解放区

2014年02月28日(金) どうなる台湾旅行。いかれたパソコン。そして読んだ本とか。

娘から「台湾旅行の初日と、高校のオリエンテーションが重なってしまった」との連絡が来た。ええっ、そんなことありですか。こっちは前から仕事も調整し親のショートステイも取り、ようやっとチケットも確保したというのに。

「学校を優先したい」ということで、それはまあ当然の思いですが…。何とかならんかな。娘が不参加だったら、弟と二人旅という当初の趣旨から外れまくったとても不毛な旅になってしまうのだが。



今日仕事から帰って、パソコンを立ち上げようとしたらなんとログインできなかった。パスワードを変えてもいないし、これは困った。というわけで、いろいろ調べてセーフモードから何とかログインに成功したが、なぜか一部のデータが消えていた。涙。

まあ、大事なデータは全てクラウドに入れているので実害はあまりないのだが、なんとも消化し切らない気持ちだけが残った。消えたデータを復旧する気にもならず、てめえはこんな駄文を書いている。もうウィンドウズ嫌いじゃ。




そんなわけで、さっさとやけ酒でも飲んだろかと思ったが、思い直して昨日届いた医学書を読み始めたら、すっかりはまってしまった。久しぶりに勉強する楽しさを感じたが、同時にやっぱり自分は臨床が好きなんだということを実感した。問題なのは環境のみだね。


それとは矛盾するようだが、昨日読んだ「研修医山田(じゃまだ)君・トリロジー」も衝撃だった。

研修医や今の医師の置かれている立場がいかに悲惨かということを描いているのだが、これが猛毒。あまりに黒い内容に、初めに連載していた医学雑誌で連載が中止されたくらい。しかし現場を知っている人は、正直涙なしでは読めないレベル。ほんまに現場は悲惨なのです。






目取真俊の「風音」読了。一部わかりにくい点があると思うが、この人の構成力と表現力は面白いと思う。いろいろ思うところはあるが、なんだか今日は娘のこととパソコンのことで疲れてしまったのでこの辺で。ビットコインとかウクライナ情勢とかてめえの花粉症が再燃してきたこととかいろいろあるけどね。



2014年02月26日(水) ある研修病院の一頁 其の弐

て「で、結果は? 陰性やったやろ」

A「はい、陰性でした…。」

て「よし、もうインフルエンザのことは忘れよう。2回も検査しているので、まず否定できるわな。じゃあもう一度、考えられる疾患と、今後のプランについて議論しようか」

A「考えられる疾患としては、咽頭炎ですね。細菌性とウィルス性があって、後者の場合は伝染性単核球症の可能性もあります」

て「そうやね。細菌性やとまずは溶連菌やね。昔はジフテリアもあったらしいけど、今やほとんど見ないし頭の片隅にとどめておくくらいでいいと思う。溶連菌やったら、繰り返している人も多いし、過去に溶連菌感染がなかったかどうか確認した方がいいね。あまりに感染を繰り返すようなら扁桃摘出術の適応にもなるしね。ちなみに手術適応はどうなっている?」

A「ええと、年に1回は罹る場合でしたっけ?」

て「それやとかなり対象者が多くなるね。Bさんは?」

B「年に3-4回だったと思います」

て「そうやね。それくらいになるともう日常生活に支障を来すレベルやし、手術した方がメリットがあるよね。さて話を戻して、ウィルス性の場合は伝染性単核球症もあるけど、多いのはアデノウィルスやね。他に忘れたらあかんのがヘルペス。ヘルペスは他のウィルスと違って治療薬があるので、忘れたらあかん。他は?」

