のづ随想録 〜風をあつめて〜
 【お知らせ】いよいよ『のづ随想録』がブログ化! 

【のづ写日記 ADVANCE】

2003年05月22日(木)  自戒

 さすがにもうベッドの中にもぐりこんでいたい時間である。
 只今午前2時をすこし回ったところ。残業が続いて帰宅が遅くなり、毎晩のように夜中の1時過ぎに晩飯を食ってりゃ、そりゃ体調もよくないっつーの。今日は今日で深夜に“グラタン”。“グラタン”は大好物だけれど、さすがに深夜2時近くになって食べるのはどうか、と思うわけで。
 特に今週はこんな日々が続いているので、今朝は大寝坊をしてしまった。
 いつも通り5時50分のアラームで目が覚めたのだが、トイレで用を足し、ふらふらとベッドに戻ってくるとそのまま深く安らかな“二度寝”に突入。
「オット! 7時半だよ!」
 どうやらツマも寝坊したらしい。毎晩俺が帰ってくるのを待ってくれているせいか、さすがに彼女も睡眠不足のようだった。これは実に申し訳ない。
 夫婦そろって鬼気迫る様相で身支度を整え、家を出た。俺はまだ遅刻するような時間ではなかったが、ツマは1分だけ会社に遅刻をしたらしい。
 仕事は坂道を転げ落ちる雪玉のようにどんどんその量を増してくるのだが、どこかでキチンとけじめをつけて、人間らしい生活をしなければならんなあ、と思う。それは仕事の手を抜く――ということではなく、だ。
 なあんて言いつつ、どうやら今度の土日は両日とも出勤になりそうな気配。とほほ。



2003年05月17日(土)  睡破

「昨日の夜から爆睡しちゃってさあ」
 よく聞く台詞である。
『爆睡』――熟睡をさらに強意した言葉だろうが、この“眠り”の度合いを表す言葉がさらに幾つかあることを皆さんはご存知だろうか。
『熟睡』よりさらに深い眠りを『爆睡』で、これは日常的に使われる。これを上回る眠りが『劇睡』。“激睡”と間違うことがあるので注意。“劇薬”などという言葉があることからも『劇睡』の眠りの奥深さが伝わってくる。さらに深く深く寝入ってしまい、もはや仮死状態と思しき状態を『極睡』といい、これはかなり危険だと言っていい。
 そして死の一歩手前くらいまで眠り込み、もうそのまま帰らぬ人となってしまってもおかしくない程に深く眠ることを『睡破』。
 今日、俺は久しぶりに睡破した。
 一度目が覚めたのが七時半。
 今日は休日出勤をしてやっつけたい仕事があった。仕事量の割に人手不足の我が部署は、仮に俺自身の仕事のトロさがあったとしても、もう平日とそのエンドレスな残業だけでは追っ付かない状況だ。で、今日は懸案事項だった仕事に着手しようという魂胆だった。

 実は先日の昼休み、会社を抜け出して病院に行った。
 もう長いこと酷い咳が止まらないのでさすがにやばいと思い、一週間前に医者に見てもらったら、自覚症状の無い38度の熱。長い出張生活で不規則な生活が続き、疲労が溜まっていることから極度に抵抗力が弱くなっているので、風邪の症状がいつまでも治らないのだ――そんなことを医者に言われ、血液検査までするハメに。その検査結果を聞きに行った、というわけだ。
「白血球が異常に多くなっています」
 がーん。お、俺は白血病なのか。
「違います。身体の中が――あなたの場合は咽喉が、ということになるのでしょうが、ひどい炎症を起こしているので……」
 とにかく疲れを取れだの、食事をしっかり採れだのいろいろ医者に言われたのだが、よく理由も分からないまま“白血球が異常に多い”と言われたインパクトが俺のガラスのハートを激しく揺すぶっていた。
 病院で出してもらった薬を定期的に飲むようになってからかなり咳は治まってきたが、先日の医者に言わせれば俺の身体はまだまだ“疲れている”ということらしい。なるほど、あの3ヶ月弱の滋賀出張はこんなところに影響を及ぼしていたのだ。

 今日はツマが朝から友人と出かける、ということで、俺は彼女が出掛けるのを俺は寝ぼけ眼で送りだした。そのままフラフラとベッドに戻ってしまったのがいけなかった。
 気がついたら午後4時半。それこそ朝にツマを見送ってからものの5分で夕方になってしまった、という感じである。
 休日出勤は明日の日曜にしよう、と思ったものの、午後4時半から活動を開始したのではもはや休日という機能を果たすことの無い一日となる。とりあえずハラが減ったので、テキトーに着替えて家を出る。近所の焼肉屋系列店でコムタン麺を喰い(お医者様、大丈夫です。食欲はしっかりあります)、ダイエーの中に新たに開店した電器屋を覗きに行った。そのまま駅ビルの本屋で小一時間立ち読みをして、夕食用にケンタッキーフライドチキンを買って帰った。

