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「家守綺譚」梨木香歩
2005年10月02日(日)
これは、つい百年前の物語。庭・池・電燈つき二階屋と、文明の進歩とやらに棹さしかねてる「私」と、狐狸竹の花仔竜小鬼桜鬼人魚等等、四季折々の天地自然の「気」たちとの、のびやかな交歓の記録。


一軒家に暮らす物書きの青年と、庭の木々、近くに住む住人や物の怪の類との交流の物語。
青年が書いたものという設定なので、文章も古風で端正。
掛け軸から現れる亡くなった友人も、飼い犬のゴローも、お隣の奥さんも、和尚もいい味出してますね。飄々としていて暖かく、庭のサルスベリに懸想されたりもして、ちょっとユニークでもあります。

次が気になってたまらない、という話ではありませんが、大切にしまっておきたくなるような一冊でした。
★★★
「もっと、わたしを」平安寿子
2005年10月01日(土)
優柔不断、プライド高過ぎ、なりゆき任せ、自意識過剰、自己中心。不器用な五人五様の煩悩がすれ違ったとき、少しだけ人生が動きだす。「自分らしく」生きようとする人のダサさとせつなさを描く、待望の書き下ろし小説!

前の短編でちょい役だった人が、次の短編で主役になるという連作短編集です。
山本文緒は普通の人の心の中に潜む悪意を描くのがうまいと言われていますが、この作家は一見厭な人を、とても人間らしくかわいい人に見せるのがうまいと思います。
傍から見たら「あの人は綺麗なだけで中味がなさそう」「なりゆき任せでつまらない人そう」なんて思う人だって、いろんなコンプレックスや悩みや愛しい気持ちを抱えてる。そういうのが、とても生き生きと書かれていて、とてもよかった。安易なハッピーエンドに持っていかないのもいいと思いました。

特に、3話目の「なりゆきくん」がよかった。冴えない少年が、仕事先の社長の娘(と言っても働いてるのは社長とその娘だけ)に翻弄されるんですが、その娘がふてくされたかわいげのない子なんです。二人で食事に行っても全然話も出来ない。それなのに…っていうのが、ぐっときます。
★★★★


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