A「ええと、真菌もありますかね」

て「免疫不全状態とか、免疫抑制剤を飲んでいる場合などは考えた方がいいやろね。この方の場合はどうやろ」

A「若いし既往歴もなく、免疫抑制剤も飲んでいないとのことであまり考えなくていいと思います。」

て「せやね。まあ可能性としてはだいぶ下の方やな。他は?」

C「癌の転移とかはありますか?」

て「ないことはないやろうけど、それこそ可能性としてはだいぶ下の方やな。そもそも転移やったら原発の症状があるやろうし、25才で癌はかなり考えにくいんちゃうかな。転移考えるんやったら、むしろ原発性の咽頭癌などをまず考えた方がいいと思うけど、これまた年齢的に考えにくいね。他は?」

B「稀な病気でもいいですか? 菊池病とかも考えられるかと思います」

て「おっ、いい意見が出たね。菊池病は知られていないだけで、意外と稀じゃない。若い人にも多いので、頭の片隅に入れておいた方がいいね。よく知ってたね。今は学校で習うの?」

B「いえ、以前にリンパ節の腫れた患者さんの鑑別に上がっていたことがあったので、その時に勉強しました。」

て「ぜひ覚えておいてね。知らんとそもそも診断できないからね。まあとりあえずはこんなものかな。で、プランは?」

A「溶連菌かどうかですね。」

て「その通り。溶連菌だったら、溶連菌の治療を行う。溶連菌検査が陰性だったら、他の原因を探しに行かないといけないね。で、溶連菌の検査はどうだった?」

A「それが検査しなかったんです…」

て「あきさみよー! 2回目の来院時も検査しなかったのね。で、どうしたの」

A「採血をとりました。」

て「なるほど、まあいいけど、今度からは溶連菌の検査してね。喉こするだけや市、結果は10分くらいで出るし。で、結果は?」

A「炎症反応は余り上がっておらず、白血球も軽度上昇くらいで左方移動は認めませんでした。異型リンパ球は認めませんでした。肝機能障害がありました。その他大きな異常を認めませんでした。」

て「どう解釈しようか」

A「ちょっと判断に困りました。典型的には細菌性ではないし、伝染性単核球症も否定できないし…」

B「炎症反応はタイムラグがあるときがありますよね。だから細菌性ではないとは考えないです。でも、肝機能障害があるのなら、まずは伝染性単核球症から考えたいですね」

C「私は普通にウィルス性で良いと思います。伝染性単核球症だと典型的には異型リンパ球出ますよね。肝障害はまた別で調べて行った方が良いのではないかと思います」

て「ふむ。いろんな意見が出たね。さて、この採血が2回目の来院時ということを考えると、タイムラグは考えなくていいと思うよ。症状が出てすぐだったらまだしもね。しつこいけど、溶連菌の検査をしていればはっきりするんだけど、していないのだからしょうがないよね。しかしこの結果からは細菌性の香りがしないね。なので、ウィルス性を考えたいね。伝染性単核球症の場合、異型リンパ球が出ることが多いけど、後から出てくることもあるので否定はできないね。ちょっと時間はかかるけど、ウィルスの抗体検査をするとはっきりするので検査は出しておいた方がいいな。で、どうしたの?」

A「咽頭痛と嚥下痛がつよく、食事もとれないと言うことで入院としました。追加でウィルス抗体も提出しました。」

て「そうだね。ウィルス性だと治療もないけど、咽頭痛が強かったら水も飲めないし入院して補液する必要があるよね。」

A「で、細菌性も否定できないと考えて、ペニシリン系の抗生剤も念のために投与を開始しました」

て「な、な、なんだってー! あきさみよー!」



2014年02月25日(火) ある研修病院の一頁

てめえ(以下て)「じゃ、はじめよか。」

A「宜しくお願いします。喉の痛みと発熱を訴えて来られた方ですが…」

て「はい、いったんストップ。そんなプレゼンテーション教えた記憶はないで。何度も言うけど、症例提示するときはまずは年齢。次に性別。そして主訴。その後に現症。ええ加減覚えようね。これは世界共通やで。どの医学雑誌見ても、そうなってるんや。理想的にはNew England Journal of Medicineのプレゼンが理想的なので参考にしてね。はいやり直し。」

