夕暮塔...夕暮

 

 

あまやどる - 2004年10月09日(土)

君去れば秋が来るねと問いかけて 荒ぶ風にじむ警戒の赤


雨宿る薄いガラスの外側を君が去り明日は秋が降るから





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終業間際、今夜だと思っていた予定が来週末だということがわかって呆然とする。このところ仕事が目まぐるしかったせいか、すっかり勘違いしていた。準備があった分、ショックだ。同僚はこの天気の中銀座で飲み会、「先輩呼び出しだからなあ、行かないわけには…」としぶしぶ銀行でお金をおろしている。すでに雨は結構な激しさ。ガラス張りのエントランスの内側、「信号が青になるまで、ちょっと雨宿ろう」と言われて、あまやどるという造語が面白いと思ったので「雨宿る、雨宿れば、雨宿れ…」と活用してみる。「何活用?いいね懐かしい」と彼女が笑う。高校生の時はこういうのがとても好きだった、当時は古文が連なっているのを見た瞬間、あらゆる単語が頭の中で品詞分類された上に「○行○活用○○形」とかたっぱしから頭に浮かんだけれど、このごろはもうそういうことはなくなった。それが私にとって日常ではなくなってしまったからだろうと思う。あれはちょっと楽しかったのに、残念だし、寂しい。そんなことを考えつつ、マッサージに寄って帰宅。



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- 2004年10月07日(木)

午前中で一応お仕事は終了、一旦帰宅してお昼寝した後、メイクを直して再び家を出る。接待みたいなものの後、タクシーチケットを頂いて、ホテルの正面で先方の若い社員さん達に案内されるままに車に乗せられる。清潔な車内と感じのいい運転手さん、フロントガラスの向こうにはオレンジ色の東京タワーが、疲れたようでも誇るようでもなく間近にそびえている。


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木犀の夜 - 2004年10月03日(日)

霧雨はまこと静かに闇の根を潤わせたり木犀の夜


霧雨はまこと静かに闇の根を潤わせたり木犀の星




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闇と夜を同時に使うのはちょっと煩い、誰か改作してくれないかなと思って画面からちょっと肩をひいた後、他力本願はよくないと反省して一文字だけ自分で直す。夜を、星に。やる気があるのかないのかよくわからないくらい安易な気もするけど、雨の中見上げた木犀の大木が、私が足をつけたこの星を覆っているように思えるくらい頼もしくていい香りだったので。けれどちょっと考えてみれば木犀の花はもともと小さな星の形をしている、じゃあやっぱり煩いことには変わりない。まあ、もう仕方ない…。

雨で冷えた地上に、薫る無数の星の花。晴れても降っても、本当に好い。





…………





ひんやりと木犀に薫り立つ夜はどこまでも遠く霧雨のふる







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cassia×nealiae - 2004年09月25日(土)

南風の中で咲いてるきみの名を知らぬまま去る夏の終わりに




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町中あちこちで咲いていた藤のような形の花の名を知りたくて、ホノルル空港内の書店で植物図鑑をめくる。ほどなく見つけ、図鑑を買って帰ろうかと思うけれど、かなり高価な上にそれほど詳しい情報が載っていない。帰国してから調べようかなと決めて、名称を記憶に焼き付ける。レインボーシャワーとも呼ばれているらしい、なるほど確かに木によって様々な色があったし、グラデーションになっているものもあった。濃い桃色からたまご色になっているのが本当にきれいだった、それから人の頭上から降りそそぐようなあの咲き方、強い海風に揺らされて長けた花弁が散るのはシャワーみたいだったと思う。藤も桜も、散る時はそんな風。


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ライムに歯を - 2004年09月22日(水)

ライムに歯をきりりと立てる夢を見た朝 鮮やかな波の涼しさ




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目覚めて呆然とするくらい驚いた、ライムの味覚だけが、あまりにリアルだったので。
ベランダから見える海は、まだ夢の中にいるかのように碧い。

ここへ誘ってくれて、ありがとう。滲むように嬉しい。まだ眠っている同行者の寝顔に向けて、胸の内でささやく。


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旅立つ - 2004年09月19日(日)

例によって何の準備もできていないけれど、明日(というか、もう今日)ハワイへ出発。スーツケースはまだ空っぽだ。暑いのと食事が重たそうなのは多少心配だけれど、海と夕暮れが楽しみ。


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揺らぐ灯の - 2004年09月16日(木)

風が来て肩を撫でられほほえんで「ありがとう」揺らぐ美しい灯よ




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揺らぐ灯の美しく脆い優しさを忘れずにいたい君に渡すまで


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遠くへ - 2004年09月14日(火)

敬愛している方の上司から、来年度の話。「行って嫌なら一年で帰ってきてくれていいよ、実際いなくなられると僕も困るっていうのもあるし…君か貝塚さんか、二人ともだめなら安藤さんに。急ぐ話じゃないから、向こうの事調べて、考えてみて」
帰宅して、早速ネットで調べる。先方にはまず問題ない、土地柄もいかにものどかそうで、今住んでいるマンションの管理費と殆ど変わらない額で、駐車場付きの1Kを借りる事ができるらしい。自分で住むとしたら1LDKか2DKくらい、それだってものすごく安い。知り合いすらいない場所で生活する事自体に抵抗はないけれど、一年で帰ってきていいと言われても、たぶんそうはならないだろうと考えると躊躇せざるをえない。あっという間に順応した上に周囲とのつながりを理由に簡単には引き返せなくなる、自分の姿が目に浮かぶ。色んな事に関して、今までずっとそうだった。



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艱難は - 2004年09月13日(月)

耐えきれぬほどの艱難はなかったと今ならば思う君の笑顔で



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許せるか、赦しきれるか、許し合えるか。それがすべてだ、この世の中に起こること、人と人との間で波打つあらゆる事象の。艱難の彼岸なら今はもう霞むほどに遠い、泳ぎきったねと笑うこの日を予期していなくても、あてもなく水をかくことだけならできた。


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スピーチ - 2004年09月11日(土)

自殺、浪人、失恋、離婚。同僚の披露宴に一応主賓として招かれた上司(いろいろとだめな人)が、新婦となる部下へのスピーチのために用意した草稿に紛れ込んでいた、とんでもない言葉の数々。「り、りこん!?」びくりと私が震えると、隣で一緒にスピーチの練習を聞いていた先輩は「…それは、世の中では普通禁句と言われていて」と心臓が冷えるような声色と目線で彼を見上げる。「あ、そお? じゃあ削るね」とさらっと上司が言うのに、彼女はまだ何か言いたそうな顔つきをしている。別に新婦を罵ろうとかいうつもりではなく、あくまで本人としては褒める趣旨で話しているというのが恐ろしい。


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