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「不思議な少年 4」山下和美
2005年10月23日(日)
3編を収録。

「由利香」
静かな田舎の町に暮らす一人の少女。自分はほんとうに存在しているのか、この世界は自分の想像の産物なのではないかという物思いにふけりつつも、道に咲く花や、犬に愛情をそそぐ彼女に、少年は会いにきた。
少女の視界に混ざっていく凄惨な場面。やがて物語は思いがけない方向へ…。
久しぶりにすごいと思いました。展開のうまさ。突然入ってくる場面が、衝撃的であるのに流れとしてはとても自然で、状況の説明が言葉ではなく納得でき、飲み込まれました。
伝わってくるメッセージにも、泣かされます。
短いですが、とてもよかった。

「水晶玉の猿」
里から里へと渡り歩く大道芸人の老人。七色の水晶玉をあやつる芸を見せる。その灰色の玉には、己が命を亡くす時の顔が映るという。少年は老人と旅を共にするようになる。やがてたどり着いたのは飢饉の村。
どこかで読んだような昔話ですが。
老人という少年の表情が生き生きしていてかわいい。

「ベラとカリバリ」
この巻の約半分を占める中編。
ベラは、土地を持たないロム族の少年。ロム族は狩られ、ベラは長い年月牢獄へ放り込まれる。処刑を待つだけだったベラの前に現れたのは、ルカと名乗る不思議な少年。少年はベラに「復讐がどこまで人を大きくするか興味がある」と告げ、言葉や作法などを教え始める。彼の復讐の行き着く先は…。
いつも冷静な少年が、女性としてベラを愛すようになるというのが意外でした。

とにかく「由利香」が素晴らしかった。
★★★★☆
「パートタイム・パートナー」平安寿子
2005年10月22日(土)
就職をしても長続きをしないが、女の子の相手をするのだけは大得意という晶生が始めたのは、パートタイム・パートナー。通称デート屋。二時間一万円で女性のデートにつきあう。励まして、元気付けるのが仕事。
そんなお仕事の様子をひと月一話ずつ、一月から十二月までを描いた連作短編集。

正直、最初の方は、えっこんなところで話が終わっちゃうの?と思いました。
短編なんだけど、オチがないというかカタルシスがないというか。その後どうしたの?と思うんですが、なんのフォローもなし。
でもまあ、普通の人生もそんなに毎度毎度オチがつくわけでもないですしね(笑) いろんな行きずりのお客さんがいて、いろんな事情のデートにつきあい、なにかが劇的に起きるわけでもないけれど、いろんなことを感じていく…。そんなお話です。
ふてくされた態度とか、高飛車な態度とか、そんな女性にすらかわいさを感じてしまう晶生はすごい(笑)

私はお父さんの思い出のところが好きでした。
この人の描く父親というのは、規則正しい小心者で、でも自分だけの密やかな楽しみを持っていてそんな人生に満足している、そんな人なんですね。世間的にはおもしろみがないと言われるタイプで、でも描き方によって微笑ましくも思えてしまうんだなと思いました。
★★☆


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