日々是迷々之記
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| 2004年02月20日(金) |
仕事をやめるという泥沼・前編 |
今日、金曜日付で仕事を辞めた。いきさつは不明。が、なりゆきはそれなりに醜かった。登場人物は、ヘンクツ社長(派遣先)とへたれ担当者(派遣会社)、そして私。
今年の1月25日 ●担当者から電話がかかってきた。2月の契約書を持っていきますのでと、社長に電話したら、「もう1月一杯で来ていらん。」と言われたとのこと。で、「どうしますか?」と尋ねられた。私は何も聞いていなかったし、大体契約書には辞めさせる30日前に通知すると書かれているので、「それはちょっと問題ですね。2月一杯で交渉してください。」と言った。
●1時間くらいで折り返しかかってきた。「13日か20日でどうでしょうか?金曜日で一区切りってことなんで。」私はどうしてすっぱり一ヶ月にできないのか、20日でも契約上問題があるのではと語気を強めて言った。すると、担当者は「正直、泣きつかれたんですわ。資金繰りも大変やし、頼むから切らせてくれって。」わたしはバカじゃねーのと思いつつ、「では、出勤日は13日や20日でいいとして、それ以降2月一杯の分の賃金はきちんと頂きますので。」と言った。すると、はぁ、それはまかせてください…。と消え入るように言われた。
それ以降、社長は私に話しかけることはなかった。用事があるときもぶっきらぼうにどなりつける。私は消化するだけの日々と割り切って昨日までの毎日を過ごしていた。が、今日仕事最終日に修羅場は訪れた。
お昼過ぎに担当者がやってきた。最後の日に挨拶にくるのは当たり前なので、何も思わなかったが、私に同席しろという。社長は怒りモードだ。社長が向かいに座り、私と担当者が横並びで座った。社長が口火を切る。「最後くらいは気持ちよくやりたいと思ったのに、お前らは何が不満なんだ。」と来た。続けて、「一月一杯で来なくていいって言ってるのに、13日までお願いします、とか、20日までお願いします、とか、こんなモノ交渉するようなもんやないんや。こっちが金払ってるんやから、いらん言うたらいらんのや。」
担当者はいまにもしょんべん漏らしそうな子犬みたいになりながらこう言った。「契約書上は、解雇する30日前までに解雇を通告することになっておりますので。」が、社長が上手だ。「ほう、1ヶ月契約で30日って理屈に合わへんのとちゃうか。まぁええわ。それやったら、最初にそう言うたらええねん。ワシが1月一杯で来ていらんて言うたときに、そういう契約があるから2月一杯でって言えば丸くおさまったとちゃうか?」
わたしは驚いた。1月25日の時点で「2月いっぱいまででお願いします。」と交渉していなかったのだ。まぁ、この担当者のへたれ具合からすると、「一ヶ月のばしてくれと言う。」→「怒鳴られる。」→「こわい」→「じゃあ、金曜日で適当に区切ろう」という脳内ロジックだったのだろう。
そこで話の矛先はぐわっと私の方に向いた。社長が、「それやったらなおぞうさん。あんたは2月一杯ここで働いたらスジが通るやろ。あと一週間、おったらどうや。」と来た。が、もう私にやるきなど、もうこれっぽっちもないので、適当に新しい仕事の面接が週明けにもあるので、今日で終わりにして欲しいと言った。するとまた怒り出した。「在職中に次の仕事探すって、あんたもアレやなぁ。ホンマしっかりしてるわ。」その口元からは「皮肉、皮肉、これは皮肉なんだよ。アンタ」というセリフが今にも飛び出しそうだった。
私はその気持ちを感じ取り、もう魂が抜けてしまった。昔からそうなのだけど、相手に蔑まれたりバカにされていることが露骨に分かってしまうと、ココロここにあらずになってしまうのだ。うつむき、腕時計を見る。ああ、もう2時すぎたから、あと3時間でこの仕事から解放されるなぁと思い、社長と、担当者の言った、言わないの水掛け論をどっか遠くの声みたいに聞こえていた。
それが、社長の怒りにブーストをかけたようだった。「あんたも何か言ったらどうや。最後くらい気持ちよくってワシは思うてるんや。」まだ言うかとわたしは思い、口を開いた。「私が契約しているのは派遣会社とです。そして、社長が契約しているのも、派遣会社とです。社長と私の間に雇用関係はないので、こういった話し合いに私が参加することに意味はないと思いますので、意見はありません。」
長くなるので続きはまた明日。
違和感その1 ●駐輪場に行くと、私の自転車のサドルがなかった。サドルだけである。一応夜間は施錠されているし、監視カメラもある駐輪場なので、管理人に言いに行った。管理人と一緒に周りを見渡すと、隣の列の原付のシートの上にサドルがあった。それを見て、管理人は、「見つかってよかったですね。」と言い、何もなかったように管理室へ帰っていった。
