つたないことば
pastwill


2005年07月30日(土)  

箸でも持つかのように刀を振るって、
漬物をつまむように人を斬って、
おかしいなあ、
食べることも人を殺すことも一緒くた
いつから、いつから、
いただきます、ごちそうさま
でもあんたの命は俺の糧にはならないよ

さよなら。


2005年07月28日(木)  

小太郎はいい子だね。それが父と母の唯一の褒め言葉だった。誰にも、誰にも迷惑もかけず、影響も及ぼさず、ただひたすら真面目に実直に。そんな人間で在れというのが二人の願いだったのだろう。俺は今までそうやって生きてきた。父と母を悲しませぬよう、勉学に励んだ。父は中流階級の武士だった。しかし今は家を守るため剣を捨て天人の元で身を尽くしていた。馬鹿げた話だと思う、己の魂を奪ったものの下につくなど。母は武家の女らしく、厳しく優しい人だった。剣など捨てろと言う父の目を盗み、俺をこっそりと剣術道場に通わせた。お前は武士の子なんだから、剣だけは、魂だけは捨ててはいけないと。二人は人格者である。ただ、俺にはそれが重荷だった。この家から出たいと思った。誰かが、呪縛から解き放ってくれるのを待っていたんだ。


2005年07月23日(土)  

井戸端に放置された桶には並々と水が入っていた。夏の強い日差しを反射させてはきらきらと煌く。空には白く大きな入道雲、手を伸ばせば届きそうで。いつかおれはあの雲の先へゆくのだ、と決めていた。春先に果敢無くなった母が言っていた、お前の父もあの雲を越えて行ったと、いつかお前も越えて行くのだろう、と。冷たくなってゆく母の手を握りながら、決めた。父の記憶はなかった。おれが生まれて間もなく戦地へ赴き、帰ることもなく死んだと聞いた。後に遺品となった刀だけが届いた。白い鞘も刀身も汚れ一つなく、清らかなままだった。臆病者だったのだと思った。刀も抜かず死にやがったと、そう思った。だからこそこの刀を持ってゆこうと決めた。自分は違うのだと、父に知らしめるために。慌しく走り出す、白い刀を持って。あの雲の向こうまで行くんだ。そしたら、変われる気がするんだ。


2005年07月20日(水)  

あんたを泣かさないくらい
あんたを笑わせるくらい
つよいひとになりたかったなあ


2005年07月19日(火)  ネバーランド

永遠に子供でいたい、と君が呟いた
今しがた読んでいた本の影響、こんなのいつものこと
でも君は食い下がる、きっとどこかにある、きっといる
永遠に大人にならないピーターパン
一時的なものだと聞き流す
それでも心には引っかかる
誰よりも大人になりたくなかったのは俺だった



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