月と散歩 )
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転職の意志を親に伝えたのは、今年の夏のこと。
遅すぎるくらい、遅かった。
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僕の悪い癖で、 自分の中である程度カタチになるまで 外にその意志を出せないところがある。
…わかってるんだけど、やめられない。
だって、もったいないんだもん(笑)。
いや…。 そう言うと語弊があるかな。 すべては、何事にも「ひとを驚かせたがる」僕の性格に原因があるんだ。
驚かせる、ってことは相手になるべく情報を与えないでおいて 溜めに ためたモノを一気に放出することで最大限に効果を発揮する。 そう、思っている。
…イヤラシイ…?(苦笑)
タイミングも重要だ。 いままでにも、その機を逸したばかりに闇に葬られた『驚き』がたくさんある。じつは。 機会を逃した『驚き』は、驚きでもなんでもない。 ただの間の悪い冗談だ。 それだけは勘弁だ。
外した『驚き』は、振り返らない。 どうしようもないし、空しいだけだ。
…そうしているつもりでも、やっぱり眠れない夜なんかに思い起こしてしまう。
ああ…。 あの時、あれが出来ていれば…。 伝えることができてたなら…。 僕や周りは 変わっていたかもしれない…。 なんて。
そしてまた、眠れない。。。
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閑話休題。
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話が思いっきり逸れました(苦笑)。
で、今回の転職云々の話も、 長い年月をかけて僕なりに伏線を張ってきました。 でも、いざ…!ってときに いつも予想外のイレギュラーが発生して 結局 今年の夏に最悪のタイミングで発表することになったわけで…。
それでも、伝えられただけ ましさ。
…そう思ってるのは、きっと僕だけだ。
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親の反応は、おおよそ予想通りのもので。
「そんな、先のあてのないことを」 「いままでの積み上げてきたことを無駄にするのか」 「おまえの言ってることは理想ばかりだ」 「なにを言ってるのか、わからない」 「失敗したらどうするんだ」 「おまえひとりじゃ ないんだ」
『反対』。
つまりはそういうこと。
…ってか、なんだ? 僕は高校生か?!(苦笑)
なにより残念だったのは、説得の材料がすべて『金銭』『安定』に結び付いていることで。 たしかにそれは大切なことだろう。
けど僕ももう子供じゃない(つもりだ)。
そんなことは、このことを思い立った4年前からずーっと自分に問い続けてきたことだ。
その結果たどり着いた自分なりの『答え』が、ひとつも伝わらなかったこと。 それが、情けない。やるせない。
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先週、もうひとりの『親』ともいうべき、原籍の作業長が応援先に面会に来た。
『対話票』なる書類を携えて。
この対話票、 「言ってみなけりゃ始まらない/聞いてみなけりゃわからない」 と もっともな標語のもと 日頃の不平不満をぶっちゃけてみなさいな、という上司の粋な計らいなのだけど…。
無記名ならともかく、所属はおろか社員番号まで記入して ぶっちゃけろ、なんて。 そんなものに書けることは、不平不満とは言わない。
「書いたところで 変わらない」と標語に付け足して。
さて…。 こっちの『親』には、どのタイミングで ぶっちゃけるか…。
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憧れや名誉はいらない
華やかな夢も欲しくない
生き続けることの事の意味
それだけを待ち望んでいたい
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誰もやったことがないから。 …なんて、くだらない恐怖心は僕には効かない。
『金銭』やら『安定』やら…。
それからひとつ、突き抜けた存在に 僕は なりたい。
そういや、しばらく仕事の話をしてなかったや。
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いつか書いたように、いまはロケットの仕事を離れて 戦闘機の整備をしている。
ロケットも、仕事がないわけじゃないんだけど ひとをたくさん置いておくことができなくて、他所の職場に『応援』しているわけです。 ウチの会社ではよくある話で。
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なかでも僕は『応援』に出されることが多い。
他所の職場が長いと、ロケットの仕事を覚える機会が少なくなる。 他所へ行っている間は、自分の課の評判を下げないように と一生懸命になる。 自然と、応援先で僕個人の評価が上がる。へへん。 でもそうすると、自分の職場であまりいい顔をされなくなる。ぬう。 応援から戻っても、後輩に仕事を教えてもらう始末。
「あいつは『使えない』」
そう言われないように、がんばって遅れた分 取り戻す。 …その暇もなく、仕事の谷間がくる。 …と、他所からお声が掛かる。
「あいつは『使える』から」
…悪循環…。
すんません。愚痴ですね。贅沢な。
評価されたいところで認めてもらえず、 思いがけないところで評価される。
いくら、ヨソのお宅で 「あの子はいい子ねー」 と言われても、 自分の家で 「おまえはダメな子だ」 と言われてしまっては、悲しくなる。空しくなる。 …やるせない。
他人から見れば、きっと贅沢な悩みだ。 でも、結局は当人の価値観。
となりの芝は青いのです。いつだって。
…愚痴ですね。ウツですね。こりゃ。
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そんなわけで(?)、僕はいまだに戦闘機の整備をやっている。
当初の予定では9月いっぱいで、ロケットのほうに戻れる話だった。
…そして予想通り、応援期間は延ばされた。 理由はいろいろある。 9月に打ち上げが予定されていたロケットが、様々なトラブルで11月末に延長になった。 あらゆる面で 不安定な職場だ。
でも、どうやら僕の応援延長は初めから予定されたモノだったらしい。
少なくとも今年度いっぱい(3月末まで)、ロケットには戻れない。
驚きはなかったけど、落胆は大きかった。
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応援に出て、早 半年が過ぎようとしている。
作業もだいぶ覚えた。 僕が来てからエンジンを積んだ機体ももう10機を越える。
いまはエンジンを積んだ後の、スロットルの調整が主な僕の担当だ。 もちろん、すべてを任されている訳じゃないけど。
スロットルというのは、車で言うところの『アクセル』にあたる。 これでエンジンの出力を調整する。 飛行機は車と違って三次元の動きをする。 つまり『高さ』があるわけで。 車は、もしエンストしてもその場で停まるだけだけど 飛行機は エンスト=墜落 だ。
そうならないように、試験と調整をするんだけど 責任は重大。
やりがいもある。 …応援者の僕がやってていいのか?って疑問もあるけど(苦笑)。
けど。
なにか、満たされない。
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『子供』は、ほかでなにを言われても ちょっとでいいから『親』が頭を撫でてくれれば それでいいのです。
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