異国の雪夜 - 2004年01月14日(水) きらきらとプラチナの砂のこぼれ落つ異国の雪の夜の安らかさ 故郷より一万キロのこの国の夜に落ちる雪もただ安らかに *************** *** * * 友人の暮らすNY郊外の街、最寄駅に着いたら恐ろしく細かい雪が降り始めていた。乏しい灯りの中で、プラチナの粉が波になって降りてきたように煌めく。雪国で育って色んな雪を見たけれど、こんなに細かくて光を帯びた雪は初めてだ。やっぱり土地が違うと雪質も違うかなと思いながら1人でささやかに感動する、多分今ここは氷点下十数度、気温の要因も勿論あるのだと思うけれど。友人の彼が「雪はいいね、寒いのは好きなんだ、Yurikoはそうじゃないみたいだけどね」と夜を見上げ、友人は「日本みたいな牡丹雪が降ることもあるよ、でも、今日は、ちょっと、…うう、さむい……」と肩を縮める。 - 風邪 - 2004年01月12日(月) 友人が泊まりに来て豆乳鍋を楽しんだところまでは良かったのだけど、翌朝起きてみたら、なんとなく熱っぽい。しまった、出発までに治しておかないと、乾燥した機内では誰かにうつしてしまうかもしれない。風邪の時用のスープを作って、飲んでから眠ろう。 - 真摯さに - 2004年01月11日(日) 凍りつく冬の星座の真摯さに貫かれ指の先を震わす ………… - 空路 - 2004年01月06日(火) 先月、NY行きを決めた途端にテラー・アラートがオレンジ色になってしまった。レベルで言えば5段階中上から2つ目に当たるのだから危険なのは承知しているけれど、親しい人が向こうにいる時に行かなかったら一生アメリカを訪れないような気がして、細々と準備をしている。一度計画が直前でぽしゃった事があるので、今度こそはという気持ちもあるのだと思う。 テロが少し心配で、と同僚に言ったら「…なんか、あなたは、飛行機が落ちても大丈夫そうな気がするよ? 1人だけ助かったりする人に見える」と真面目な顔つきで返された。「それ、よく言われる」と私が驚くと、他の同僚も「そんな感じする」と笑っている。 日本でのテロが危ぶまれ始めた頃、空路で旅行に行こうとしたら同行者のお母様に大反対されたことがあった。最後にしぶしぶ了承して下さった時、お母様は「飛行機が落ちそうになったら、夕暮ちゃんにしっかり掴まるのよ! 絶対離しちゃだめよ! そうしたらきっと助かるんだから」と真剣に言い聞かせたらしい。友人はそれを聞いて「そうか、なるほど」と納得したのだそうで、何か起こった時には私にしがみつく気満々の構えでいたので、私は不思議に思いつつちょっと恐ろしくなった。 私は確かにふわふわ生きているかもしれないけれど、窮地にあっても空は飛べないと思うし、殺しても死なないと言われているようで何となくひっかかる。 - 遠い冬を - 2004年01月04日(日) 未来など歌ってはきみの襟足を撫ぜていた遠い冬を知らずに ………… - 歩いて - 2004年01月03日(土) 羽なんてなくても歩いてゆけることを忘れないうちは大丈夫です ………… - ひととせを - 2004年01月02日(金) 翔ぶのでも跳ねるのでもなくゆるゆるとたゆたって進むまた一年(ひととせ)を ………… そしてまたひととせの旅を漕ぎ出して進みゆく朝は霞のなかに - やがては - 2003年12月31日(水) 何もかも やがては瞼の裏にしか映らないように流れ去ってく *********** ** * * どのボタンを押しても全く動作しなくなってしまった携帯の暗い画面を見ているうちに、もうここでメモリごと綺麗さっぱり手放しても良いかと思い始めていたのだけれど、返事を待っているだろう人の顔を思い出したら僅かに胸がざわついた。こんな小さな玩具みたいなものを過信したらいけないとわかっているのに、こういう事になるまではいつも先送りにしている。電子機器を介した絆なんて脆い、おぼろげでしかなくとも、本当に信じていいものは自分と相手の間にしか結ばれていない。 ……… 紺色の闇に満ちた広い冬野に、鐘の音が静かに響く。音のする方から微かに風がなびいて頬をかすめる、途切れ途切れの鐘の音と、水が流れる音だけが世界を震わせている。灯りも乏しい深夜というのに山のなだらかな背がくっきり浮かび上がって、その真上に登った大きな金色の月の船、白い煙に似た群雲の合間からは星の海。ねえ、とても、美しい除夜です。そちらはどうですか。彼だけではなく、今年関わり合ってきた人達にせめて何がしかの言葉をと思うけれど、うまく纏まらないままに手元をすり抜ける。 どうか、歓び多き一年となりますように。 - 冬眠 - 2003年12月29日(月) きりりと冷え切った廊下で、硝子越しに鯉の棲家を見下ろす。池と呼ぶには簡素で深過ぎる、堀と呼んだ方が正確かもしれないその人工的な器にたっぷり満ちた冷暗色の中で、鯉たちは殆どが水底で眠っている。かろうじて水面近くに上がって来ている子も、緩慢に鰭を動かすくらいで、ゆるゆるとしか進まない。 雪国の魚は粛々と冬眠する、それが当たり前だと思っていた時期の方が長い筈なのに、この頃は不思議に感じられつつある。 温泉に行ったり、祖母がお地蔵様の着物や帽子を縫うのを眺めたり、祖父にヒマラヤやモンゴルの写真を見せて貰ったり、暖かい床の上で母や弟とお昼寝したりしているうちに一日が終わる。私にも魚のように煩雑さのない静かな冬が訪れたらと思うことはある、けれどこういう風に過ごしていれば、充分に満ち足りて穏やかな日々。 - 星の闇 - 2003年12月28日(日) 臘月の風に押されて天象を見上げれば彼方まで星の闇 …………… -
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