違和感その2 ●うちのマンションは年に数回防災点検と称して各部屋の煙探知機を検査している。その時期になると、あなたの部屋は○月○日の午前中です。在宅ください。と書かれた通知がポストに入っている。これは平日だけしか行われないので、共働きの我が家は困ってしまう。あるとき、どうしても休めないので断りに行った。すると管理人は隣近所に鍵を預けろという。それは出来ないと断った。じゃあ私に預けてくださいと言われた。それも出来ないと断った。そんなこと言うのはお宅だけですよ。何でなんですか?と詰問するように問いつめられとにかく断った。こんどは「全戸点検が基本ですから、指定日にやらないと自費になりますよ?」と来た。ではいくらですかと尋ねると、高いですよ。としか言わない。かまいませんよ、全戸点検が基本ならば従うべきなので、負担しますと言っても高いですよを繰り返すばかりだった。
違和感その3 ●昼下がりの回転寿司。テーブル席は幼児を連れた母親の社交場状態である。歩ける子供はその辺をうろうろ。母親は赤ちゃんに食事をさせながら、ママ友達と談笑中。母親は赤ちゃんの口もとに、小さく切ったお寿司を運ぶ。赤ちゃんは一度は口の中にお寿司をほおばったが、ぱかっと口を開け、こぼした。すると母親は、「あー、○○ちゃん。まずかったねぇ。あー、ばっちいばっちい。はい、ナイナイしよう。」と言い、赤ちゃんの口の周りにこぼれたお寿司を手で集め、テーブルのへりになすりつけた。そして、テーブルの上のダスターで手をぬぐい、ふたたびママ友達との談笑に戻った。
違和感その4 ●会社の電話が鳴った。取るやいなや、「いまから乗れる出雲発福岡行き、調べて。」社長である。私は左手で受話器を持ち、右手のマウスでパソコンの画面をエクセルからブラウザに切り替えた。検索のページを開こうとしたときにぶちっと電話が切れた。電波状態が悪かったのかなと思い、とりあえず調べて、折り返しかかってくるのを待っていたら5分後に怒号とともに電話がかかってきた。「まだわからんのか!」どうやら指示だけ受けたら電話を切って、調べたらこっちからかけ直すのがこの会社でのやり方だったらしい。
そんなこんなで違和感にとりつかれた日々を送っている。もし私が、強い意志と押しの効くガタイとゆらぎない自信を持った人物なら、ちゃんと自分の意見を言ったり、相手の考え方を変えさせることもできただろう。
私は自分でサドルを戻し、自転車は部屋の中にしまった。点検の件は無視しつづけているので、管理人とは目を合わさない。他人のモラル感にはギモンを持たないように心がけ、社長はただの「井の中の蛙、大海を知らず。」な、ワンマンじじいだと思うようにしている。
でも、根本的に何かが変わったわけではない。ただ一つだけ願いが叶えられるのなら、世界が違和感がなく、殺伐とせずに暮らせる世界になればいいと思う。
ぼちぼち32だってのにこんなに他力本願てのは情けない気がするが…。
二日間寝込んで目覚めてみると、世界が変わっていたなんてことはもちろんなく、頭痛がマシになった程度で、まだ多少咳き込んだ状態が残っていた。このまま会社に行くのがスジなんだろうが、もう一度病院に行って、咳止めをもらうことにした。
結局お金は最近使ってなかったネットバンクの残高を照会してみたら、1145円と微妙に半端な金額があったのでそれを下ろして使うことにした。何だか貧乏くさいが、給料日の朝イチに銀行に行っても100%入金されてないんだからしょうがない。
バイクに乗る気力がないので自転車で病院に行ってから会社に向かう。休み明けの午前中の早い時間、空気はのほほん、ぽかぽかとして気持ちいい。何だか生き返るような気がする。表通りはせかせかして疲れるので裏道を走った。飛び出してくるクルマや、ママチャリに気を付けなければいけないけれど、こっちの方がゆっくりこぐのも自由で楽な気がする。
ふと、十字路の小さな町の整備工場を覗くとぼさぼさの犬が大きな座椅子の上でまどろんでいた。その向こうには水色のホンダ・ステップバン(ステップワゴンではないです。)がひっそりと置いてあった。ナンバーも付いていたので多分現役だろう。ホンダのサイトで見ると、私と同じ年の生まれなので日本の自動車としては長生きなほうだろう。なぜかうれしい。
渡船場に行くとちょうど船が来たところだった。自転車と共に乗船し、ふと時刻表を見ると、朝の9時以降17時までは一時間に1往復しかしていないのだ。ちょうど良いタイミングで助かった。これを逃してしまうと、根性入れて橋を渡らなくてはならないのだ。
一時間に一往復なのもうなずけるような少ないお客さん達と渡船に揺られて対岸に着いた。ここから会社までは相変わらず砂埃との戦いだったが、人の良さそうな野良犬が歩道で眠っていたので和んでしまった。暖かいと犬も眠たくなるのだろう。
かくして平和な通勤だったが、会社はいつもどおりアレやコレな理由で熱が上がるのを押さえるのに必死だった。なんだかなぁ。
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