日々是迷々之記
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夕食後、焼酎を飲みながらDVDを見ていたらふと何かをつまみたくなった。食料庫を覗くとインスタントラーメンがある。が、晩ごはんはザーサイ入り焼きそばだったのでここでインスタントラーメンを食べる度胸はない。
ここでふとあることを思い出し、私は袋の外からそのラーメンにパンチして麺を砕いた。ほどよくくだけたところで丁寧に袋を開く。そしてスープの粉類を取り出し、袋の中の砕いた麺に振りかける。そして開いた袋を手で閉じて、シェイクする。すると、粉がけベビースターラーメンのようなものができあがる。これをつまみにDVDを見た。
部屋を真っ暗にしてちょっとB級の映画を見ながらバラバラのインスタントラーメンを食べる。何だかカナダにいたころを思いだす。もう6-7年前になるが、現地の安物のインスタントラーメンを、子供達がこうやってよく食べていた。私は日本人らしくちゃんと鍋に湯を沸かしてラーメンを作り、箸で食べていたが、そのラーメンはめちゃくちゃ大味で普通にまずかった。
だいたい、シュリンプ(えび)、チキン、ビーフくらいなら理解できるが、テリヤキというフレーバーのがあったのはどうかと思った。テリヤキラーメンか?味はその名の通り、甘ったるい人工的醤油味。ぼへっ。
そこでそのまずいラーメンを子供達がやっているように、砕いて、スープの粉をかけて食べてみた。ジャンク以外の何者でもない味だった。でも、明らかに普通に作って食べるよりはうまい。5袋で1ドル程度で売っていることもあったので、普通にプリングルスなどを買うより安く、私はたまにこの「砕きラーメンつまみ風」をやっていた。が、いかにもカナディアンなジャンクさが妙に恥ずかしく、日本人の友人には秘密だった。
その他、溶けないチーズを皿に乗せて3分くらいレンジで加熱するとできるチーズせんべいのようなものなど、まともな日本人ならちょっとアレだなと思うモノをたまに食べていた。慣れとは恐ろしいモノで、特にジャンクなモノはすぐに慣れてしまいそれが普通になってくる。
映画館でペプシと7upのハーフアンドハーフを頼んだり、ポップコーンにバターを気の済むまでかけてもらったり、マクドでポテトにケチャップをもらうことができない日本はなんだかけちくさいような気すらしてしまう。(マクドでケチャップは頼めばもらえるという噂もあるが。)
まぁ、こんな変なものを食べないのが日本人が健康で長生きする秘訣なんやろなぁとラーメンの袋の底にこびりついているスープの粉を見てしみじみと思った。
昼、珍しく携帯電話が鳴った。わざわざ携帯電話にかけてくるのは派遣会社か、外出中のだんなさんくらいしかいないので、ある程度「重要度・高」な用件であることが多い。今日の用件も重要度が高かった。
要約するとだんなさんの住んでいるアパートの上の部屋が火事になり、アパートは電気も電話も不通なのでホテル住まいになる。あと、火事で飛散した溶けたプラスチックやらなんやらでクルマはケタケタになっており、多分全塗装とガラス類の交換になるだろうとのことだった。
詳しくはまた連絡する、とのことで電話は切れた。
その後、私は何度となく携帯電話にメールを送ってみたが、返事はなかった。まぁ、もともと携帯でメールを打つ習慣のない人間なので返事を期待して、ではないのだが。火事って誰が責任取るんだろう、とか、家を空けてると火事場どろぼうが来たりしないんだろうか、とか、この辺りから微妙な不安が立ちこめる。
250kmも離れた場所から何かを心配してもしょうがないし、もし、わたしがバイクなりクルマなりで今すぐかけつけることができても何の役にも立たないことはわかってるんだけれども、不安は急転直下の雨雲のように心の中にぞわぞわと広がってきた。
夜になるころにはその雨雲はしっかりと心の中を覆い尽くしており、私は電話をかけることにした。これがまた悪いことにつながらない。つながらないものはつながらないんだから、何度かけても意味はないよと思いつつ、何度もかける。結局本人は寝ていたというオチなんだが、私は頭がおかしくなりそうだった。
