半日がかりで新宿、渋谷、銀座と映画館をつぎつぎ立見して歩く。チカチカ煌めくこの暗闇だけが青い火をしばらく忘れるための応急診療所であった。 焦燥はけっして消えてくれないけれど、長い距離をてくてく歩いて酒場まで抱いていくことができる。夜は着古した、手放せないシャツのようにしみじみしていて、ありがたい。 『珠玉』開高健
光射す庭に白いものが散らつく。それを認めた途端、心は休符を打たれたように静かになった。 家に着く。窓からは京都タワーと欠けた月が見える。バイクの走行音が右から左に過ぎ、冷蔵庫は時折疲れたような溜め息を吐く。 朝までの時間を数える。がらんとした部屋になんの感慨も浮かばなかったことを思い出す。新宿や渋谷にぶらりと行けないのが少し不便だなと思う。 旅に出る。どんなに辺鄙なところへ行こうと、自分を離れてはどこへも行けないことを再認識した。 その道はいつか来た道。
【美術】 「木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン 東洋と西洋のまなざし」東京都写真美術館 「日本人の新進作家展vol.8『出発-6人のアーティストによる旅』」同上 「医学と芸術展:生命と愛の未来を探る」森美術館 イナチュー美術館 「オラファー・エリアソン-あなたが出会うとき」金沢21世紀美術館 「コレクション展『shift-揺らぎの場』同上 【建築】 西田幾太郎記念哲学館〈安藤忠雄〉 【読了】 「TVピープル」村上春樹 -----------------------------------------------------------
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