし、顔は洗ったものの、化粧は愚か、日焼け止めすら塗っていない。潰されるのも嫌だが、紫外線も怖い。 そこで私が取った行動とは、
家の中を静かに歩き回り、只管 「鎮まれ〜鎮まれ〜」 と念じたのであった。
その甲斐あってか揺れは収まり、食器棚が倒れる事も無く、棚の上の物が落ちたぐらいで済んだ。 それも、私の置き方が悪かったため。その辺の物をごちゃごちゃと積み上げていたので、すぐにバランスを崩したのである。 地震が収まった時、私の祈りは聞き入れられたと思った。 今後、これ以上大きな余震が来る事は無いだろうと、何故か確信したのであった。 後で主人にこの話をしたところ、何だかとっても脱力されたのだが。
揺れが収まってすぐにTVをつけると、地震速報をやっていた。 緊急地震警報も出たらしい。TVではなくビデオを観ていた私には、全く役に立たなかった訳だが。 仕事に出かけた主人から電話があり、続けて実家から電話があった。 気持ちは有難いが、地震直後に安否確認の電話なんて入れちゃ駄目だろうが! 因みに主人によると、私の携帯にかけても全然繋がらず、家の固定電話に掛け直したという。 どっちにしろ、在宅中は私の携帯は鞄の中に放置したままなので、最初から固定電話でも良かった訳だが。
岩手と宮城の県境の辺りでは、死人も出たらしい。 でも、家から飛び出してトラックに轢かれた人まで、地震での死者にカウントしちゃっていいものだろうか……遺族も恥ずかしかろうに。 寧ろ、トラックの運転手さんの方が気の毒。
掃除と洗濯をして、さあ一息入れようとTVのスイッチを入れた。 ワイドショーの時間は終わってしまって、地上波では見るべきものが無いため、BSをつけたら、N響定期をやっていた。 指揮は準・メルクル、グリンカ作曲の歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲……知らない。 そして、知らない曲だと眠くなる私。家計簿をつけながら、ついうとうととしてしまう。 次はラフマニノフ作曲のピアノ協奏曲第2番。 これなら知ってるー♪と目が覚めた。 ピアノは中村紘子。超有名どころである。 しかし。 この演奏を聴いて、別の意味で目が完全に覚めてしまった。
ええと、これって、お金取っていいレベルなの?
切れの無い、乱暴なラフマニノフ。 客席にいたら、演奏が終わってお辞儀をする中村紘子に向かってブーイングしちゃうかも……と、お金を払って聴きに来たであろう聴衆に同情してしまった。 日本のクラシック・ピアノ界を永年牽引して来た彼女も、もう65歳。そろそろいいお歳である。 以前、歌手の引き際について書いた事があったが、ピアニストにも寿命があるんだなと思った出来事であった。
ステージが終わって、何故かブラボーの声が飛んでいたが、あのブラボーは中村紘子より寧ろ、準・メルクルに送られたものだったのか。 大変だよねえ、ソリストとオケを繋がなきゃならない役なのだから。 そう言えば、指揮者と言うのは、音楽家としても人間としても結構寿命が長い。 朝比奈御大も、90を超えてステージに立っていらした。 あの全身を使った適度な運動が長生きの秘訣だと聞いた事があるが、強ち本当なのかも知れない。
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