夕方に台所で食事を作っていると、ぴんぽんとチャイムが鳴った。てめえは日用品をネットで買い物することが多いので、てっきりどこぞの運送会社の配達の人かと思い出てみると、元居候氏がにっこり笑って立っていたので驚いた。
彼は学生の時から、予告もなくてめえの住むところに現れては好きなだけ滞在し、好きなだけ京都観光をして帰っていく。今は大阪在住だが元々は京都出身であり、なぜそれだけ飽きずに地元観光をできるのかと不思議だったが、いったん外に出て帰ってきてから、その気持ちがわかるようになった。まあ、それはまた別の話。
さすがに南の島に移住した後はさすがにそこまでやってこなかったが、京都に再び帰ってきてからは、またちょくちょく現れるようになった。
彼はスイーツ好きで、てめえはアル中なので、いつも彼の手土産は甘いものと日本酒である。まあよくわからん組み合わせだが、この日もてめえの料理で日本酒を飲み(彼は全く飲めないので、一人で)、食後に甘いものをいただいた。
食事しながらいろんな話をしたが、自殺未遂した友人(お互い知り合いでもある)の話になると、彼は呆れながらこう言った。「彼はいつもいろんな人に助けられて、いろんなひとにチャンスをもらっているのに、全く自覚なくいつもそのチャンスをぶち壊しますねぇ」まさにその通りですわ。こうやっていろんな友人を失っていったこと、わかってんのかいな。まあ、申し訳ないがもうてめえは関係ないがね。あとは勝手に生きてくれ。
元居候氏とは遅くまでいろいろ語ったが、夜遅くになって「明日仕事ですし帰りますわ」と、自分の折り畳み自転車を組み立てて自転車に乗り、大阪に帰っていった。
2011年10月31日(月) |
友人その後/糖尿病性脳症 |
自殺未遂をした友人だが、内科の予約日だった日に予約通り受診してきた。こういったところは律儀なんだろう。
受診してくると、すぐに「病院を変えたい」と言ってきた。こちらももともとそのつもりで、本人にもそのように話していたのでまあそれはいいのだが、だが普通は、これほどの問題を起こした直後に紹介状を書いて転院させるのは仁義に反するのでしない。ので、この日は紹介しないつもりだったが、実際に診察室で本人と向き合って、なんだかどうでもよくなり紹介状を書くことにした。
「(今までの治療履歴の詳細および、自殺未遂事件の詳細の後に)上記患者様ですが、私の20年来の友人でもあり、今回治療関係と友人関係を別にした方がよいと考えました。紹介するには最悪のタイミングと愚考しています。大変申し訳ありませんが、御高配のほど何卒宜しくお願いします」と、馬鹿丁寧な紹介状を書いた。
さて、この友人の主病名は「糖尿病」である。てめえも一時期、糖尿病を多く扱う外来をしていたこともあったが、今はさらに専門特化した先生がおられるので、自分で糖尿病を治療する機会はほとんどなくなってしまった。この友人が唯一の例外で、それ以外の方は、診断した時点で専門外来に紹介する。
彼を専門外来に送らなかった理由は二つで、一つ目は、あまりにひどい糖尿病だったこと。初診の段階で即入院が必要な状態だった。専門外来の先生は大学からの派遣なので、入院は見ない。ので、初めの段階では、入院もしてもらいある程度コントロールが付いた段階で専門外来に紹介するつもりだった。
二つ目の理由は、彼自身が希望したからだ。まあそんな希望ははねつけてもよかったのだが、正直忙しい外来の中に彼が混じっていると、ほっと一息つけるというのもあった。
一つ目の理由については、ある程度コントロールできて来ていたので解決済み。二つ目については、ある程度コントロールできるようになった時点で彼に持ちかけていたのだが、彼は転医することを嫌がった。受診時間や湿布の処方などわがままが言えなくなるからだろう。しかし今回彼から言い出したので、これにて終了と相成ったわけだ。
「糖尿病ってのはね、代謝の病気ではなくって脳症なんだよ」と、以前指導医だった医師はてめえに言った。「つまり、血糖値が高くなるのは、頭がおかしいからだ。頭がおかしいから、インスリンが出なくなるまで暴飲暴食をするし、血糖値が高くなっても治療する気がないんだよ」と。まあそう言いたくなるような人も多いのは事実だがねぇ。
さて、これにて治療関係はおしまい。友人関係は、向こうはまだあると思っているのだろうがこっち的にはとっくに破綻しているので、これもおしまい。まあどこかで元気にやってくださいな。
