最近、トイレで用を足すと、甘い匂いがする。 パパイヤかマンゴーか、南国の果物の香り。 但し小ではなく、大の方だ。 もしかして、何かの病気なのでは……。
糖尿病が進行すると、尿から甘い匂いがする事があるらしいが、大便はどうなのだろう。 身内の医療関係者に、それとなく訊いてみた。 答えは、 「重症の糖尿病患者の尿の匂いが甘いのは、糖を使えないから、他からエネルギーを作ろうとする過程で出るアセトンの臭い。大便は吸収されなかった残りカスで、代謝産物が排泄されるものではないため、甘い匂いがするなどという病気の話は聞いた事が無い」 との事だった。 じゃあ、病気じゃないんだ……ホッとした。
暫くして、気が付いた。 甘い匂いは、便ではなく、トイレット・ペーパーのだという事に。 吐き気を催すような毒々しい香り付きの紙がやっと無くなったので、いい匂いのする紙を買ったんだった……。
その日、幾つかのグループに分けられて、人類は処刑される事になっていた。 主人と私は1番最後のグループで、すぐ前のグループの知り合いから、餞別として10万円を貰った。 嬉しいけれど、これは遣わずに、くれた人が無事に生還したら返そうと思って、取っておいた。 最後の日なので一緒にいたかったのだが、主人は仕事があるからと言い、私を置いて出勤してしまっている。 人類滅亡まで、あと1時間。 まだかなあと思いつつ、私は主人のオフィスの隣りの教室で、彼の仕事が終わるのを待っている。 ああそうだ、くれた人と同じように、私も誰かに餞別を渡すべきなのかしら。 でも1番最後の組だし、渡す相手もいないからいいよね? お金惜しさに、そんな言い訳を自分の中で作っていた私だった。
目が覚めて、生きていて良かったと思った。 自分で分析してみて、 ・主人は妻より仕事優先なのではないかと、私は不安に思っている ・私はお金大好き という事が、改めて判った。 決して仕事より軽んじられている訳ではないと知っているのに、土日も仕事でどこにも連れて行って貰えない事を、私は心のどこかで不満に思っているようだ。 口にして解決する問題でもないので、私が我慢し続けるしかないのだが。 何故教室なのか、意味は解らなかったが、我慢も程ほどにして、時々はどこかに連れて行って貰おうと思った。
|