卒業式の後は謝恩会である。 会費は出すから美味しい物でも食べておいで、と母に言われたのだ。 そんな事言われても、知らない人ばっかりだしな〜と思ったが、お姉ちゃんも行こうようと妹にしつこく言われるし、只で美味い物を食べられるならそれもいいかと思い直して、出る事にした。 仕事で謝恩会場のホテルをよく利用する教授も沢山いるんだし、ホテル側だって安くて不味いオードブルなどは出さないだろう。
レンタルの袴の返却期限は、16時。 しかし謝恩会は15時〜16時半なので、謝恩会が終わってからでは間に合わぬ。 卒業式会場から着付け会場に直行すると、学生はまだ誰も来ていなかった。 予めお願いしていたので、場所だけ借りて妹の着付けをさせて貰う。 袴を穿く時は着物を短めに着るので、袴を脱いで帯を結ぶだけでは振袖の着付けにならない。 振袖の着付けは会場の着装師との契約の範囲外なので、私が着付けをし直さなければならないのだ。ヒー。 でも着付けを手伝ってくれる優しいおばちゃん。このおばちゃんは、頻りに妹の振袖を褒めてくれたらしい。 私としては、自分のペースで好きなようにゆっくり着付けをしたかったのだが、衆人環視(卒業生がまだ来ないので、他の着装師達は暇→自然に私が注目されてしまう)しかも百戦錬磨のプロの中でド素人の私が着付けをするというのは、とっても緊張して焦るんですが。 何とか帯も結んで、荷物を纏め、おばちゃん達にお礼を言って会場を後にした時には、私はもうぐったりしていた。
ホテルのロビーで時間を潰し、謝恩会場へ。 受付を済ませて中に入ったが、朝会って挨拶した妹の友達数人と父兄1人以外は、やはり知らない人々ばかりである。 会が始まり、まずは学部長以下数人の挨拶。これが長い長い。 立食形式なので、椅子など無い。 若いのは兎も角、私よりうんと年寄りの教授&父兄でさえ、突っ立ったままじっと話を聞いているが、普段引き籠もりで基礎体力が低下しまくりの私はふらふらである。 このまま我慢するか、こっそり外に出るかは……自由だ〜! 少なくとも、我慢し過ぎてその場でぶっ倒れるよりは遥かにマシと思い、後ろのドアからこっそりとロビーに抜け出した。 ソファに深く凭れて、ふ〜っと一息ついていると、やっと挨拶が終わったらしく、会場の中からざわめきが聞こえて来たので戻る事にする。 他の父兄達は会場の隅で、親同士固まっているが、私は親じゃないしどうせ知らない人ばっかりだし今後関わる事も無いだろうし、食べなきゃ損!とばかりにさっさと箸を持って、並んだ料理を片っ端から皿に盛って行った。 勿論、目指すは全種制覇である。 食べるのに飽きると、教授達に挨拶して回っている妹の所に行き、一緒に挨拶し、 「お母様ですか? 随分お若いですね」 と言われると 「いいえ、母でも継母でもありません。姉です〜」 とにっこり笑い、妹に「これ美味しいよ。食べてみ」と食わせ、卒業生の余興が始まると前列に行って見物し、好きなように振る舞っていた。 後に妹の友人をして、 「ドビーちゃんのお姉ちゃん、会場内を自由に泳ぎ回っていたよね」 と言わしめるほどだったという。 何じゃそりゃ!
気になったのは、一組の老夫婦が、部屋の隅でポツンと詰まらなそうにしていた事。 大学まで行かせて貰ったのに、子供は何しとるんじゃ。 確かに謝恩会は師に感謝する会なのだろうが、親を放っておいて、それってどうなのよ。 と一寸思った。まあ結局そんな子供に育てたのは親なんだけどさ。
2007年03月25日(日) |
これでいいのか最高学府 |
愚妹の卒業式に、両親代理として列席した。 妹の着付けのために早起きして、和装用の化粧をしてやって、着付け会場(妹の着付けはプロに頼んだ。袴はレンタルだし)へ送り届け、妹のアパートに取って返す。 (前日に下見をしたとは言え、不慣れな土地なので迷いそうだったが、「太陽が左手にあるから、このまま直進でいい筈」「あの看板には見覚えがあるから、ここで右折か」と、野生の勘&記憶力を働かせて何とか帰宅) 休む間も無く、今度は自分の着付け。 天気も良いので、洋服ではなく、家から持って来た江戸小紋を着る。訪問着にしようか迷ったが、どうせ私は主役じゃないんだし、これでいいや。
式典会場近くの待ち合わせ場所に行くと、着飾った卒業生達がそれぞれに写真撮影をしていた。 妹はすぐに見付かったが、髪がボサボサである。 いや勿論、着付け会場で美容師さんにちゃんとやって貰ったのだが、毛先がパサパサなのだ。 本人は、卒業式まで髪を伸ばして、終わったら切ろうと思っていたらしいが、毛先ぐらいは揃えておけよ。 何故そこまで考えが至らぬのだ、この子は。
卒業式は、学長の話が案外良かった。 そこを突っ込んでもう一言あれば、こちらの話に繋がるのに惜しいなあとは思ったが。私が事前に添削したかったよ。 酷かったのは、卒業生たちの態度。 専攻毎に立ち上がり、名前を呼ばれた代表者が壇上へ上がるのだが、それ以外の卒業生は、携帯やデジカメで写真を撮っているのだ。 つまり、自分は会場で立っているのに、代表者が卒業証書を受け取る様子を写真撮影しているのだ。 式典とか、公的な場という意識が全く無いのだろうか。 二十歳を少しこえた程度では、そんなものなのか? 自分の場合、どうだったろう。 写真機能付き携帯やデジカメは無かったが、そんな事をしたら、確実にうちの親は子供を叱るよなあ。 そう思っていたら、隣でジーコジーコと螺子を巻くような音がする。 見ると、隣席のオバサンが、使い捨てカメラで壇上を撮影していたのだ。 総代である娘を撮影するのに、使い捨てカメラかよ!(笑) そりゃ名誉な事だから、写真に収めたいという気持ちは解るが、スマートじゃないよな。 こういう親では、子供が卒業式で壇上を撮っても、それを叱る事は出来ないだろう。何故なら、その資格が無いから。 子供の行事の度に傍若無人にビデオカメラを回すような親に育てられた子供は、こんな風になるのだなあと思った卒業式であった。
そして、思わぬ再会があった。 会場の入り口で、「先生!」と声をかけられたのだ。 私が結婚前に、一寸だけ勉強を見ていた子だった。 そうか、妹と同じ大学に入ったと聞いていたが、ストレートなら今年で卒業だものね。 もう社会人か〜感慨深いなあ。 何年も会っていないのに、私だとわかって声をかけてくれた事が嬉しかった。 彼女に会えただけでも、卒業式に来て良かったと思った。
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