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2004年01月20日(火) 変わった居酒屋

職場で唐突に飲みに誘われた。
普段なら平日の飲み会は何かと理由を付けてお断りするのだが、行き先を聞いて二つ返事で付いていく。
駅の近くに古くからある居酒屋なのだが、以前から安くて旨いとか、スチュワーデスがよく来るとか、
何やら料理の量が半端ではないとか、そんな話を聞いていたので興味津々。

行ってみたらなるほど、注文したものはどれもこれも皿鉢ほどの大皿に盛られている。
餃子だの厚焼玉子だの野菜炒めだの、普通の料理なのに。
おにぎりは、丼一杯のご飯を使って握ったものが二つ並んで一人前。
デジカメを持ってこなかったことを悔やみつつ、満腹中枢が刺激される前にと黙々食べる。
焼酎を頼めばいいちこが一升瓶で出てくる。
アイスペールと2リットルのペットボトルと一緒に、飲みたいだけ飲めという形だ。

自分たちが座った二階の部屋は六畳ほどの和室で、片隅には日本酒のサーバーがあり、
二つのテーブルは仕切りもなくおっちゃん連中と背中合わせ。
他人の家に上がり込んで晩御飯を食べている風だった。

最後に10分程度真面目な話をして終了。
会計の前にお姉さんがいいちこの減り具合を見て
「焼酎全然飲んでないって言って下さい」と言う。
それでいいのか、丼勘定。

一階ではレジの下からおばちゃんがダンボール箱が引き出してガサガサ音を立てている。
先に会計を終わらせたグループがバナナを一房、カツラみたいに頭に乗せて帰って行った。
それを呆然と見ていたら、おばちゃんに声をかけられミカンとバナナを一つずつ手渡された。

カバンが一杯だったので仕方なく手に持ち、歩いて帰る。
傍から見れば妙な図だ。


2004年01月18日(日) ご利益

目が覚めると9時過ぎ。イガワさんは既に起きていた。
確か自分が寝入ったのは朝の5時頃。その後風呂に入っていたはず。
寝てないのか、この人は。

「ああ、やっと起きた。KGくん歯軋りするんだねぇ」

もしやそれで眠れなかったのだろうか。
いやいや、寝屁の可能性も捨てきれないが、指摘されなかったことが若干不安。


ホテルで和洋折衷バイキングな朝食を済ませるとアベさんからイガワさんにメールが入った。
昨日落としたはずの携帯が、この大阪で昨日の今日というのにまさか見つかったのだろうか。
しかもそのメールは通信の不具合か何かで読めなかったようだ。
部屋に迎えに来てくれたアベさん、手に携帯を持っている。
勿論ロケット団のストラップ付き。

「どこにあったと思う? 昼に行ったお好み焼き屋さんやて〜」

昨日何度か知らない番号からの着信があったが取らなかった。
留守電も入らなかったので用事がないものと思っていたのだが、
どうやら拾った店員さんが、取り敢えずリダイヤルに入っていた番号にかけていたようだ。


アベさんの案内でのんびりと南港付近を散策。
イガワさんは念願の串カツも食べ、自分はそこそこに買い物もして満足。
帰りの時間が迫ってきたので小走りに駅へ移動。
イガワさんも同じ時間帯だったので、荷物を入れていたコインロッカー前で慌しくお別れ。
自分も走ってバスターミナルに向かった。


走っても走っても知らない景色、というか何となく見覚えがある景色。
以前も迷った所のような気がする。
自慢にもならないが、梅田と新宿は何度来ても迷わなかったことがない。
特に今回は地元民のアベさんがいるからと思って地図すら持っていない。
途中で二人に道を尋ね、聞いた通りに走っているのにやはり違う場所。
その二人は嘘を言っていた訳じゃない。確かに柱には「阪急三番街」と書いてあるのだから。
「阪急三番街は」なんて訊かずに、ちゃんと「バスターミナルは」と訊けば良かった、それだけのこと。


出発時間になっても辿り着けないので諦め、項垂れながら歩く。
アベさんに「乗り遅れた」とメールを送ってからまた別の人に道を尋ね、
目的地に着いたのは発車10分後だった。

窓口でおっちゃんと「もうバス出ましたよね」「出たねー」なんて会話。
こんなはずじゃなかった。手にしている乗車券は最早ただの紙切れなのだ。
次の便が取れなければ今から急いで空港に行くか、神戸からバスに乗るかどちらかを選ばなければ。
考えたくないが、最悪このまま一泊ということも。
明日の仕事はどうする、何て言い訳をすればいい。

