ダーリンの実家方面へ行く電車が来るまでに時間があったので、駅でたこ焼きを食べた。 ここのたこ焼きは本当に美味しい。 一口食べたその時、私はある事を思い出した。 「!」 たこ焼きを口に入れたまま固まった私を見て、ダーリンが一言。 「『チャングムの誓い』の録画予約、忘れたんだろ」 「ど、どうして判ったの!? 私、一言も口を利いていないのに!」(たこ焼きで口が埋まっていたから) 「何でだろ?? でもすぐに判ったよ」 ダーリンの実家にはBSが無いので、向こうに行ってしまうと観られない。 総集編は最終回まであと3話を残すところとなっていたので、録画予約して行かなきゃと思っていたのだ。前日までは。 勿論、当日になると出掛ける支度でバタバタして、そんな事はすっかり忘れていた訳だが。 仕方が無いので、録画は自分の実家に電話して頼んだ。
そしてダーリンの実家で1泊して、遅い朝食の後、皆で炬燵を囲んでいた時の事。 TVでは、「運命の選択!人生勝ち組の法則」という番組をやっていた。 勝ち組・負け組という言い方は嫌いだとダーリンは言う。 勿論その言い分は解るし、人生の勝ち負けはお金では量れない。 因みに私が考える「人生の勝敗」は、死ぬ時に自分の人生が幸せだったと感じられるかどうかである。 そして幸せの価値基準は個人に委ねられ、それは裕福度には必ずしも比例しない。 しかしこの番組では、完全に「お金」を中心とする価値観での、勝ち負けについて検証していた。 つまり老後にどれだけうまくやれるかという話であり、公的年金や公的扶助をどれだけがめつく使う事が出来るかに終始するという、現在税金や年金を納めている世代からすると、非常に不快極まる番組であった。 中でも最悪だったのは、退職してから生活物資の安い海外に移住する老夫婦達。 尤も彼等は日本でもそれなりの仕事に就いていた、決して低収入ではない人々であるので、低所得者達が羨ましく思っても、それを真似るのは容易ではないと思われる。 しかし日本で稼いで日本の年金を受け取っておいて、それを外国に落とすとは何事か。 「結局こういう人達は、退職して年金生活に入っても、それまでの生活レベルを落とす事が出来ないんだろうなあ。退職金だってあるんだし、月に22万円でも、夫婦2人なら贅沢さえしなきゃ充分暮らせるでしょ」 と半ば呆れるダーリン親子。 そうよねえ、と私が相槌を打つと、TVでは金利の話しに入っていた。 外国では、年利4〜5%なんだとか。 早速ダーリンが暗算していた。 「年4%としても、1年預ければ100万円で4万円、1000万円で40万円……一寸厳しいな。1億あれば400万だから充分か」 「ねえ! それなら」 と閃いた私が言い掛けたところで、ダーリンがすぐさま遮った。 「ハイハイ解ったから。宝籤で3億当てようってんでしょ」 「どっ、どうして解ったの!? 私最後まで言ってないのに。また超能力!?」 私が驚くと、ダーリンは溜め息を吐いた。 「イヤ、今のは皆判ったから」 ダーリンの両親もこちらを見て苦笑いしている……判ったのか? もしかして、超能力者の家系かー!?
年賀状の準備が全く出来ていないというのに、主人の実家に行く事になった。 本当は日帰りで勘弁して欲しいところだが、私が折れたため、今回は1泊である。
主人の実家は、山の中にある。 初めてここを訪れた時、私は栗鼠を見た。 建物も凄い。 こんな所によく住んでるよなーと思うような家である。 結婚した当初、「シオンさんは昼まで寝ててもいいから、一緒に住もう」と主人の両親は言ったが、主人が完全に防波堤になり、2人の新婚生活をスタートさせるに相応しいアパートを借りてくれたのだった。 本当に主人には感謝している……だって、同居が嫌とか言う以前の問題なのだ。 こんな所に住んだら私、耐えられなくてすぐに逃げ出していたか、気が狂っていたかのどっちかだな。 今回訪問して、その思いを新たにした。 夏ならまだいいが、冬は死にそうに寒い。 隙間風が入り込むというよりも全体的に冷え冷えとして、ストーブを焚いても焚いても寒く、灯油の無駄遣いを促進するような建物なのだ。 「劇的ビフォーアフター」に出て来るお家を見て、こんな家に住んでいる人もいるんだーと思っていたが、そう言えば身近にいたのだっけ。 あの番組に出ても遜色無いほどの酷い建物である。
到着後暫くして、鼻がむずむずする。 ……やられた。 そして、くしゃみ、洟、鼻詰まりの雨嵐。 自分の実家のみならず、主人の実家でもアレルギー性鼻炎が出たのだ。 夜になって、いつ洗ったか不明なシーツとこれまたいつ干したのか不明な布団の間に挟まると、症状は更に酷くなった。 これを理由に、もう宿泊は勘弁して欲しい。 主人の両親は優しいし、とてもいい人達なのだが、如何せん環境がなあ……。
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