 健康第一。久しく“健康になりに”スーパー銭湯にも行っていない。オノレの日常をちょっとだけ反省した中途半端な休日であった。



2003年05月15日(木)  会話

 何だか分からないまま時間だけが過ぎ、出席しなければならない会議のこともすっかり記憶の彼方に四散してしまうほどに忙殺され、残業中もまだ22時をちょっと過ぎたくらいかと思ったらとうに23時を過ぎていた。隣の席の同僚と現状における我が部署の人員的欠如と付加業務集中による本来的任務の遂行妨害――といったような状況に愚痴をこぼしつつ残業を切り上げた。
 こういう日は基本的にココロに余裕がないため、意味もなく機嫌が悪い。
 帰宅の池袋駅への道すがらも目に入るいろんなものが不自然に腹立たしく感じ、混雑する駅改札ですれちがう人とちょっと肩が触れたくらいでも何故だか必要以上に腹が立つ。
 さすがに満員電車に揺られる体力が残っていないらしく、特急券350円を購入してレッドアロー号に乗車、ゆったりシートに座って帰ることにした。よせばいいのに、明日部長に報告しなきゃいけないことは……なんてPDAにメモったりしていたものだから、余計眼が覚めて眠ることも出来ない。所沢駅に着いても雨は蕭々と降り続いていて、気分はしっかりシフトダウンだ。
『先に寝ていていいよ』と電話で伝えても、俺が帰宅すると大抵ツマは起きている。今日もやや疲れた表情で玄関に俺を出迎えてくれた。仕事帰りに美容院に行ったので、さらにツカレた……というようなことをツマは言った。
 ローギアの俺は特に大したリアクションもしなかったが、ふと残業中にインターネットでチェックしていた巨人―横浜戦の結果をツマに伝えなければと思った。
「今日、二岡がすごかったね」――ツマはジャイアンツの二岡のファンだ。
「えー、美容院に行ってたからわかんないよ」
「三打席連続ホームランだって」
「ええっ、すごーい!」
 そう言ってソファに座り直すと、テーブルのリモコンに手を延ばして、眺めていた深夜のバラエティ番組からスポーツニュースに画面を切り替えた。丁度、二岡の二打席目のホームランの映像を流していた。
「すごいね、二岡! コレって記録なの?」
「いや、確か“四打席連続”ってのが記録だよ。かの王貞治がやってる」
「オットは負けた試合だけ観てしまったんだね」――この横浜三連戦、我がジャイアンツは2勝1敗だったが、俺は昨日の“1敗”の見事な逆転負けをライトスタンドで観戦していた。
「――そうなんだ……。せつなすぎる」
「……そうだ! そういえば、オット、昨日新しい応援バット買って帰ったでしょう!」
「あ、気づいた?」
「なんか増えてるなと思ったのよ! もう、あんなに応援バットばっかりたまっちゃって、どうすんのよお」
「まあまあ……」――タイミングよく、テレビでは二岡のヒーローインタビュー。
「やあ、でも二岡はいいねえ」
「将来のクリーンアップですね」――テレビが初先発のルーキー久保を映し出す。
「久保ってなんであんな“モミアゲ”してるの? なんかイヤ」
「お洒落なんじゃないの」
「あんなのお洒落じゃないわよお」
「しかし久保はナイスピッチングだ。桑田の再来だぞ!」
「完投させてあげたかったね」
「原監督が河原に投げさせる気持ちは分かるんだけどねえ」――テレビ画面には“抑え”の河原。
「?」
「しっかりホームランを打たれてるんだな、これが」
「河原、また打たれた〜」
「ぴしゃり抑えろっつの」
「河原が打たれると、すっごく悲しくなるのよねえ」
「そう、そうなんだ」
「岡島が打たれると『このやろー』って思うんだけど、河原が打たれると――」
「なんかこう、やりきれない気持ちになるね」
「そうなのよ〜」
 深夜24時過ぎにツマとジャイアンツトーク。

 俺の気分はたちどころに晴れていった。



2003年05月11日(日)  山積

 最近、ちょっとまたいろんな本を読みたい衝動に駆られている。
 いつだったか滋賀の出張中に、とある上役に、
「あなたくらいの年代だったらどんどん本を読んだほうがいいですね。それこそどんなジャンルでもいいんですよ。一週間に一冊くらい、読んでみるべきですよ」
 とやや熱く語られたのがどうもココロのはじっこのほうに残っているようだ。彼とそんな話をする前から、実は今年に入ってから俺はすでに数冊の本を読んでいた。とはいっても、かなり趣味に走った方面の本だけれどね。書店や古本屋へ足を運ぶたび、実務に役立つビジネス書なんてのも手には取るのだが、しばらくすると「また今度でいいやあ」ということになってしまうのだ。我ながら情けない。
 で、どんな本を読んでいるかというと、あいかわらずの蕎麦関連の本をまず一冊。蕎麦にはかなり五月蝿くなりましたよ、あたしゃあ。
 蕎麦といったら酒でしょう、という流れから、居酒屋関連の本。これはちょっと変っていて、かのシンガーソングライター――というよりは、お笑いタレントのイメージが強いだろうか――なぎら健壱著の一冊である。随分古くさくて自由気ままな呑み方をしている彼の体験談風のお噺で、そうは体験できるような話でもなくて結構読ませる。なにより、読んでいるとなぎら健壱の口調が頭の中で響いて、よけい可笑しい。
 最近はたてつづけに椎名誠の小説を読んだ。読み返したのが一冊、古本屋で見つけて今回初めて読んだのが私小説集『はるさきのへび』。これはそれぞれのテーマひとつひとつが俺のココロを軽く弾いてくれて、読んでいてなぜかとても心地よかった。そしてまた、こんな風なテーマで何か俺も書いてみたい――なんていうソラ恐ろしいことまで考えてしまった。まあ、時間が許せば、いずれ。

