「硝子の月」
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2005年12月31日(土) <輝石> 瀬生曲

 いつも強気なそれが、一瞬らしくない揺れ方をしたのは気のせいではない。
 しかし先の二人が思わず顔を見合わせると、彼女はすぐに吹き出した。
「そんな顔しないでよ。今は『気分がいい』って言ってるじゃない」
 その笑い声はいつもの彼女のもので、仲間達はほっとする。
「それに、そんなのあたしだけじゃないだろうし。ね、『賢者様』」
「そうだな」
 話を振られて苦笑する青年の瞳は雪花石膏アラバスタで、それは確かに紅よりも珍しい。
「どちらにしても」
 声と同じくらい穏やかに青金石サファイアの瞳が皆を見る。
「綺麗だよ」
 臆面もなく言ってのけた青年こそが、生まれも育ちも性格もばらばらの英雄達を繋ぐ人物だった。
 目を丸くしての沈黙の後に、大男と細身の青年が声を上げて笑う。
「何だよ」
「いや」
 少年のように頬を膨らませる青い眼の青年に、賢者は苦笑にも似た――しかしそれよりも優しい笑みを向ける。その言葉を引き継いだのは紅い瞳の少女だった。
「そこがあんたのいいところよ、アルバート」


紗月 護 |MAILHomePage

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