■今日、人間ドックでした。昨年、仕事でばたばたしてたら結局行きそびれてしまい、2年ぶり2度目(甲子園じゃない)。どうも人間ドックそのものの内容を忘れてしまっていたようで、ナントカという注射されて、ああ、こんな注射するんだっけ――なんて思っている間に看護師に急かされて発泡剤と水を飲まされ、デカい機械の中に立たされ、ああええとこれはもしや……などと訝しがっている間にコップ一杯のどろどろホワイト飲料、バリウムを手渡された。あ、そうか、バリウム飲むのか! と心の中で膝を打つのも束の間、部屋には体ン撮影用機械に挟まれた俺ひとり。隣の部屋からの覗き窓みたいなところから若い医師が顔を見せていて、マイク越しに俺に指示。機械がうぃぃぃぃんと動き出す。 『はい、では行きますぅ。腰を左右に大きく振ってくださいぃ』 恥辱の時間が始まった(2002年12月6日『体験』に詳細)。
■珍しく読書虫が相変わらず元気。何冊くらい読んだだろうか。ええと、勉強のために読んだビジネス書も入れると今月に入って今のところ7冊か。特に重松清の作品にはまっている。『ナイフ』『ビタミンF』『流星ワゴン』『熱球』、以上は重松作品。世に出ている書評とはちょっとハズれるかもしれないけれど、あまり力の入らない、柔らかな世界観が気に入っている。そしてどの作品も読み進めるのがちょっと(時にはかなり)ツラくもなる。そこを超えての読後感はどれも爽やかで優しい心持ちになれるのですねえ。文句なしのお勧めは『流星ワゴン』『熱球』の2冊。黙って読むべし。で、今日も古本屋で『エイジ』『日曜日の夕刊』を買ってしまった。
■コンビニのレジに並んでいたら、隣のレジの列で女の子が二人元気よく喋っている。どうやら、共通の友人の軽い悪口のようだ。あまり悪意がないことは、その話しぶりからは伺える。 「でさあ、アイツって、時々ワケわかんねーこと言うじゃん?」 「そうそう。意味わかんないの」 「何回も『え、どういうこと?』って聞き直しちゃうんだよね、ワケわかんなくて」 「言えるー」 「なんつーか、アイツの話って、“つかみどころ満載”なんだよね」 “つかみどころ満載”なら十分理解できる話だろう!、とココロの中で突っ込みながら俺はレジで支払いを終える。彼女はこう言いたかった。“ツッコミどころ満載”と。
今更ながら着メロのおはなし。 会社用にドコモのケータイを持たされている。持たされている、というよりも、本来はスタッフ職の俺には必要ないケータイをシステム部からの追及の手を逃れて持ち続けている、というのが本当のところ。 一方で、ドコモユーザーの友人がいる。彼女が、なんだかわからないけれど、なんだかわからない着メロをがしがしと送りつけてくる、という話はいつぞやココでもしたと思う。彼女からの着メロ攻撃はその手を緩めることも無く執拗に続けられていて、ふと仕事中にメールが届いたかと思うと、彼女からの着メロ攻撃だったりするわけだ。 俺の持っているドコモケータイには、一体どれくらいの着メロが登録できるのだろうか。 電子音のいわゆる“着信音1”とか“2”というやつは除くとして、今数えてみたら40曲。このうちの30曲は彼女から送られた邪悪な着メロだとしたら。だとしたら、と言ったが、実際そうなんです。30曲。
先日送られてきたのなんて『ラムのラブソング』ですよ。「あんまりソワソワしないで〜」っていうアレですね。ソラで歌える俺もどうかと思うけれど。 いい年齢したおっさんの着メロが『ラムのラブソング』て、あまりにリスキーだとは思いませんか。この曲を着信音に設定することは、さすがに俺にも出来ません。
おそらく、着メロ攻撃の主である彼女は今回のココを読んで大いに反省する――かと言えば決してそんなことはないだろう。むしろ、「あと10曲は送れるじゃないの」などと、不必要に前向きになるに決まっているのだ。 困ったけれど、かなりうれしい着メロ攻撃。
ウチの部署は、チームのマネージャーが感情の起伏の激しい子供のような奴、ということを除けば、まあなんというか年の近いメンバーが集まっているのと、先輩格の方々も皆穏やかな人達なので、職場環境としては悪くない。なので、仕事中のいろいろな話の中でもお互いに軽口を叩き合っている。
「のづさん、この決裁書、内容確認しておいていただきたいんですけど」 「了解、すぐ見るわ。で。確認し終わったらシュレッダーしておけばいいんでしょ」 ――程度の冗談は定番である。
「いつも、机で牛乳を飲むなってのづさんに怒られてるんで――(俺が牛乳嫌いだから)」 「おお」 「今日は、いつもより小さいサイズの牛乳を買ってきました」
「のづさんが作った資料、どこにしまってありますか?」 「ごめん、それだけは言えないんだよ、ごめん……」