A「すみません…。患者さんは25歳女性、咽頭痛と発熱を主訴に来院されました」

て「うん、それでいいんやで。…で、ここでいったん止めようか。ここまでで何考える?」

B「答えていいですか? 発熱は何度か知りませんが、発熱と咽頭痛と言えば、まずは溶連菌ですよね。なので、Centor's criteriaに基づいて発熱の有無、咽頭所見、頚部リンパ節所見、咳があるのかどうかを知りたいですね」

て「うん、いいね。よく勉強してるね。Centor's criteriaは"FACT"で覚えると忘れないからいいよ。

F Fever(38.3℃以上)
A Absence of cough(咳がない)
C Cervical lymphadenopathy(頚部リンパ節腫脹)
T Tonsillar exudate(咽頭の滲出物)

4つそろったら、検査は不要で溶連菌確定。2-3だったら溶連菌の検査。1以下だったら溶連菌はまずないので経過観察だったね。実際はどうだったの?」

A「発熱は39℃でした。咳はあったようです。頚部リンパ節の腫脹はありました。咽頭の滲出物は認めませんでした」

て「他の症状は?」

A「気道症状としては、咳は少量で痰も出ていませんでした。鼻水もなし。腹部症状はなく、下痢嘔吐も認めていません。悪寒はあり、全身の関節痛は認めませんでした。膀胱炎の症状も認めませんでした。」

て「オッケー。続けよか」

A「既往歴は特になし。入院や手術歴なしでした。内服中の薬もありません。喫煙もせず、アルコールは機会飲酒です」

て「診察の結果はどうだったやろ」

A「眼瞼結膜に貧血を認めず、眼球結膜に黄疸を認めませんでした。項部硬直はなく、咽頭は発赤しており頚部リンパ節の腫脹と圧痛を認めました。咽頭や扁桃に浸出物を認めませんでした。胸部所見ですが、心音は清、�飢撒擇哭恐擦論犠錣如↓群擦鉢顕擦惑Г瓩泙擦鵑任靴拭�心雑音は認めませんでした。肺野は清で呼吸音に左右差はなく、肺雑音は認めませんでした。腹部ですが平坦軟で圧痛はなく、腹音は正常でした。Murphy徴候は陰性でした。CVAの叩打痛は認めませんでした。その他皮疹等も認めませんでした」

て「おっいいね! 良いプレゼンテーションやで。診察結果は体の上から下へと言うんだったね。ちゃんとできてるやん、今後もその調子でね。」

て「とすると、上記のcriteriaは二つ満たすのみやな。咽頭痛と発熱やったらまずは咽頭炎として考えて行きたいところやね。とすると次は溶連菌の検査やけど、どうしたの?」

A「溶連菌の検査はしていません…」

て「あれ、なんで?」

A「ご本人がインフルエンザを心配しておられたので、インフルエンザの迅速検査をしました。」

て「…なるほど。でもそれ、医学的適応としてはどうやろ。その時点でインフルエンザを君はどれくらい疑ってたのか、という話や。インフルエンザで頚部リンパ節が腫れるのは一般的やろか?」

A「実は正直な話、溶連菌は全く考えていませんでした。まだ流行している時期やし、インフルエンザをまず考えました。頚部リンパ節の腫脹も、まああってもおかしくないかなあと。」

