うちの主人は、かなり黒い冗談でも、平気で言う。 仮令個人の日記でも、ネット上に書いたら最後、某巨大匿名掲示板に晒されて叩かれるであろう事も、口にしてしまう。 悪気は無いのだが、当事者が聞いたらどう思うかと叱られそうな事を言うのだ。 (じゃあ当事者の耳に入れなきゃいいじゃないか、と私などは思うのだが、いちいち当事者になり切ってその気持ちを代弁してくれる人も、世の中にはいるようである)
今日も主人が、飛び切りのブラック・ジョークを言ってくれた。 私は彼の冗談は大好きなので、酷いなあと思っても大笑いしてしまった。 思い切り、私のつぼだったので。 私が一頻り腹を抱えて笑い、涙を拭いながら 「酷いわね、貴方って。人でなしだわ」 と言うと、彼はショックを受けたようだ。 曰く、 「シオンに人でなしと言われるなんて……馬鹿に馬鹿と言われたようだ」 だと。
つまり、人でなし夫婦だという事で。 因みにその内容は、本日の表題のようなものである。
1日中、何をしていても、頭から離れない。 寝ても醒めても、思うのはその事だけ。 まるで、恋でもしているようだ。
私はブランド物に興味が無い。 それなのに、とあるブランドの鞄に一目惚れしてしまった。 百貨店内をぶらぶらしていて、仮令気に入っても買えないからと、いつもなら目もくれずに通り過ぎるだけなのに、それがふと目に留まった。 松田聖子の言葉を借りれば、ビビビっと来たというやつである。聖子嫌いだけれど。 私に似合う色で飾りが可愛くて変わった取っ手が付いている事で、今まで興味が無くどちらかと言えば敬遠していた形なのに、ハートを撃ち抜かれてしまったのだ。 カ・ワ・イ・イ。 因みにお幾ら?と値札を引っ繰り返すと、お値段約10万円なり。 ム・リ。 後ろ髪をひかれる思いで、私は店を後にしたのだった。
お金に無頓着なダーリンなら、買ってもいいよと言ってくれるかも知れない。 そんな期待を抱いて訊いてみたが、 「10万円!? 本気で買うつもりなの?シオン」 ……そう言われたら、「うん♪買って」なんて言えなくなるじゃん。
欲しい欲しいと思いつつ、再び店を訪れてみると、もうその鞄は無くなっていた。 売れてしまったのだろうか。 はあ〜と溜め息を吐くと、ダーリンが言った。 「あの鞄を可愛いと思うのは、シオンだけじゃなかったって事だよ。そして他の人達には、それを買うだけのお金があって、うちには無かった。それだけの事さ」 その通りなんだろうけれど……。
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