夕暮塔...夕暮

 

 

心震わす - 2004年02月04日(水)

きっと今も心震わすものになら何もかも差し出してかまわない



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旋律を - 2004年02月02日(月)

旋律をほどいてまばゆく澄みきった音に変えきみに渡すきさらぎ



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行きあぐね - 2004年02月01日(日)

行きあぐね 去りがたくそれで気が付けば あなたを言い訳に使う愚かさ




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父の心臓は私が思っていたよりずっと良くないらしい、ベッドが空き次第大学病院に入院して適合する薬を探すことになったのだと母から聞いて、電話を切った後、ショックで頭に霞がかかってきた。我儘な王様は、ドクターに何度忠告されても煙草とゴルフとお酒三昧の日々をちっとも改めなかった。こんなことになったのも当然の結果なのだと思う。母が不幸になるところはどうやっても想像できないから(絶大な強運に守られているとしか思えない生活ぶりだ)、最後はきちんと収束するのだろうけれど、それにしても父は反省すべきだ。病室のベッドの前でぼろぼろ泣いて見せたら気付くのだろうか、妻や娘たちが見えない所で泣いたり心配したりしていると思わないのかと思うと、ますます悲しくなる。祖父といい弟といい、どうしてうちの男の人は皆こうなのだろう、おおらかさは無邪気で安らぐし尊いけれど、時々無神経と紙一重になるのがにくらしくてやきもきする。彼らのことを書く時にどうしても憎という漢字を使えない、わたしも大概だと思いながら。


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さよならと - 2004年01月30日(金)

さよならと声にもならない呟きを重ねゆく長い旅の涯まで




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「やあ!おはよー! しばらくぶりだね!」 お隣に建築中だった分譲マンション、その建設会社に雇われているらしい老警備員さんが、いつものように元気よく声をかけてくれる。私も久々なので嬉しくて、にこにこして自転車を引いて行く。数年前から、朝夕挨拶をしたりちょっとお話したりしていたのだけど、もう建物はすっかり完成した様子だ。こちらにはいつまでいらっしゃるんですかと尋ねると、「2月1日!」次は板橋、今度は15階建て。寂しくなるねー、とおじさんは続ける。そうですね、本当に。もうじきいなくなってしまうのかなと私も寂しく思っていた、それでもやはり急なので、ちょっとショックだ。深夜に帰宅した時に突然後ろから 「やー!コンバンワー!」 と声をかけられて一瞬震え上がった事もあったけれど、目下の人に優しくしている様子を見たりするにつけ、いい人だなあと思って和んでいたのに。


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淡き火を - 2004年01月28日(水)

穏やかで淡き灯を抱いて進んでく いつか来るそのいつかの日まで




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「静かな子なのよ、勿論必要な時にはちゃんと泣くんだけど…」 ちいちゃんと呼ばれるその子は、彼女が言うとおりちっともむずからない温和な赤ちゃんで、会ったばかりの私に抱かれてすぐにふわふわと笑いながら小さな手を揺らす。あまりに落ち着いた様子なので、「これは真剣にすごい。一体どんな大人になるのか」と皆が感嘆する。お母さん似なら、きっと聡明で優しい人になるのよね、と心の内で話しかけながら背中を撫ぜる。赤ちゃんはあたたかくていいにおい。私はあなたのママの横顔がとても好きだった、白い肌と額から唇までのラインが見た事もないくらいなめらかで凛として、彌勒っぽい美しさとでも言ったらいいのか、知性的で優しげな雰囲気のある人だ。彼女が博士号を授与された時の晴々と誇らしげな姿をよく憶えている、旧い講堂に差し込んだ懐かしい春の光、窓の外では大木の枝垂れ桜がこぼれんばかりに咲いて、小柄な背に満ちた誇りと喜びを映しているみたいだった。謙遜も傲慢も介さないのびやかさが、本当にきれいで、素敵だと思った。

理不尽に残虐な目に遭う子ども達がいる中で、優しく穏やかな(おまけに賢い)母親の下に生まれたこの子は、どれほどの幸運かと思う。童話に出てくる魔法使いのように、私も腕の中の赤ちゃんに何がしかのギフトを授けられたらいいのにと思うけれど、そんな特殊技能はないから、どうか暖かな人生をと重ねて祈るばかり。




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三日月の - 2004年01月27日(火)

この先を百年誰かに預けても変わらない多分すべてこのまま



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三日月が滑るなめらかな夕暮れの雲をかきわけ彼岸へ泳ぐ




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指のあいだに - 2004年01月26日(月)

ゆるく組んだ指のあいだに揺れている青い火に瞼閉ざして祈る



組んだ指のあいだに青く揺れている火よどうか暫しそのままであれ




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これを失ったらどこへ行けばいいのだろう、怖いというよりは自分の想像の果てを見るような気持ちで、途方もない昏闇を見はるかす頼りなさに目眩がしそうになる。この不確かだけれど静かで熱い何かに一欠片の価値も見出せなくなったら、多分あらゆるものが色を変えて崩れる。


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夢の裏 - 2004年01月25日(日)

夢の橋の裏に傷した憶えさえなきままで何故にこうも歯痒い



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夜寝 - 2004年01月24日(土)

自分ひとり大事にできない想いなら手放してほしい 今の君には




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手放すべきだとかそうして欲しいと思うのは勝手だけれど、そんなことを伝えてみても、結局は酷く僭越で無責任だ。そんな風には言えない、だけど多分私の言葉からは遠まわしに滲み出ているだろうと思う。一方的に傷つくばかりで得られるものがないなら、簡単に風を送ったりできない。世の中にはずるいのにどこか魅力的な人というのがいて、それを承知の上で付き合うという選択肢もないわけではないとわかっているけれど、そういうアウトローなことをするには、彼女は優しくて素直すぎる。


冷たい曇り空の向こうに、ゆるく霞みながら茜色が流れる。切らしていた調味料や青い野菜を買い揃えながら帰宅して、ゆっくりコーヒーを淹れる。ソファにかけてお腹のところにクッションを抱え、その上に雑誌を載せて読む。美容院で半強制的に取らされるスタイルだけれど、腕や首が疲れにくいし、目があまり良くない私には、膝に直接本を置くよりも読みやすくて楽だという事に気が付いた。
夕食を作った後くつろいだところで、すっかり気が緩んで夜寝をしてしまった。明日は着付の先生に来て頂くことになっているから、部屋を片付けて準備しておかないといけないのに、もう深夜。あー、ええと、まずい。



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詭弁を - 2004年01月22日(木)

だからその詭弁を愛する余暇はないことを知らせる笑みは浅めに





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