天上天下唯我独尊

2007年03月11日(日) 我が心のヒーロー

私と妹ドビーは、歳が離れている。
なので、私にとってドビーは、妹というよりも玩具であった。
一方、妹にとっての私は、何でも知っていて勉強も教えてくれる、自慢の姉だったらしい……歳が離れていればそれだけ長生きしているという事で、妹が知らない事を知っていて当たり前なのだが。
だから、うちのお姉ちゃんは学校の成績も優秀!と信じ込んでいたのだな。恐るべき誤解。

そんな、お姉ちゃん大好きの屋敷しもべ妖精だが、こいつはいつも、寒そうな格好でやって来る。
ここはお前の住んでいる所よりも寒いんだから、もっと暖かい服を着て来なさいと言っているのだが、お洒落優先な年頃なのか。
今回も例に漏れず、上はババシャツに薄手のセーターだけという服装だったので、ババシャツの上にこれを着ておきなさいと言って、タートルネックのカットソーを渡してやった。
これは私が縫った物で、一寸首周りが狭い。
もっと伸ばしながら縫うべきだったなあと、作り終わってから思ったのだが、首がぎりぎり入る程度である。
ところが。
「お姉ちゃん、頭が通らない〜」
「先にこれを被りな。摩擦が少なくなって、着易くなるから」
とスカーフを渡したが、それでも頭がなかなか出て来ない。
「うわーん」
「頑張れ、もう一寸だ!」
と応援したが、私は気付いてしまった。
黒いスカーフを被った丸い頭が、タートルネックの丸い穴から覗いている。
こ、これは……。
「わははは! お前のその格好、今まさに肛門から出ようと頑張っているウンコみたいだ! 写真に撮ってもいいよね? 一寸待ってて、今デジカメ持って来るわ」
と私が鞄を取りに行こうとしたところ、妹は激しく抵抗。
「駄目! 絶対駄目!! それより何とかしてよう〜」
格闘の末、妹の頭は何とかタートルネックから生まれて来たのだった。
「おめでとう。大変な難産だったね」
と私が言うと、妹は真っ赤な顔して憤慨していた。
「酷いよお姉ちゃん、人をウンコ扱いして! 大体何でこんなに首周りの狭いの作ったのさ!」
「確かに狭いけれど、私はそんなに苦しむほど……あ、そうか。背格好は同じぐらいだと思っていたけれど、ドビーの方が私よりも頭が大きいんだ」
うんこ扱いされた上に顔がでかいと言われ、益々顔を赤くしてキィ〜となる妹であった。

こんなに酷い扱いを受けても、私は妹のヒーローらしい。
小さい頃に可愛がっておくと、屋敷しもべ妖精はよく懐く。



2007年03月10日(土) Dr.鍵穴

「これが世界のスーパードクター」という番組を見た。
こういう最前線で働く医者は大変だなあ。
名誉もあるが、同時に大きな責任があるもの。

主人は、頭が良い。
少なくとも私はそう思っているので、訊いてみた。
「ねえ、貴方ぐらい頭が良ければ、医学部なんて余裕で行けたんじゃない? 何故行かなかったの」
「んー、人が痛がっているのを見るのが嫌なんだよね。血も嫌いだし」
……詰まらんのう。
「それに、」
と彼は続けた。
「うちの親が言ったんだ。『医者や裁判官といった、他人様の生き死にに関わるような仕事に就くなら、それなりの覚悟をしろ』って」
……それは、重い言葉だなあ。
確かに半端な気持ちで医者になられたら、患者は堪ったものではない。
勉強が出来る子供は取り敢えず医学部に、と考える愚かな親や教師がいるが、そういう人達に聞いて欲しい言葉だと思った。
しかしそれと同時に、こうも思った。
「なるほどつまり、貴方にはそれだけの覚悟が無かったって事か」
「うん、そう♪ 他人の命に責任なんて、怖くて持てないや。僕はシオンだけでイッパイイッパイだよ」
うむう。

番組に登場した医師の1人で、福島孝徳という脳外科医が印象的だった。
この人の手術は、「鍵穴手術」という手法を用いるもので、手術による傷口が小さい分、患者への負担が少ないという。
確かに医療技術は素晴らしい。
しかし人格的にというか性格的に、「うわーこんな人と一緒に仕事したくないわあ」と思ってしまった。
手術が終わって、スタッフと一緒に飲みに行く場面があったのだが、ここでもDr.福島オン・ステージ。
「全てはねえ、キーの穴、鍵穴なんだよ」
長広舌で鍵穴手術を自画自賛する福島氏に、箸も動かさずにじっと俯くスタッフ。
そして、食卓の上で放置される河豚刺し……。
「ああ〜勿体ねえなあ! 折角の河豚刺しが乾いちまうよっ」
「ああいうジジイは『そうですよね〜、先生は凄いですよ!』と適当に持ち上げとけばいいんだから、スタッフも『ほらほら、河豚が乾く前に食べちゃいますね』ってさっさと食べちまえばいいのに」
と、遊びに来ている妹と盛り上がっていると、主人がこう言った。
「誰かさ、5mm程度の穴の開いた紙を、『さ、先生、この穴からどうぞ』って言って、この人の前に出してやればいいんだよ。『おっ、難しいな。しかしこれが鍵穴の極意! あっ河豚が穴に引っ掛かって取れないぞ?』と1人でやって貰えばいいのさ。そしたらこいつも、ああ鍵穴が全てじゃないんだって、自分の愚かさに気付くだろうよ」
どうしてこの人は、こういう事を思い付くのだろう……。
勿論、私と妹は腹の皮が捩れるほど大笑いしたのだった。

「ところで、脳外科医ってどうしてこういう、俺が俺がって自己顕示欲の強い人が多いんだろ」
と妹。
友人の医学生のところの脳外科の教授もこんな感じの、俺様タイプなのだという。
その教授の目下の望みはテレビ朝日の「本当は怖い家庭の医学」に解説役の医者として登場する事なのだが、未だ叶っていない。
そして、「福島さえいなければもっと俺様が脚光を浴びるのに」と思っているらしい。
色々な逸話のある人で、周囲からはアスペルガーの疑いを掛けられているという。
俺様だから脳外科を選ぶのか、脳外科医をやっているうちに俺様になってしまうのか、それは謎である。


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