「硝子の月」
DiaryINDEX|past|will
「悔しい」 頭部を覆う白い布の下から、ぽつりと声が零れた。 知られているはずはないと思っていたのに。『赤き運命』よりも『白き紡ぎ手』のほうが優位に立っているはずなのに。 シオンに仲介してもらうまでもなく、白い少女はルウファの言葉を知り得ていた。 「許さない」 廊下を進む動きに合わせて、全身を覆う白い布がふわふわと動く。
「『御方』」 ドアを開けて部屋の主を呼ぶ。 「略すでないと言うに」 長椅子に寝そべる部屋の主が苦笑して応えた。 「どうした? 最近はよく出歩いておるようじゃの」 彼女に手招かれ、少女はいつかと同じように女の大腿の前、軽く向き合えるように同じ長椅子に掛けた。
|