財産は、不動産・株・現金に分けて持つのが良いと言われているらしい。 父は、昔から株をやっている。 一応研究もしているらしく、ほんの小遣い程度には儲かっているようだが、母の話すところによると、 「お父さんは駄目なのよね〜。この銘柄は今が売り時なんじゃないのって私が言っても、頑として『いや、もっと上がるから一寸待った方がいい』って言うのよ。そしてそうしているうちに、どんどん値下がりしちゃうんだから。下手に欲かくからタイミングを逃すのよねえ、いっつも」 なのだそうで……うう、父のその気持ち、よく解るわあ。
みずほ証券の発注ミス騒動で短時間に大きく儲けた人がいるという話を聞いて、私も心が動いた。 「ねえねえ、お父さんはジェイコム株買わなかったの?」 「その時間は仕事中だったから無理だな」 うむ、そうか……。 うちの両親は機械にまるっきり弱いので、昔ながらの、証券会社に電話して頼むという方法で株をやっているのだ。 パソコン使うっていう手もあるわよ、と言いかけたが、そんなものを勧めて万一スッカラカンになられたら困るので止めた。 やった事無いから憶測だが、ああいうのはきっと、ゲームみたいなものだ。 父は私と同じで(と言うか逆か)、ゲームやギャンブルが大好きなのだ。 ついつい嵌まってしまう性格で、いつの頃からかパッタリ止めたが、昔はパチンコもやっていた。 パチンコというものはパチンコ屋が儲かる仕組みになっているという事に気付いて、馬鹿らしくなったのかも知れない。 では、株は誰が儲けるのだろう。 皆が儲かる訳ではないのではないだろうか。 誰かが得をすれば誰かが損をし、誰かの損で誰かが儲ける。 人生の勝ち負けは本人の幸福度で決まるが、株の勝ち負けは数字にはっきりと表れる。 私が株をやったら、勝つのか負けるのか。 必ず勝てるという訳ではないし、負けが込んだら地獄を見る。 昔からそう考えているため、私はずっと株を避けている。 こう見えても小心者なので、儲かるかもという期待感より、もし大損こいたら……という不安の方が大きいのだ。 (ギャンブルは大好きだが、そんな自分をよく知っているので、嵌まって困る以前に、競馬もパチンコもやらない。馬券の買い方すら知らない。その方が私にとっていいのだ) 「やっぱり私、株って嫌いだわ」 と私が言うと、母が 「この間、こんな物が来たのよ」 と言って、紙切れを見せてくれた。 それには、父が買っている株の配当が記されていた。 そうか、株は売買の差額で儲けるだけではなく、配当があるのだった。 「これで半期だから、1年だと12、3万てとこかしらね。勿論これだけじゃなくて、他にも何社か持ってるのよ」 母の言葉に、また私の心が動いた……。
実家を後にして、再びバスと電車に揺られ、私は帰って来た。 ダーリンにその話をすると、 「いいよ。シオンが欲しかったら買ったら」 といつもの返事……予想はしていたが。 「一寸アナタ、それが仮にも経済を学んだ人の言う台詞? 私より詳しいんだしさ、もっとその知識と霊感を生かしてみようとか思わないの?」 「だって僕、お金に興味ないもん。お金はあるに越した事はないけれど、無くても平気だし」 と、これまたいつもの返事……本当にこの人は欲が無いったら。 「世の中貴方みたいな人ばかりだったら、絶対に経済は発展しないよね」 私が半分呆れて半分感心して言うと、彼はエヘヘと笑った。 「やっぱり私、株はいいわ。損するのが嫌だから、初めから3,000円と決まっている年末ジャンボに賭けようっと」 と私が拳を握り締めると、彼が後ろから声をかけた。 「でもシオン、それで今までどれだけ投資して、どれだけ返って来たよ?」 そっ、それは突っ込まない約束でしょ!!
実家はいいねえ。 母の料理は美味しいし、炬燵はあるし。 これで鼻炎の症状さえ出なければ。
マスクをして、家捜しをしてみた。 納戸は寒いが、週末帰って来た妹を従えて、片っ端から抽斗を開ける。 そして、目ぼしい着物を何枚か引っ張り出した。 それらを暖かい居間に持ち込んだ。 広げてみて吃驚、殆どがシミだらけ……何なのこれは。 母に言わせると、 「あの納戸、湿気が酷いのよ。だから黴が生えちゃってねえ」 なんだそうで……それだけの問題ではないような気がするのだが。 何たって、妹と抽斗を開けた時に気付いたのだが、一緒に入っていた除湿剤が悉く、「こちらの面を下にして下さい」が上を向いていたのである……つまり、正しく使われていなかったと言う事だ。 しかも着物の様子を見ると、何年も放置されていたに違いない。 年に1度は風を通さなきゃいけないんじゃ?着物って。 そう思いながらも、取り敢えず合わせてみる。 着物は親子3代着られると言うが、我が家の場合は当て嵌まらないようだ。 だって、どれもこれも短いのだ。 身丈は勿論の事、特に裄(袖幅)が足りない。 直しに出すと高くつくが、このままでは着物も可哀相なので、私が着られそうな柄は持ち帰る事にする。 来る時、土産物のワインは鞄の3分の1程度を占めていたが、帰りは着物で2分の1程が塞がったのだった……。
ところで、今回見付けた新たなお気に入りはこちら。
知人の栃木土産で、牛蒡の梅漬けなんだとか。 大層気に入ったのでネットで取り寄せだー!と意気込んだのだが、残念な事に袋はとうに、中身を瓶に移し替えた時点で捨ててしまったという。 一応その知人に聞いてみてくれるとは言うが……頼むよ母上。 正直、余り期待していない。 以前にも、主人が気に入ったやはり貰い物の漬け物を、どこの店か父がなかなか聞いてくれないうちに、それをくれた伯父はこの世を去ってしまったという事があるからだ。 どなたかこの日記をご覧になって、牛蒡の梅漬けに心当たりがあったら、是非是非教えて頂きたい。 梅漬け大好きだー! 食べ過ぎると夜中に喉が渇いて仕方ないのだが。
|