自言自語
DiaryINDEX|<古|新>
実は先週 今日こそは声をかけると決心して出掛けたのに 結局怖くて 周りの目が気になって 声をかけることができなかったの
何度も何度もオジサンの前を通り過ぎて チラッチラッとその存在を横目で確認し 隣のショーウィンドウを見る振りをしながら立ち止まって オジサンを見て 深呼吸をして 目を戻したら オジサンと目が合ったの!
オジサンは無表情だったわ 私完全に固まってしまったの オジサンの顔をまじまじと眺めてしまったわ 意外に精悍な顔立ちをしてた...
先にオジサンが目を逸らしたの 私その瞬間何故だか恥かしくなって 走ってその場から逃げ出しちゃったの
そのまま車に飛び乗って家まで帰ったの
その日はもう一日中そのことばかり考えてたわ ううん、この一週間ずっとそのオジサンのことばかり考えてた 私絶対に顔を覚えられたと思う もう2度とあの通りにはいけない だってもしもアイツが変態だったら 後を付けられて襲われるかもしれない...
ううん、あの人はそういう類の人じゃない 私のなんとなくの直感だけど あのオジサンは危険な人ではないような気がする 私が気にしなければ たぶん何も起こらない
でもあのオジサンのことを考えないで あの通りを通ることは今の私にはもう無理なの
変な話 変な話だけど もうあのオジサンが気になってしょうがないのよ
だから今日こそ声をかけると決心した もう顔を覚えられてしまったから もう次回なんて有り得ない
だから今日 あのオジサンに声をかけるの
私はあの通りが好きだけど 別に毎週通ってるわけじゃないわ いつも同じところで服を買うわけじゃないから 2、3ヶ月に1回とか多くても2回とか だいたい給料日の次の週末に大抵一人で出かけるの 誰かと一緒に買い物するのは好きじゃない
それで それからその通りに行く度に そのオジサンを探すようになったの 探すって言っても そのオジサンはいつも必ず同じ場所にいたから 何気に通り過ぎる振りをして そこに居る事を確認するだけ
いつも必ずいるのよ! 同じ場所に同じ格好で 私がそこを通る時間はいつも一緒な訳じゃないわ 昼過ぎだったり 夕方だったり 時にはその通りの(大部分の店の)閉店間際の21時ごろだったり でも そのオジサンは必ずそこにいるの
ねぇ? 私がどれほどそのオジサンに 「そこで何をしてるの?」って聞きたかったか あなたに分かる?
その通りは 繁華街からちょっと離れた場所にあって ちょっと静かで でも決して人通りが少ないわけじゃなくて 車は滅多に通らなくて 通りの左右に並べられたショーウィンドウが綺麗で ふらふらふらふら 歩く道
そこはお気に入りの場所だけど 買い物はほとんどしない その通りの雰囲気だけを楽しみに ふらふらふらふら
最初にそのオジサンを見たのは 去年の冬だったかしら 店と店の間にある小さな路地に オジサンが一人たたずんでいた
この通りには似つかわしくない形(なり)だったわ 浮浪者だと思った だから気にしなかった
2回目に見かけたのは今年の春だった やっぱり同じ場所にいたの 何気なく視界に入って 最初は気付きもしなかった
でも帰りの車の中ふと思い出して そういうえばあのオジサン去年の冬にも見たわ だって全く同じ格好だったんですもの 間違いないわ あそこに住んでるのかしら?
夜よ早く眠れ。
夕暮れの公園で、
小学校3年生くらいの女の子が泣いていた。
一度通り過ぎたけど、 なんだか気になったので、 戻って声を掛けてみた。
「どうしたの?」
彼女は下を向いたまま、
「わたし、 右手と左手の長さが違うの」と、
異様に長い左手を僕の前に差し出した。
DiaryINDEX|<古|新>
|