お互いに忙しいときにこういう冗談を放たれると殺意を覚えることもあるが、まあ、楽しい。
「会議資料、これを完成版ってことにしようと思います。のづさん、いいですか?」 「ああ、さっき目を通したよ。いいんじゃないかな」 「ありがとうございます」 「ついでに、そのファイル、“開発”の“開”の字を一括置き換えで“猫”に換えておいたから」 「やめてくださいよ!」
これは、一度本当にやってみたいと思っている。
日曜日に都内の美容院から帰ってきたあたりから「体調が悪い」と言い出したツマ。その日は早い時間に床に着いたが、翌朝、熱と酷い咳に見舞われそのまま会社を休んだ。ツマはもともと平熱が低い体質なので、ちょっと熱が出るとぐったりしてしまう。火曜日になっても熱は収まらず、引き続き仕事を休ませたが、どうも性質の悪い風邪のようである。 どうやら日中はなんとか体調も回復してくるようだ、とツマは言った。神経質なツマはそんな瞬間に家の掃除をしたり、洗濯物をやっつけたりしているようだった。「そんなことは俺がやるから――」とすこしいい格好をしてみせたが、 「オットの家事は万事ぬかりが多いので不可」 と言われた。 昨晩、家に帰ると、ツマは熱も下がり、朝よりは血色のいい表情で俺を迎えた。 「昼間、すこし気分が良くなったので、本を読もうと思ったんですよ」 「うん」 ネクタイを緩めながら俺は答えた。ツマは半纏を肩から掛けて、カーペットにぺたりと座った。 「オットの『古畑任三郎』、全3巻」 「あったね。本棚の奥のほうだ」 「そう。3冊まとめて本棚から引っ張り出したのね。1、2巻はそのままだったんだけど、3巻には本屋さんで付けてくれるカバーが付いたままだったの」 「ふむ」 「ベッドで、ずっと読んでたのね。それで、3巻を開いたら――」 「?」 「『生き人形』だった……」 「(爆笑)」 そうなのだ。もともと『古畑任三郎』は1、2巻しかない。ツマが3巻だと思いこんで本棚の奥から取り出した文庫本はよりによって『生き人形』だったのである。
『生き人形』――。 かの稲川淳二が体験した、戦慄の恐怖実話を劇画化した漫画です。詳しく紹介するのもアレなんで、参考までに。
http://books.rakuten.co.jp/mcc/NS/CSfLastGenGoodsPage_001.jsp?GOODS_NO=1179292&rbx=X
『生き人形』概要
今月は一切残業なしで仕事をやること、とチームミーティングでウチのマネージャーが言った。 また訳の分からんことを……と俺は心の中で舌打ちしたが、今日はツマが風邪っぴきで仕事を休んでいるので、俺は今日くらいは早く家に帰ろうと思っていたから、とりあえず今日は好都合。 終礼が終わると、俺はさっさと帰り支度を整え、マネージャーと部長に、 「ホントに帰りますよ、ホントに帰りますからね」 と強く訴えて事務所を後にした。昨年、定年退職を迎え、今は嘱託社員の立場で一緒の部門にいるスズキさんとエレベータの前で一緒になった。 「ああ、のづさん、ごくろうさまですね」 「お疲れ様でした」 「で、今日はこれから仙台? 鳥取? 松江かな?」 スズキさん、本気で言ってるから笑えない。俺が定時で事務所を後にすることはない、と信じ込んでいるようだ。社内の他部門の奴もそうだ。「今日はなんで本部にいるの?」なんてしょっちゅう言われる。地方出張の嵐を駆け抜けてきたここ1、2年だけに致し方ないか。 勘弁してください、今日は逃げるように帰ります、と言うと、スズキさんは、 「おお、そうかあ。そうだよなあ、たまには早く帰らないとなあ」 と笑った。
定時で会社を出るのはいいが、帰りの電車がもう親の仇のように大混雑。朝は満員電車に揺られるのが嫌でそこそこ早い時間の電車で出社しているのに、帰りの電車がこれでは余計疲れてしまうではないか。電車が滑り込んでくるホームも帰宅の人たちで溢れかえっている。そんなに帰宅したいのか、おまえら――と訳の分からないツッコミを入れたくなる。今までは21時、22時すぎまで仕事をしているのがあたりまえだったので、こんな早い時間の帰宅の電車がこれほど混雑するものだとは知らなかった。 覚悟を決めて、快速電車に乗り込む。続々と帰宅のサラリーマンや学生が乗り込んできたが、俺はなんとか鞄を網棚に乗せ、吊り革を確保し、いよいよ読み終わろうとする文庫本を開くことはできそうだった。
あっという間に所沢に到着。同時に、さだまさし「精霊流し」も読了。家までの道すがら、ブックオフに立ち寄って、文庫本を一冊購入した。途中、病の床のツマから連絡があったので、牛乳を1本買って帰宅。 どうということもない、定時帰宅の夜。
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