夕暮塔...夕暮

 

 

花の色を - 2003年11月14日(金)

花の色をひそやかに映すあの雲を背にすればどこか暖かな暮れ




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水を打つ - 2003年11月13日(木)

水を打つ羽の音つむぐ安息に夜がほどけるまでを過ごしぬ



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星に願うより - 2003年11月11日(火)

このままでいさせてと星に願うより単純な道を君は知ってた




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静かに - 2003年11月10日(月)

だから、あんな人の言葉に傷ついたりしなくていい。



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先月から私の補佐についてくれるようになった若い女の子を、上司が無駄にきつく叱り付けたらしい。終業後、強かにショックを受けている様子なので何かあったのかと訊いてみたら、おおもとは本当に些細なミスだった。彼女は語らないけれど、どんな風に責めたかなんてだいたい想像できる。いつもの事とは云え愚かしい大人だ、自らの感情の浮き沈みには呆れるほど敏感なくせに、自分の言動が誰かを害しうることを想像もしない。
…自分は仕事ができない、覚えが悪い、ごめんなさいもっと頑張りますから、と彼女は謝る。かわいそうに、客観的に見て充分働いてくれているのだからそんな風に自己評価を下げることない、あんな感性の貧しい人のことばに傷ついたりしなくていいのに。

仕事はゆっくり覚えてくれたらいいのよ、あんな気分屋のせいでへこむ必要なんてない。私はもう充分に助かってる。そう伝えると、ようやくほっとした様子になった。

人はどうして自分ひとりすら上手く守れないんだろうと思う、心無い言葉や態度に惑わされては傷を負って、酷く自分を責めながら土曜の午後をとぼとぼと歩いたりする。自分が赦した人以外からのネガティブな波を受けいれないように自らを馴らすことならできる、だけどそれだってどこまで耐えられるかあやしいものだ。



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悲しみに - 2003年11月08日(土)

人の世の悲しみに沈む夜ありて この先を過ごす地を見失う




人の世の悲しみに沈む夜ありて いずくにかあしたより先を見む





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確かめられてゆく - 2003年11月06日(木)

夕瑠璃と確かめられてゆく夢を手放せぬままでいるさびしさよ





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凛々と満ちつつある月の下を歩けば、散り重なったイチョウの葉が暗いアスファルトに光を灯す。
17のわたしが望んだことが、もうじき実現しようとしている。
あれから何年経っただろうか。あの頃は多分本当に叶うなんて思ってなかった、現実味をもって考えるにはあまりに遠い、はるかな望みだと思っていたのに、道をふり返ってみれば驚くほどあっけない。


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- 2003年11月04日(火)

訳の不自然さを指摘された彼女のイラつき具合があまりにあからさまなので、その場の空気がどんどん不穏になっていく。既に下訳を一度読み合わせて修正した筈だったから、ここでこんなに手間取るとは思っていなかった。本人も多分そう思っていて、それでますます腹が立つのかもしれない。
「これ残りどうする!?」
「明日、会議前の空き時間に続きをやることに」
「そこで終わるかな…」
「いや、終わらせようよ」
そうしたら、木曜は久々のオフになる。ここ二週間程休息日がないままに生活しているのでちょっとしんどい、同期も月−土で働いて日曜は関西の学会に行っていたのだから、いくら体力自慢でもいい加減疲れているんじゃないだろうか。ああ、できれば三日くらいのんびりお休みしたい、世の中では山茶花が咲いてはほろほろとこぼれているのに、こんな殺伐としたのはいやだなと思う。この間の悪夢、皮膚に刺さる直前の蛇の白い牙が頭をかすめて、ちかりと光っては生々しく警鐘を鳴らす。


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辛辣な - 2003年11月03日(月)

辛辣なものをもってしかあなたとは約束できないような気がした



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あなたとは優しさだけでは結べない 何か辛辣なものがなければ





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蜜灯り - 2003年10月31日(金)

ほの白く浮かぶまま花は蜜灯し 音もなく人を呼びよせている


夜の道 白き花咲き蜜灯りすれば音もなく人は呼ばれて




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新しいお着物が届く、この秋に作ってもらった桜色の付け下げ、細かい地模様の入った艶のある生地をそっと撫でると、つるつるした手触りが気持ちいい。同梱の金糸銀糸であでやかに刺繍された上等な袋帯はこの度祖母から贈られたらしい、受け取った旨とお礼を伝えようと実家に電話すると母が電話口に出て、「あれね、出来上がってみたらなかなかいいわねえ、あれ以外も色んな帯が合いそうね」と嬉しそうに言う。ああいう色合いは本当は母の好みとは違うので、今回は私の好みに副うために渋々折れてくれたのだけれど、縫い上がったのを見たら結構気に入ったらしい。祖母は旅行中でお礼が言えなかったから、また明日電話しよう。この生地の感じだときっと着る時にはするするすべって面倒だろうと思う、前もって一度くらい練習しておいたほうが良さそうだ。



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激しさを - 2003年10月30日(木)

激しさを含むものでは繋がらぬわたしたちずっとこのままがいい



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