「火事が終わった後に普通に電話してるのに、その後に本人に何かあるわけない。」というのは頭では分かっているのに、連絡が取れないことがこの上なく不安なのだ。不安なので何度もリダイヤルしつづけるという理不尽な行動を止めることができない。
結婚するというのはこういうことなのかもしれない。自分がダメージを受けることよりも相方がダメージを受けることの方がこわい。私が交通事故で入院していたときでさえも、自分の体の痛みより何より、もし治らなかったらこの後の人生を全部面倒見てもらうことになるんだなぁと思うと死んだ方がいいんじゃないのと何度も思った。幸運なこととよい先生方に恵まれたことで普通の生活を送れるようになったわけだが。
家族を持つということのヨロコビや安心感という好ましい側面と、とても大きな責任感。時として大きすぎる責任感に息切れしそうになる。そして、私はよく夫婦はどっちが先に死んでしまうほうがいいのかを考えるようになった。残された者が不幸なのか、先立つ者が不幸なのか?こぼれた水が蒸発するように、誰にも迷惑をかけず、誰の中にも何も残さず消えるのが一番いいと思うのだが、そうは行かないのももちろん分かっている。
「離れたところから心配だなんだって言っても役に立たないことはもちろん分かってるんやけどな。」私はそう言って電話を切った。この言葉はだんなさんに向けられているというよりは自分に言い聞かせているのだろう。
うーん、今日はオチがないなぁ。(日記にオチは要らないのかもしれないけれど、関西人体質だもんでちょっと気になるんである。)
先日、友人と待ち合わせて飲みに行った。会う目的は「黒ホッピーを渡すこと。」であり、そのために飲みに行くのだから、目的も手段も又是酒也、である。ちなみにここ関西ではホッピーはあまりポピュラーではなく、数件しか取り扱っていない。なのでホッピー好きの友人のために「かなりレア物」な黒ホッピーを手渡しすることにしたのだ。
待ち合わせの時間はまだ日が高かった。太陽の出ているうちから地下に潜って飲むってのもいいねぇなどといいながら、私のお気に入りの店へ。ここは生ビール280円、ハイボール180円。つまみも酒飲みの嗜好を良く理解した品揃えである。チャンジャ350円、チヂミ350円などをアテに飲み始める。
その日の大阪は最高気温29度。自転車で行ったのでビールがうまい。友人も酒好き、まんが好きなので話がはずむし酒もすすむ。
そこでとあるアンケートの話題になった。私が朝の情報番組で見たのだが、酒造メーカーが行ったアンケートで「交際するなら飲める異性がいいか、飲めない異性のほうがいいか?」というようなものである。番組では「女性は飲める男性を望むけれども、男性はそれほどこだわってない。」といったまとめで紹介されていた。
これを女の立場から深読みしてみると、意外なことがわかる。「さほどこだわらない人が44%」ということは56%の男性は「女性はかくあるべし」と思っているということにはならないだろうか?どうでもいいんだけど、こういう人が女性がチューハイ、ウーロン茶以外の物を注文すると引くタイプの男性のような気がする。あくまで予想だが。だからと言って「バーボンロックダブル」を頼む20代の女性はやっぱりアレなのかと思ったり思わなかったり。
私が「結婚してよかったと思うことは飲みに行く約束をしなくても即飲めることやな。家やったらダブルだろうがなんだろうが勝手に注げるしな。」というと自営業の友人は、「私も仕事場に保冷庫入れてるねん。仕事場はエアコンないから昼間から飲んでも全然酔わへんねん。」という今考えると噛み合ってるんだかないんだか、というようなレスをくれた。
こんな感じで4時間ほど飲み、私は自転車で、友人は地下鉄で帰路についた。私は家に帰るとHOKUOのメロンパン3個セットを抱えていた。大きな声を張り上げて、若いお嬢さんがパンを売っているのを見て、思わず買ってしまったのだ。これで明日の昼の弁当はメロンパンに決まりやなと思いつつ、私はシャワーを浴びて寝てしまった。友人は「帰ったら仕事せないかんねん。」と言っていたが果たして仕事はできたのかなとも思いつつ…。
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