天皇皇后両陛下も御覧になったという、映画「あなたを忘れない」の宣伝を、TVで見た。 2001年1月26日、東京は新大久保駅で、ホームから落ちた酔っ払いを助けようと線路に飛び降り、一緒に死んでしまった韓国人留学生のお話である。 他にも1人の日本人が一緒に降りているのだけれど。
あれからもう6年も経つのか……と懐かしく思い出してしまった。 当時知り合いだった小学生達が、学校での出来事を話してくれた。 その日は、学級会の議題で、新大久保駅事故を取り上げたらしい。 「それで、MちゃんとCちゃんはどう思ったの?」 と私が訊くと、高学年の2人は言った。 「偉いと思った。自分の身の危険も顧みずに、線路に飛び込んだんだよ? 普通出来ないよねー」 シオンさんもそう思うよね?と問われて、私は正直に答えた。 「うーん、私はそうは思わないな。確かに、人を助ける行為は尊いものだよ。その点については偉い。でもね、この人達(助けようと線路に進入した2人)は落ちた人を助ける事が出来なかったばかりか、自分達も死んじゃったでしょ。犬死にだったよね」 そう言った途端、2人の集中砲火を浴びてしまった。 「酷い! 冷血!」 「クラスでも4人しかいなかったよ、そんな冷たい事言う人!」 そうか、4人しかいなかったか。随分少数派だなあ。 正直に答え過ぎたかと苦笑いして、私は続けた。 「でもね、よく考えて。人を助けようとしても、自分が死んでしまっては、自分の家族まで悲しませる事になるんだよ? 人助けは素晴らしいが、後先考えずに行動しちゃいけない。もしあなた達が同じ状況に置かれても、自分の命まで危険に晒される場合は、飛び降りては駄目だよ。あなた達には、ここまで大切に育ててくれたお父さんとお母さんがいる。家族や友達がいる。その人達を悲しませるような事をしちゃ駄目だ。人助けのために死ねば、マスコミが美談として取り上げ、人々は感動するが、遺族の悲しみは消えない。親より先に死ぬのは、最大の親不孝だぞ。それをよく覚えとけ」 気が付いたら、つい熱弁を振るっていた。 2人とも何だか神妙な顔で聞いているので、私はこう付け足した。 「まあ、あれだ。1番悪いのは、勝手に線路に落ちた酔っ払いだな」 「そう! そうだよね」 「そうだよ、最初にあの人さえ落ちなければ、3人も死なずに済んだのにさー」 と、2人はまた元気に喋るのだった。
新大久保駅の事故の話を聞くと、あの子達を思い出す。 もう高校生なのか。早いなあ。
うちの主人は、かなり黒い冗談でも、平気で言う。 仮令個人の日記でも、ネット上に書いたら最後、某巨大匿名掲示板に晒されて叩かれるであろう事も、口にしてしまう。 悪気は無いのだが、当事者が聞いたらどう思うかと叱られそうな事を言うのだ。 (じゃあ当事者の耳に入れなきゃいいじゃないか、と私などは思うのだが、いちいち当事者になり切ってその気持ちを代弁してくれる人も、世の中にはいるようである)
今日も主人が、飛び切りのブラック・ジョークを言ってくれた。 私は彼の冗談は大好きなので、酷いなあと思っても大笑いしてしまった。 思い切り、私のつぼだったので。 私が一頻り腹を抱えて笑い、涙を拭いながら 「酷いわね、貴方って。人でなしだわ」 と言うと、彼はショックを受けたようだ。 曰く、 「シオンに人でなしと言われるなんて……馬鹿に馬鹿と言われたようだ」 だと。
つまり、人でなし夫婦だという事で。 因みにその内容は、本日の表題のようなものである。
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