て「じゃあ、他の人の考えを聞いてみようか。Bさんは、溶連菌を考えていたのだよね」

B「まあ、あとだしじゃんけんですけどね。私もその場にいたらインフルエンザ調べてたかもですね」

て「まあそれはそうかも知れんけどね。他には何考える?」

B「溶連菌かどうかですが、あとはウィルス性の咽頭炎ですかね」

て「他の人は?」

C「…そうですね、私もまずは溶連菌ですが、あとは伝染性単核球症を考えたいですね。」

て「おっ、いい意見が出たね。まあウィルス性やけど、伝染性単核球症は考えないといかんよね。じゃあ、溶連菌か伝染性単核球症か、君ならどう診断するの?」

C「まずはよく話を聞きますね。そして、伝染性単核球症なら肝障害が多いので血液検査します」

て「よく話を聞くって、どういう話を聞くの? あと、肝障害は血液検査も必要やけど、そのまえにすることあるんとちゃうの?」

C「話は…聞きにくいけど性的接触ですね。初めてのキスでうつるんですよね? 血液検査の前にすることって…分かりません」

て「伝染性単核球症の原因はなんや? あと、肝障害がひどいと白い便が出るのやけど、そう言うことも聞かんといかんよな。ええか、患者さんの話をよく聞くことで9割の病気は診断できるのやで。話をよく聞かへんかったら検査費用は患者さん持ちやで。」

C「原因は…EBウィルスですよね。たまにサイトメガロウィルスと習いました」

て「そんだけか? 忘れたらいかんのがあるやろ」

C「…なんでしたっけ?」

て「HIVやんけ。ええか、伝染性単核球症疑ったら絶対にHIV調べろよ。そういう話もきけ。でも、性的な話は信頼関係がないとなかなか言ってくれないから、本人が絶対ない、って言っても、念のため調べましょうと説得して調べる。話を聞く時は、「異性と付き合い始めた時に伝染ってしまうことがあるのですが、最近お付き合いを始めた方はいますか?」って聞くとうまく聞けるかもしれんよ。」

C「なるほど…!」

て「身体診察としては肝障害と脾腫だよな。脾腫は体触ればわかるやろ。最近はろくに診察もしないですぐに検査に走るきらいがあるけど、そうなる前に患者の体は怪しいところはしっかり触る。「手当て」って言葉があるやろ? 医師が手をあてることで、患者は快癒するねんで。触りもしない医者はそもそも信頼されへんからな。かといって、変なところ触るなよ! で話戻るけどA君、脾腫はあったの?」

A「診てません…」

て「診ないとね。これは後から検証しようね。さて、話は元に戻ろうか。インフルエンザ調べてどうやった」

A「陰性でした」

て「だろうね。今までの話でインフルエンザらしい話ないもんな。正直無駄な検査やったかもな。で、どうしたの?」

A「その時は、インフルエンザは陰性なので様子見ましょうとお話しして解熱剤だけ出して帰宅させました」

て「溶連菌は調べなかったわけね。」

A「はい…。まずかったですかね」

て「まずいで。溶連菌やったらどうすんの。リウマチ熱、急性糸球体腎炎のような合併症あるで? あと、他の病気を考えなかったのはまずいんちゃうか? 自然治癒したらいいけどな。ほんで、どうなったの?」

A「翌日に、発熱も下がらない、喉の痛みも強くなるということで再度来院されました。」

て「だろうね。で? どうしたの?」

A「もう一回インフルエンザを調べました…」

て「あきさみよー!」



2014年02月24日(月) 京都の公立高校受験。

高校を卒業してから、当たり前だが高校の受験制度なんて全く興味がなかった。のだが、今回てめえの娘が受験すると言うことでちょっとどうなっているのかを調べてみたらなんとも複雑怪奇な事になっていた。正直まともに理解できるまでかなりの時間を要したぞ。

ちなみにてめえの時は総合選抜だった。つまり、学校ではなく「公立高校」を受験する。定員の一部は希望が通るが、その一部の優秀な生徒以外は、学区全体で合格を決定した後適当に定員ごとに学区内の高校に振り分けられるのだ。つまり、どの高校に通うようになるのかは、合格発表の日まで分からない。

合格発表の日には、番号の後ろに高校名が書いてあった。ほぼ合格する試験だったので、どの高校に通うことになるのかが一番の興味であった。そんなわけで、行きたい高校に合格したら大喜びし、全く興味のない高校に合格したら、合格したにもかかわらず号泣する子もいた。

