「硝子の月」
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2004年04月27日(火) <錯綜> 朔也

「わたしは、知りたいだけ。
 ……『御方』にはわかるのでしょう? わたしの紡ぐ運命を捻じ曲げるものが」
 白い少女が囁くたび、白い布がさらさら波のように揺れている。
「わたしは、知りたいだけ」
 繰り返す。知りたい。赤き運命のしるべとなるもの。
(あの女は嫌だ)
 あの女は嫌だ。嫌だ。――だい、きらいだ。
 わずかなりと劣ることなどあってはならない。まして敗北など。
「……古来、月は人を惑わすもの」
 部屋のあるじはふっと吐息のような微笑を漏らした。
「潮の満ち欠け、方向の指針、時の数え、そして人の狂気や魔力の支配。
 ……遠く離れ地上からいくらそれらを支配しようとしても、完全にはゆかぬ」


2004年04月25日(日) <錯綜> 瀬生曲

わらわを」
 『永き者の寵を受ける御方』の金の双眸がすうと細められる。
「疑っておるのかえ?」
 気を悪くしたのではない証拠に、唇には何とも楽しそうな笑みが浮かんでいる。
「いいえ」
 『白き紡ぎ手』は首を横に振る。


紗月 護 |MAILHomePage

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