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「君たちに明日はない」垣根涼介
2005年08月05日(金)
リストラを専門に請け負う会社に勤める青年が主人公。リストラの候補にあがった人たちの業務実態を調べ、面接し、退職を勧告する面接官。
リストラ専門の会社だなんて、一見悪役に思えますが、主人公の真介も社長もやけにさわやかだし、仕事に対しても真摯な態度で臨んでいることが伺えて、好感が持てます。じゃあ、リストラされるような社員はよっぽど…と思うと、こちらも愛嬌のある人物ばかり。
そんな人たちがリストラされるなんて…と思うと、後味は実にいい。
実際問題としてこんなわけはない…と思わなくもないですが、痛快で、読んでいる間とても楽しかったです。この人の良い所は、後味のよさですね。

何よりも、登場人物が愛嬌があっていい。
真介が惚れることになる八つも年上の女性・陽子も、とても魅力的です。なんとなく読んでる間、戸田恵子さんの笑い顔が浮かんでました。
そして、カップルがお互いに相手をかわいく思うシーンというのがすごく共感できるのですね。

たとえばこんなシーン。真介が陽子にコンサートのチケットを渡すのだけど、真介は面接が長引いてコンサートに少し遅れて来る。陽子は不安と怒りを感じているのだけど、真介は笑顔で近づいてくる。陽子が怒鳴ると、真介は聞こえないらしく笑顔で何度も聞き返してくるので、怒りが失せる。…実は真介は怒ってるのもわかってたし怒鳴ってるのも聞こえていたのだけど、怒っているのが愛嬌たっぷりでもう少し見ていたい…とか思っている。というもの。
私だったら、どっちの立場でもそんな気持ちにはならないと思いますが(笑)、この人のテンポのよい文章で登場人物ににやけられると、なんだか同じ気持ちになっちゃうのですよ。不思議なことに。
そんな感じで、うきうきした気持ちになれる一冊です。リストラがテーマなのにね(笑)
★★★☆
「『恐怖の報酬』日記」恩田陸
2005年07月31日(日)
飛行機恐怖症の恩田陸が、恐怖を乗り越えてイギリス・アイルランドへ旅立つ。
旅行前の緊張や持参する本選びに始まって、様々な場面での妄想・空想・考察・思い出話…などなど。
たとえば、笑いと恐怖は紙一重であること、恋人の四つ目の条件、歴史上の人物を探偵役にしたら…の空想、「エアハート嬢の到着」の絵と切り裂きジャックだと言われるその作者のこと、文章を「打つ」ことと「書く」こと、曇り空が好きなこと、作家と神の視点のこと、日本は言霊に祝福されていた国だということ……などがおもしろかった。
そしてこの本のクライマックスは丘の上での、いつか書かれるであろう小説の断片が描かれていることだと思います。
私はこの場面だけで、ノスタルジーに浸れました。
この本、「酩酊混乱紀行」と書かれていますが、実は「図書室の海」に収録されているような「長編の予告編の短編」と「三月は深き紅の淵を」の第4章とをあわせたようなものであると思います。

私は元々エッセイの類は好きなのですが、作家によっては小説はすごく好きなのにエッセイはちょっとあわないわね…という人も、その反対もいます。恩田陸のエッセイを読むのは初めてですが、さいわい両方とも好きなようで嬉しい。もっと読みたいな。


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