2011年10月25日(火) |
MCハマーが検索エンジンを開発! |
「MCハマーが検索エンジンを開発」
久しぶりに、よくわからないニュースを見てしまった。なんだこの意味不明な組み合わせは。「MCハマー」と「検索エンジン」が全くつながらないのだが。
たまたま遊びに来ていた妹に「つまりどういうこと?」と聞かれた。どういうことか、てめえも知りたいわ。 「まあ、例えて言うなら『TMレボリューションがiPhoneに代わる新しいスマートフォンを開発した』ようなものかな」と適当なことを言った。 「なるほど、要は意味が分からんということやな」と妹は理解したようだ。
気長に続報を待つことにした。ホンマにgoogle超えたら面白いな。
2011年10月24日(月) |
自殺未遂した友人のその後 |
先週末に、自殺未遂した友人が入院している病院から「病状も安定し、そろそろ退院になりますので、貴院での外来受診の予定をお願いします」みたいな手紙が届いた。自殺企図として精神科の病院に投げるわけではなく、自宅に帰してももう大丈夫との判断でそのまま退院となるようだ。ケースバイケースだがまあそれもありだろうと思い、こちらからも「大変ご迷惑をおかけしました。御加療ありがとうございました」みたいな返書を書いて送った。その話がそのまま進めば、彼はめでたく退院し、今週にでもてめえの病院を受診する運びになっていたはずだった。
そんなわけで土日の勤務がなく週が明けて出勤したてめえに、業務メールが来ていた。 「友人の入院している病院から連絡があり、上記の友人が21日未明に無断外出され、そのまま戻っていないらしい。本人や家族にも連絡がつかず、このままだと22日に強制退院となる」 との内容だった。なんだその展開は。月曜日の朝からこれほど脱力するメールもないだろう。あわてて先方の病院に連絡したが、やはりその後本人とは連絡が付かず、22日にめでたく強制退院となったらしい。それから丸二日、何も知らないてめえのところには本人からも含めてプライベートなルートでの連絡は全くなかった。
通常であれば、自殺企図の患者が入院中に無断外出したら、おそらく未遂に終わった思いをどこかでひっそりと遂げるのだろうか、と思うものだが、てめえにはそうではないだろうというどこから湧いてきたのかもよくわからない確信があった。本気でやり遂げる人は、overdoseしたときに友人に連絡を取らないものだ。
とりあえず本人に電話をかけてみた。呼び出し音は鳴るが、出ない。電波の届かないところにいるわけでもなく電源が入っていないわけでもない。ということは、てめえからの電話だと感じて電話を取らないのだな、と思った。まあ、ある意味予想通りの展開。
しばらく呼び出し音を鳴らしたが、何の反応もないために諦め、overdoseしたときに友人が連絡を取った友人(ややこしいので以下Kとする)に連絡してみた。
「おう、お疲れ! 彼は退院したらしいな!」 と、電話を取ったKは言った。なんだ? てめえはまだ何も言っていないのに、なぜ彼は退院の話を知っているのだ? いったいKはどこまで知っているのだろうか。 「昨日彼のお母さんから電話があって、『無事退院しました。どうもありがとうございました』って言われたで。本人から? 直接連絡はないけど、お母さんがまた連絡させるって言ってたわ」
てめえはKに、彼は病院を無断で脱走したこと、病院と連絡とれずに強制退院となったことなどを簡単に説明した。ここでてめえがKに隠すことは何もない。「なんやて。彼のお母さんは普通の退院と思うてはるで。親に嘘つきよったなあいつ・・・。まあ親には言えんこともあるわな。入院理由も、自殺企図という内容は隠しているみたいや。そら最近モバゲーで出会った女の子にふられたからなんて理由、親には言えんわなぁ」
…なんとそんな理由だったのか3日間眠れなかったのじゃなかったのか。と、てめえは茫然とした。と同時に、もう何でも良くなってきた。どーでもええわ。
またなんかあったら連絡をおくれとKに話し、電話を切った。overdoseした挙句、友人に連絡。呼ばれて運ばれ命を助けてくれた病院から脱走。もともとの原因はモバゲーの出会い系? ということなのだが、彼は生活保護を受けていることを忘れてはいけない。生保でモバゲーで出会い系で失恋で絶望してoverdoseして夜中に友人をたたき起してICUに入って医療費を浪費し脱走(生保なので取っぱぐれのない病院は深追いしないと)。こんな支離滅裂は久しぶりに経験した。
