この冬、足を捻った。 と言うのもその時、両手が荷物で塞がっており、何とか鍵を開けて足で玄関のドアを思い切り開けたら、地面に着いていた方の足がグキッとやってしまったのである。 うおーうおーと暫く唸っていたが、その内に痛みが引いたので、そのまま放置していた。
それが、ひょんな時に痛むのだ。 捻った方の足に体重をかける時、小走りになる時、痛みが蘇る。 病院に行くまでも無いと思ったので放置していたのだが、それが悪かったのだろうか。 しかし今更病院に行ってもなあ。 そして主人に言われた。 「シオンももう、怪我が治り難い歳になったんだよ。僕もそうだった。それだけの事さ」 ……全力で逆らいたい気分である。
外出の際に香水は欠かさなかったのに、昨年の秋に吐いて以来、私は香水の類が一切駄目になってしまった。 あの時つけていた香水だけでなく、他の物もうええとなってしまう。 それまでは香水は好きだったのに、最早それらは洗面台の下で、無用の長物と成り果てていた。 特に自己臭が気になって仕方ないという訳ではないので、それでもそんな生活に慣れていたのだが。 (寧ろ自己臭好き。但し自分で楽しむの限定だが。主人の匂いと同じぐらい好き。尤も主人のは、加齢臭かも知れない……)
うちでは時々お香を焚く。主人が好きで、色々と持っているのだ。 1番好きなのは伽羅。しかしこれが馬鹿高い。1箱1万円。 新婚当時、主人に恐る恐る、 「無くなったら買ってもいいよね?」 と訊かれたなあ。 あの頃箱一杯だった伽羅香も、今では残り数本となったので、街まで買いに出かけた。 落ち着いた雰囲気のお店で、上品な老婦人店主は、オマケに香木を付けてくれた。 後で主人から聞いたところでは、ここはいつも何かしらのオマケを付けてくれ、店の感じもとても良いので気に入っているとの事であった。 帰宅してお香を焚いていて、ふと思った。 そう言えば、お香の匂いは以前と変わらず何とも無い。 うちには竹の籠も無いし万一火事にでもなったら怖いので、昔の人みたいにお香を焚き染めるのは大変だが、抽斗に入れてみたらどうだろう。 取り敢えず1箱だけを、お香グッズを纏めて入れてある小さな抽斗から洋服箪笥に移し、オマケで貰った香木も別の段の抽斗に入れてみた。
翌日、抽斗から出した洋服を着たら、ほんのりと移り香がした。 これは良い。 オマケの香木もいい匂いがする。 香水はまだ無理だが、暫くリハビリも兼ねて、これを続けてみよう。
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