 ――時間が許せば、か。
 ここ最近、妙に仕事が増えてきて、なかなかゆったりとした時間が作れていないなあ。仕事のせいにはしたくないけど、ココロや生活に“ゆとり”がなくて、単調な日々がデジタル時計のように過ぎてゆくのに流されてしまっているようだ。
 そうそう、最近、妙にココロが落ち着いた一瞬があったんだ。
 先日、黄金週間の休みを利用して、ツマを連れて俺の高校時代の友人の家に遊びに行った。
 彼は昔から多趣味な男だった。彼の好きな絵が飾られ、本やCD、ビデオテープなど俺のココロを揺さぶるものがいつも壁一面に整然と並べられていて、たとえ仲間との会話が途切れてしまったとしても、部屋をぼんやりと眺めているだけでとてもゆったりとできる、そんな部屋だった。
 結婚して居を構えた彼の家の居間は、まさに学生時代によく遊びに行った“あの部屋”の風情だった。彼愛用のパソコンがあり、CDやDVD、雑誌、彼のコレクションなどが並べられていて、俺は学生時代に彼の部屋に遊びに行った感覚にタイムトリップしてしまった。
 ココロをリセットする瞬間って、大切なのですね。



2003年05月05日(月)  放出

「放出」と書いて大阪市内では「はなてん」と読むのだが、今回はそういうことが言いたいわけではない。
 滋賀で出張生活を送っていた頃と比べるとやはり今の毎日は実に単調な日々である。営業車に乗ってそこここを走り回ってもいれば、ほんのわずかな風の薫りに季節を感じ、道ゆく子供や学生達に小さな羨ましさと懐かしさを覚えたりもする。そんな微妙な発見やココロの動きがこの“のづ随想録”の一遍を彩ったりもするのだ。俺はそうしたもの達を、忘れないように胸の奥底のほうに、あるいは自分の電子手帳にメモったりした。
 しかししかし、こう毎日のように会社にカンヅメとなり、少なくとも楽しくは仕事をしていない今、俺のココロを少しでも揺り動かしてくれるものは少ない。まあ最近で言えば、東京ドームのモルツビール売りの女の子が健康的に可愛らしくて、今後ジャイアンツ戦を観戦するときはこの娘からビールを購入しよう、と固くココロに誓ったことくらいだろうか。
 で、今日は、胸の奥底や電子手帳に残したメモをもとに、滋賀出張生活の中で俺のココロを刺激したもの達をいくつかここで紹介してしまおう。

※  ※  ※

 営業車を走らせていたときのこと。いつものように朝食をとらずに仕事に出掛けたのだが、何故かその日だけは朝から何故か妙な空腹感を覚えていた。だから、というわけではないかもしれないけれど、道路沿いのレストランや喫茶店の看板が妙に気になった。営業車はどんどん山奥方面へ向かっていて、そんな看板も少なくなっていったが、交差点の赤信号で停車していると、ふと、その角にかなり年季の入った、喫茶店とも食堂とも言えないような店構えの平屋が目に入った。まだ営業を開始している様子はなかったが、店の入り口のすぐ右側にちょっとした立て看板がしつらえられていた。そこには、この喫茶店とも食堂とも言えないような飲食店の“売り”が書かれているようだった。

『9:00〜11:00 モーニングセットあります 〜 鍋物、一品料理』

――いくら空腹だったとしても、朝からモーニングセットに鍋物を出されたくはない。俺はココロの奥で静かにそうツッコんだ。

※  ※  ※

 営業車から流れるラジオのCM。ときどきびっくりする内容のものがある。
 それはきっと、「なんとか苑」とか「なんとかの森」とかいう名前の、要は老人ホームのCMだった。そのなかでは、夫婦を演じた若い男女が必要以上に弾んだ声で交互に喋っていた。

「最近、母さんが明るくなったと思わないか?」
「そうね、『○×ホーム』に入ってからホント楽しそう」
「きっと、“同年代の人が集まっている”から暮らしやすいんだよ」

――あたりまえだろう。同年代の人が集まっていない老人ホームってどんなんだよ。俺はココロの奥で静かにそうツッコんだ。

※  ※  ※

 ……なんのことはない、いつもの小ネタ特集でした(こんなことをメモってるのかおまえは、というツッコミをお待ちしております)。


 < 過去の生き恥  もくじ  栄光の未来 >


のづ [MAIL]

My追加