このやり方だと、高校自体に不合格になる生徒の数は圧倒的に少なくなるが、高校自体を選べない。

そんなわけで、公立高校の人気は年々降下の一途を辿り、優秀な子はみな私立学校に進学した。京都市内では特にその傾向が顕著だったようだが、てめえの育った田舎ではそもそもあまり選択肢はなかった。

これではまずいと思ったのだろう、その後公立高校はどんどん制度改革をすすめたようだ。まずは京都市立高校が差別化を図り、これが見事に成功した。てめえが高校生の頃は地元の子ばかりが通う普通の高校だった堀川高校は、今やとんでもない進学校になっている。

現在の制度を調べてみたが、もう正直わけがわからない。また今年から制度が大幅に変わったようだ。

細かいことは置いといて、簡単にまとめると、大きく普通科と商業科などの専門科に分かれる。

受験機会は3回で、前期・中期・後期に分かれる。

前期では、通常(これまた学校ごとに細かく違っているのがややこしい)は、普通科は定員の30%を選択する。専門科は100%なので、専門科はほぼ一発勝負と言えそうだ。普通科は、一校を選んで学校ごとに受験する。

中期では、普通科は定員の70%を選択。ここでは第一希望と第二希望が出せるようだ。

後期は、正直定員割れの学校の再募集となっているようだ。


ごく簡単にまとめると上記のようになる。予想通りと言うか、公立高校を志望する子はほぼみな前期に出願しており、結構とんでもない倍率になっている。ここで合格するのはかなり成績が良くないと難しそうだ。実際は第二希望まで出せる中期が本当の試験になると思われる。


そんなわけで、本日は前期の合格発表。不合格でもまあ本番は中期やで! と激励するつもりだったが、予想外に無事合格したらしい。おめでとうね。本番に強いところは父ちゃんに似たのかな。そうだとすると素直に嬉しいぜ。

あまりに嬉しくて、仕事の帰りにめったに買わない泡なぞ買ってしまった。実は今年から、夜の10時までは飲酒せずに勉強したり読書したり文章を書いたりすると言う誓いを密かに立てていたのだが、今日は誓いを忘れて今から飲んでやるぜ。やっほー。



2014年02月22日(土) 大運動会の巻。

そろそろオリンピックも終わりに近付いてしまった。始まるまでは全くとは言わないまでもそれなりに興味はないのだが、実際に始まってしまうとやはり釘付けになってしまうのですね。

今回最も興味深かったのは、スケボーの回転、及び大回転。大回転で竹内さんが銀メダルをとったのはもちろん素晴らしかったが、予選から見続けて、てめえはビックワイルドさんとその嫁さんに夢中になってしまった。

もともとアメリカで生まれ育ったワイルド氏。そんな彼は、ロシアの選手である嫁さんを愛してしまい、国籍を放棄してまで彼女に殉じた。

「地元ロシアのワイルド!」という実況が、とても空しく響く。彼はロシア人になって間もないと言うのに。

大回転では、彼は圧倒的な早さで金メダルを得た。決勝戦では、1回目で大きなミスをしたが、2回目で神がかった早さで逆転し、メダルを得た。女性の部では嫁さんも銅メダル。観てて涙が出たのは歳のせいでしょうね。

そして回転。彼は準決勝1回目で再度あり得ないミスをしてとんでもない差が出た。これは奇跡でも生じないと挽回は難しいのではないか、というてめえの素人な予想を嘲笑うかのように、彼はあっさりとその差を挽回し二つ目の金メダルを得た。


観ていて強く思った。アメリカでは何物でもなかった彼。ロシアでその実力が花開いたと言うのは簡単だと思うが、彼はおそらく妻の待つゴールに、誰よりも早く着きたかったのだ。愛する妻の待つ場所へ、一刻も早く着きたかった。

アメリカ国籍を放棄して、ロシア人の「ワイルド」としてまで参加したオリンピックで、彼は国のためでもなく名誉のためでもなく、愛する妻の待つゴールへ他の誰よりも早く着きたかったのだ。そう強く感じた。