「んー、今回だけ特別に次の便に変更してあげましょ。夜行だけど」

「発券手数料だけ貰うね。100円」

思いがけないおっちゃんの計らいに一瞬耳を疑った。
ありがとうおっちゃん、これで明日も仕事に行ける。


さて、次の便まで6時間もある。
取り敢えず身軽になりたくてコインロッカーに荷物を放り込み、財布を見ると100円玉がない。
混み合っている窓口で両替を頼もうかと思ったが、荷物を入れたままその場を離れると盗られるかも知れない。
だからといって荷物を出すと、相当人がいるのですぐ塞がる。
どうしようかとまごまごしていると見ず知らずのおっちゃんが声をかけてきた。
「何や、500円か? それとも1,000円か?」
有り難いことに両替してくれた。ありがとう、おっちゃん。

待合室を出てメール着信に気付き、返信しようとしていたらアベさんに肩を叩かれた。
ついさっきターミナルでバスの後姿を見送ったところで、電車に乗る前にメールに気付き、引き返してくれたそうだ。
そのバスに自分は乗っていなかった訳だが。
「まさか迷うとは思わなかった」とアベさん。
自分も迷うつもりはなかったと苦笑い。
イガワさんからもメールが入る。
「一緒に乗り遅れたら良かったかも〜」と。


「大阪を出るまでは自分の責任」と言うアベさんに最後まで付き合ってもらい、見送りまでしてもらった。
ありがとう、アベさん。


この二日が本当に楽しく、そして短く感じた。
思い返すと悪いことは一つとしてなかった気がする。
アベさんの携帯が見つかったのも、バスの乗車券を変更してもらえたのも、
おっちゃんに両替してもらえたのも、アベさんが引き返して来てくれたのも、
全てあのビリケンさんのお陰だったのだろうか。
幸運の神様と書いていたし、これはご利益かも知れない。


そういえば乗車券変更の際に「隣は多分女性」と言われた。
自分の席は一番後ろの独立していない座席。
満席状態だったので、窓口のおっちゃんなりに気を遣ってくれたのだろう。
最後までご利益が続くなんて素晴らしい。


バスに乗り込んだら、隣には体格の良い男性が。
そこまでは面倒見きれないか、ビリケンさんも。


2004年01月17日(土) 大阪、雨

神奈川のイガワさんに誘われて大阪へ。
そのイガワさんは朝まで飲んでいたらしく、新幹線を乗り過ごしたようだ。
現地のアベさんと先に合流して待っていると、予定より少し遅れて「大阪上陸」とメールが入る。
いや、「上陸」って。


イガワさんが食べたがっていた串カツを「おやつであって食事にはなりえない」とアベさんが却下。
お好み焼きを食した後、雨の降る中、通天閣へ。


展望台! ビリケンさん! 日立ITソリューション! パンフレットにペーパークラフト!
自分は今まで観光らしき観光をしたことがなかったし、イガワさんは初の大阪。
二人ともこれだけで大喜び。

ビリケンさんの足の裏を撫でながら願い事をしていると、アベさんが唐突に「携帯落とした」なんて言い始めた。
どこで落としたのかも分からないのでとりあえず目の前のビリケンさんに「見つかりますように」と祈る。
地下鉄構内の拾得物係に連絡を入れ、ついでに近くの警察署に寄って遺失物届も出しておく。
「ポケットモンスターのストラップで、ロケット団って書いてて、小さい人形が二つ付いてます」
図は書かされなかったようだ。残念。


日本橋では外国語キーボード探し。
通販で見つけていたものの、どうせなら買って帰ろうという魂胆だった。
何軒か回ったがPS/2接続しか見つからないのでUSB接続の物はないかと訊いてみた。
「PS/2からUSBに変換するパーツも扱ってないですし、今時のPCでは多分使えないんじゃないかと」
それじゃ、誰が使うんだこれ。


前々から行きたかったちょいめしあさチャンには、猛反対に合い入れず。
二人とも食の細い人なので「絶対無理」だと言う。
次こそは。


ダラダラしていたらちょうど良い時間帯になったので、道頓堀の居酒屋で飲み始める。
奥の席では合コンらしき若者たちが出身地を言い合っていた。
「東京〜!」「千葉〜!」「さいたま〜!」
思わず振り返るイガワさん。
店を出た後も、づぼらやだカニ道楽だ太郎さんだグリコだと喜んでいるイガワさんの後ろからまた「さいたま〜!」。
再び脊髄反射で振り返るイガワさんを見ているこっちが面白い。


アベさんを見送ってから、イガワさんとホテルの部屋で朝まで飲み続け、喋り倒す。
普段は全然飲めないのに今日は倍以上の量でも平気。
お互い全く気を遣わないし、何より笑いっぱなしだからだろうか。

そういえばこのホテル、壁が薄いという苦情が多いらしい。
隣の宿泊客は眠れなかっただろうな。


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