しばし呆然とし、院内をふらふら歩いていると、精神科のDrから声をかけられた。 「友人さん、そろそろ退院だって?」 いやそれがですね、とてめえは脱走のことをかいつまんで説明した。 「あれ、さっきご本人から電話があって、退院したので外来の予約を取ってほしいというので、自分の外来を予約したよ」なんと。内科は連絡ありませんがなにか? 「さすがにばつが悪いんじゃないの?」と精神科Drはかばってくれたが、いやあもう知らん。どーでもいいわ。後は好きに生きてくれ。
"Let us be lovers we'll marry our fortunes together" "I've got some real estate here in my bag" So we bought a pack of cigarettes and Mrs. Wagner pies And walked off to look for America
「僕たち恋人になろう、そしていつの日か結婚しよう」 「バッグの中に、ちょっとした財産を詰め込んできたわ」 そして僕らは煙草とミセスワグナーのパイを買い アメリカを探す旅に歩き出た
"Kathy," I said as we boarded a Greyhound in Pittsburgh "Michigan seems like a dream to me now" It took me four days to hitchhike from Saginaw I've gone to look for America
「キャシー」ピッツバーグでグレイハウンドのバスに乗り込み、僕は言った 「ミシガンにいたのがもうずっと昔のことのようだね」 ミシガン州サギノーからここまでヒッチハイクして、もう4日が経っていた アメリカを探すために、ここまでやって来たんだ
Laughing on the bus Playing games with the faces She said the man in the gabardine suit was a spy I said "Be careful his bowtie is really a camera"
バスの中で笑い合い 顔を寄せ合いゲームをした ギャバジンスーツを着ている男はスパイだと彼女は言った 「気をつけろ、そいつの蝶ネクタイは実はカメラなんだ」と僕は言った
"Toss me a cigarette, I think there's one in my raincoat" "We smoked the last one an hour ago" So I looked at the scenery, she read her magazine And the moon rose over an open field
「煙草をこっちに投げてくれ。レインコートの中に入っているはずだ」 「1時間前に最後の一本を吸ったわよ」 しかたなく、ぼくは外の風景を眺め、彼女は雑誌に目を落とした どこまでも続く平野に月がのぼっていた
"Kathy, I'm lost," I said, though I knew she was sleeping I'm empty and aching and I don't know why Counting the cars on the New Jersey Turnpike They've all gone to look for America All gone to look for America All gone to look for America
「キャシー、僕は分からなくなったよ」そう呟いた。 彼女が眠っているのは知っていたけど 僕は虚しくて心が痛くて、なぜなのか分からなかった ニュージャージーのターンパイクを走る車の数を数えていた みんなアメリカを探しにきたんだ みんなアメリカを探しにきたんだ みんなアメリカを探しにきたんだ
"America" Words by Paul Simon
|