屋敷しもべ妖精がやって来たので、早速おニューの鞄を見せびらかす。 「凄い、本当に買ったんだ……。お義兄さん、優しいなあ」 と私の前では言っていた妹ドビー。 ところが主人の前では 「お義兄さん、お姉ちゃんを甘やかし過ぎですよ〜」 と来たもんだ。 それに対する主人の答え。 「まあ、世界で1人ぐらいはシオンに優しくしてやってもいいかなと」 「1人だけかよ!」 妹、大笑い。
朝、頭が痛くて起きられなかった。 出勤する主人を、布団の中からお見送り〜。 頭痛が治まった9時頃、漸く起きたのだった。 その晩、夕食の時に、妹に言われた。 「お姉ちゃんって、いい暮らししてるよねえ」 「何それ、どういう事さ」 と訊くと、 「だってー、朝ゆっくりしててもいいし、あんな高い鞄買って貰えるし、子供もいないし仕事もしていないのに、いい生活だなあと思って」 つまりニートって事か? すると間髪入れずに、主人が言った。 「僕もそう思うよ」 ぶはあ。そう来たかっ。 私も妹も大笑い。 「でもさ、家の中の事はちゃんとやってくれるし、まあ偶にはご褒美もやらないとね」 家の事……してるかなあ。 と一寸考える私の横で、 「でも私がいると、家の事半分しかやらないよね、お姉ちゃん」 とブツブツ言う妹であった。
恋の炎は、簡単には消えない。 私には高嶺の花だと知っていた。 けれど、やはり諦め切れない。 だから私はあなたに恋し続ける。 触れるどころか、その姿を2度と見る事すら叶わなくても。
廃盤だと聞いて永遠に諦めた筈の例の鞄だったが、私は何かに取り憑かれたようにネットで探していた。 公式サイトから消え、オークションでも色違いしか見付からず、あちこちの輸入代行業者に問い合わせては入手不可と言われ、嗚呼もう駄目なのか……と絶望しかけた時、最後の代行業者から連絡メールが来た。 諸経費込みで、7万円。 店頭価格よりは安いが、それでも庶民には迷える値段である。 しかしここでまた見送ったら、私は再び、いや三度、後悔する事になるだろう。 ネットバンキングで代金を振り込み、待つ事1週間。 ほわ〜んな鞄は海を越え、とうとう私の家にやって来た。 うふうふうふ。 包み紙を剥がして大きな箱を開け、薄紙に包まれた鞄を手に取る。 嗚呼、幸せ……。
「ジャジャーン! 買っちゃいました♪」 帰宅したダーリンの目の前に、鞄を突き付けると、彼はこう言った。 「えっ、ホントに買っちゃったのか……」 え? だって貴方、廃盤と聞いて凹んでいる私に、こう仰いましたよね。 そんなに欲しかったら、買ってもいいよ〜って。 「もしかして」 鈍い私もやっと気付いた。 「廃盤で、どうせ手に入らないだろうと思っての『買ってもいいよ』発言だったの?」 「ハハハ、そういう事。まあ、買っちゃったんだから仕方ないか。暫くシオンのお小遣いは無しだな。シオンに対して出る扶養手当は、ひと月1万5千円なんだから、5箇月分か」 でもいいの、やっと手に入ったのだから、ダーリンありがとう。 大事に使います。
|