帰宅したダーリンに、早速報告した。 「ねえねえ、今日トラックが来て、上の住民が引っ越して行ったわよ。それで昨夜、夜中にガタゴトしてたのね」 「えー、本当に引っ越しだった? こんな時期に?」 「引っ越し業者のトラックだったもの、間違いないわ。でも時期的におかしいと思うでしょ? トラックも2台来てたし、とうとう離婚かしら」 「僕達もここに越して来る時、道が細くて4トントラックじゃ通れないから、2トンを2台使ったでしょ……シオンは覚えていないのか」 と、わざわざ溜め息まで吐いて呆れるダーリン。 「そ、そうだっけ……でもトラックの大きさが何トンかなんて、見たって判らないもん! で、離婚だと思う?」 「そんなの知るかっ。シオンは何が何でも離婚って事にしたいんだな……」 「違うもん。離婚なんてしない方がいいに決まってんじゃん。ただ、私は真実が知りたいだけよ。貴方は知りたくないの?」 「別に」 詰まんない男ねえ……この人は。 些か拍子抜けしたが、私は尚も言い募った。 「だって私達がここに引っ越して来た当日の夜に、いきなり『助けて〜!』でしょ? その後だって何度も夫婦喧嘩を聞いているし、跫だってドスドス煩くて、何度寝入り端を起こされたか。あれだけ派手な喧嘩をされたら、その後が気になるわよ。それに安眠を妨害されたんだもん、私達には知る権利があると思わない?」 という私の弁舌にも、彼はあっさり答えた。 「思わない」 がっくりする私に、彼は言った。 「シオンはHGだからなあ」 「何よ、HGて……ハードゲイじゃないでしょうね。それとも独逸語読みで『ハーゲー』……ハゲとか?」 「ハード・ゴシッパー・シオン。HGシオンと命名してあげよう!」 ご、ゴシッパーって……。 「それとも、ハイパー・ゴシッピストの方がいいかなあ?」 ゴシップ、ゴシッパー、ゴシッピスト……最上級みたいだな。 てか、どっちも嫌ですから!
何だか眠くなかったので、ごそごそと夜中に起き出した。 居間で家計簿を付けたりレシートの整理をしたりしていたが、天井からゴトゴト音がする。 上の住民もまだ起きているのか……と思っていたら、ドスン!と結構大きな音が。 ガトゴトと家具を移動しているような音に、ドタドタと人が歩き回る音。 こんな真夜中に模様替えか?と思って時計を見ると、2時30分……おいおい。 寝室のダーリンは、明日も仕事なんですけど。 物音で起きないといいけどなあ。
と思っていたら、朝、ダーリンは酷く眠そうに起きて来た。 明らかに寝不足の顔である。 「上が煩くて眠れなかった……昨夜は流石に天井蹴飛ばそうかと思ったよ」 「今日も仕事なのに、可哀相に……いっそ蹴っ飛ばしちゃえば良かったのに!(足が届くなら) 或いは私に言ってくれたら良かったのに。そしたら夜中でも文句言いに行くわよ!」 「だから我慢してたんだよ……シオンはどうしてそう波風立てたがるんだ」 いや、言うべき事はちゃんと言わないと!
辛そうに仕事に出かけるダーリンを見送り、洗濯物を干して掃除をしていると、駐車場に大きなトラックが停まったのが見えた。 少し離れた所にも同じトラックが1台あって、横にはTVCMで御馴染みの、引越し会社のロゴが書いてある。 銀行なら5月と10月に異動もあるらしいが、9月に異動の職種ってある? こんな半端な時期に、しかもトラック2台で引っ越すとは、もしやとうとう……離婚!? 自分達こそ半端な時期にここに引っ越して来たのも棚に上げ、荷物が次々にトラックの荷台へ消えて行くのを、私はカーテンの陰からわくわくしながら見守っていたのだった。
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