「硝子の月」
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そんな青年を止めたのは部屋の主だった。 「『金眼の使い』よ、仲違いなら他でおやり」 相変わらずのどこかからかうような声音で水を差されると、シオンはむっとした様子で視線を彼女に移した。 「それ、嫌いなんです」 幾分改まった語尾に、敬意は払っているらしいと旅を共にしてきた一行は感心する。 「誰かに使われるなんてごめんですよ」 それは先程と同じく底冷えのするような視線を伴うものであったが、この『英知の殿堂』の主にはどうということもない様子だった。 「して、そなたは何を問いたい?」 黄金の双眸を細め、艶やかな深紅の唇から言葉を紡ぐ。それは彼を質問者として認めるものだった。
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