遊びに来ている妹は、来春の就職が一応決まっている。 連日、ウィンドウ・ショッピングに、大型立体商店街と百貨店を梯子して回っているが、 「ほら、ほわ〜んなセーターだよ。あっちにはコートが!」 と私が指差しても、彼女は 「あっ本当、可愛いなあ……でも欲しがりません勝つまでは!」 と必死で物欲を消そうとしている。 そして、 「就職したら、あれもこれも買いたい物があるなあ〜」 と夢を膨らませるのだ。 「一寸、その考えは危ないと思う。お金を稼げるようになったら、物欲が爆発する危険性があるよ。そうだ、ドビーが無駄遣いしないように、お姉ちゃんがお給料を預かってやるよ!」 と私が親切で言ってやるも、 「えっ……それって横領されそうでイヤ」 などと言う。 怪しからん奴だ。 「そうだ、村上ファンドならぬ『お姉ちゃまファンド』に預けたらいいよ。利回り確実だよ!」 「え……利回り『確実にマイナス』とか言われそうだから、止めとく〜」 チッ、余計な知恵が付いて、やり難いったら無いよ全く!
試験の合間を縫って、屋敷しもべ妖精がやって来た。 次の試験まで暫くあるらしいので、妹が息抜きに遊びに来たのだ。 勿論、私としては大掃除を手伝って貰うつもりだ。
屋敷しもべ妖精の朝は遅い。 主人が出かけてもまだ寝ている。 痺れを切らして私が部屋に入ると、彼女は目覚まし代わりの携帯電話を握り締めて寝ていた。 どうやら、目覚ましで起こされたものの、切ってそのまま再び眠ってしまったらしい。
顔を洗うのに異常に時間がかかるので、先に朝食を食べさせて、それから洗面所に追い遣る。 顔を洗ったら掃除をさせる。数日泊まるのだから、最早お客ではない。 それにしても、しもべ妖精は本当に便利だわ〜! 自分で雑巾がけしなくていいってのは、なんて楽なのかしら。 掃除の後は、しもべ妖精は只管PCのゲームで遊び続ける。 今嵌まっているのは、shockwaveのZUMAだ。 放っておけば、1日中でも飽きずにやっている。 その様子を見て、主人は 「本当にきょうだいなんだね……」 と呆れていた。
多摩市で元東京都職員の自宅から死体発見のニュースを見た。 元職員は一人暮らし、息子は東京大学を出たものの、自殺したらしい。 自慢の息子だったろうにねえ……。 「東京大学じゃなくても、生きててもいいんだよ」 と妹の頭を撫でておいた。
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