どうでも良いが、てめえはスポーツ観戦が大好き。自分は大したことは出来ないのにもかかわらず。


小学生の時に、サッカーをしていたことがある。キック力もなくフィジカルも強くなかったてめえは、なぜかゴールキーパーをさせられることが多かった。こてはある意味天職で、楽しく練習していたのだが、練習はあまりにも過酷だった。当時は練習中に水も飲ませてもらえず、ミスをするとあり得ない罰ゲームが待っていた。てめえはそう言った理不尽な練習に耐えきれず途中でやめてしまった。

その少年サッカーからJリーガーも出たし、高校サッカーで活躍する選手もたくさん出たのだが、その時の選択は全く後悔していない。我慢できた奴はそれなりだったのだろうが、あれは未だに理解できないし、したくない。

野球もちょっとかじった、というか、日本の少年であれば普通は野球を齧ったことのない少年はいないはず。

てめえはなぜか投手をさせられた。速い球を投げることはできたのだが、残念なことにメンタルがだめだった。打たれると途端にストライクが入らなくなる。てめえの野球人生は短かった。


時は流れて高校生になった。てめえの通っていたクソ学校は体育系のコースもあったため、やたらと体育系の授業が充実していた。

例えば冬の体育であるが、連日の長距離走に加えて、週一回3kmのタイムトライアルがあり、その結果は学年ごとに20位まで、タイムとクラス、所属クラブを明記され学校の入口に張り出された。

そんなてめえは長距離走が実は得意であった。クラブ活動は全くしていなかったが、体力作りのためと言うわけではないが健康と美容のために毎日走り込みをしていたのだ。

そんなわけで、毎週のタイムトライアル。てめえは3kmは9分台で走れたので、学年でいつも10位以内に入っており、ために毎回入口に名前が張り出されていた。てめえは「帰宅部」だったので、てめえのところだけ所属クラブが空白であった。ちなみにてめえより上の連中の所属部は、多くがサッカー部で、稀にラグビー部。陸上部は一人もいなかった。


2年生の時に、陸上部からリクルートがあった。素直ではないてめえは「ええ! てめえより早い人がいないのに入部してなんかいいことがあるのか?」と入部を拒否した。帰宅部のくせに陸上部よりも早いことをかっこいいと思っていた節もある、そんな恥ずかしい若い日々。

今思うと、帰宅部をするよりも、陸上部で青春を燃やしても良かったような気がするが、全て後の祭りである。しかし陸上部も陸上部で、あっさりと説得を辞めたのはてめえに全くその気がないと思われたのだろう。ていうか本当は誘いたくなかったのだろうな。


3年冬のマラソン大会。てめえの学校はアホ校でスポーツ馬鹿の集う学校だったので、校内マラソン大会は25kmで争われた。もしかすると28kmだったかもしれない。どちらにしても校内マラソンの距離ではない。ちなみに女子は21kmであった。こんなことしているから志願者が減るのだと思うのはてめえだけだろうか。

そんなマラソン大会で、プラスティック工場で働くことになるてめえはまじめに走った結果、見事入賞してメダルを頂いた。20km地点くらいで、ばてばての陸上部やサッカー部をざくざくと抜いたのが気持ち良かったが、まあどうでよいわ。

驚いたのは、ゴール地点にヤンキー(死語)の女がたくさん待っていたこと。文化祭でブルーハーツを熱唱したのが悪かったのか。笑。黄色い歓声は君たちか。「おめでとー」「大丈夫?」とゴールと共に囲まれたが、てめえは余力を残してゴールしたので「全然大丈夫! ありがとう!」などとお茶を濁した。

運動会を見ているとそう言ったことを思い出す。てめえも全力で陸上に励んだ方が良かったのだろうか、などとも思うが、全力で取り組んでもものになっていなかっただろうなと思う。


 < 過去  INDEX  未来 >


い・よんひー [MAIL]

My追加