「硝子の月」
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ルウファの後ろ、開け放たれた窓から風が入り込んでカーテンを揺らす。 「そうやって起きて待っててくれたわけだし」 開けもしなかったドアの隣で、シオンは小首を傾げてみせた。彼が入ってきた時にはもう、彼女はその登場を予想するかのようにベッドに腰掛けてこちらを凝視していた。 「例えばそうっ! 甘い愛の囁きとかねっ」 「出てけ」 「またまた照れちゃって〜」 表面上は全くもっていつもの調子なのだが、いつもとは違うことも互いにわかっている。
「あんたの介抱は要らないって言ったはずだけど?」 ドアも開けずに入ってきた青年に、ルウファは赤い瞳を険しくさせた。 「そう。だから僕は介抱しに来たわけじゃないよ」 対する青年はにっこりと笑う。 「ひょっとして僕に何か、話したいことがあるんじゃないかなぁと思ってさ」
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