倫理観は、困った事に、人それぞれだ。 意見や見解が人によって異なるのは当たり前だが、倫理観だけは統一しておいた方が便利だと、私は思う。 その最低基準が神様や閻魔様の存在だった訳だが、「閻魔様に舌を抜かれるよ!」などと言って子供を躾ける親は、現在では稀なのかも知れない。
宇和島徳洲会病院の替え玉腎移植で一躍有名になった泌尿器科医・万波誠は、前任の私立宇和島病院でも13件の病気腎移植を行っていたという。 これは記録が残っている分だけなので最低でも13件という事であり、実際の数はこれより多いのだろう。 聞いたところによると、万波誠という人は、泌尿器科学会では昔から問題視されていたらしい。 警察にも以前からマークされていたという話も出ている。 因みに主人は、「この人は患者のためというより、自分が名を上げるためにやっているという感じがする」と霊視(?)していた。
普通の人間にしてみれば、病気の腎臓なんて気持ち悪いが、それでも欲しいと望む患者もいるのかも知れない。 問題は、それが患者に伝わっていたかどうかである。 万波氏の手術を受けた患者達で作る「万波先生を支援する会」というのが、2400人分の署名を集めて、厚生労働省と日本移植学会に対して、万波氏が今後も移植に取り組めるように嘆願した。 勿論万波氏だって、普通の腎移植も行っていただろうし、腎移植を受けて感謝している患者も多いだろう。 私としては、病気の腎臓でもいいから移植して欲しいと患者が望むなら、それでもいいんじゃないかという気はする。
でも、患者が望むなら何をやってもいいとは思わない。 諏訪マタニティクリニックの根津八紘みたいに、祖母に孫を産ませるのは如何なものかと。 あの人はあの人なりに信念を持っているのだろうが、依頼人の頼みだから何でもやってやるというのはどうなのさ。 患者が頼むなら、盗みもするのか? 人も殺すのか? 尤も、産婦人科は堕胎も請け負うのだから、人殺しはあり得るが。 人間として踏み越えてはならない一線というのがあると思うのだけれど、科学者・研究者にはそれが判らないらしい。 祖母による代理出産について、主人に訊いてみた。 「シオンのお母さんが代わりに産んでくれるのならアリ。でも、僕の母親が代わりに産むのは絶対嫌。気持ち悪いもん」 ……どっちの祖母が産むにしても、充分気持ち悪いと思うんだけれどな、私は。
寒くなったので、主人が趣味のお菓子作りを再開させた。
よくTVで、ご主人が趣味で料理や蕎麦を作るけれど、片付けはいつも私の仕事……などと愚痴るご婦人を見掛けるが、何故きちんと片付けさせないのか、不思議に思う。 以前にも書いたが、小学校の頃に先生から言われたように、「家に帰るまでが遠足」なのだ。 「料理を作るのは結構だが、片付けまで責任を持ってやりなさい。それが出来ないのなら作らなくても良い!」と躾ければ良いだけの話だ。 主人の片付けは雑だから、自分でやった方がましというのなら、付きっ切りで片付けの仕方を指示して教え込めば良いだろう。 他にも、美味くも無い蕎麦を大量に打つので、片付けるこちらも大変……という愚痴も聞くが、それならはっきり不味いと言ってやれば良い。 他所から貰った蕎麦なら本人の前で不味いとは流石に言い難いが、何故家族なのに要らんところで変に気を遣うのか、私にしてみれば実に不思議である。 世の奥様方は、何と遠慮深いのだろう。 でも、我慢して無理にストレスを溜め込むよりは、夫を上手く教育し直した方がずっと賢いし、精神衛生にも良いと思うのだが。
主人の作る菓子は大抵美味しいが、私が頼んだ訳ではないので、今回は最後の片付けまでが主人の仕事である。 2つ作って、見栄えが良い方を職場に持って行ったら、いつも通り好評だったらしい。 まあ、只で貰った物を不味いと言う人も、そうそういないだろうが。 「美味しいから、また作ってって言われちゃったよ♪」 と上機嫌で帰って来た彼は、夕食後にまた作り始めた。 すっかり乗せられちゃって……と呆れる私を尻目に、 「『お店開かないんですか』って言われちゃった。『それは退職しろという事か?』って返しといたけどー」 と彼が言うので、私はすっぱりと言い放った。 「お店なんて、私は嫌よ。お店を開いたら、いつかは潰れるじゃない。趣味は趣味で続けるからいいのよ。それに貴方がお店なんて始めたら、私も手伝わざるを得なくなるでしょ」 「シオンは客商売には向かないもんなあ。僕だって勿論、お店なんてやるつもりないけどさ」 その言葉に、私は安心した。 「嗚呼良かった。私、人間相手の仕事って苦手なんだもの。お店の看板娘にはなれそうにないわ」 「看板娘というより、名物意地悪ばあさんになりそうだな……」 何よ、結婚する前には「シオンさんは可愛いおばあさんになるよ、僕が保障する」って言ってくれたくせにー!! でも、意地悪ばあさんという予言が成就しそうな予感……私の理想は、ミス・マープルなんだけどなあ。
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