子どもが出来たら親の有難味が分かる。
ずっとずっと、それを期待していた。
なのに、いざ宿してみると、 宿していなかった時よりも、 彼女に対する嫌悪感が酷くなった。
殴らない子どもの育て方。 邪険にしない子どもの育て方。 気が向いた時だけ執拗に干渉することの無い子どもの育て方。
自分が育てられた方法以外の子育てが、 果たして私にできるのだろうか。
どうして彼女は電話で、 「大変だろうから行ってあげようか」と言うんだろう。
どうして彼女は勝手にチャイムを押しては、 「大変だろうから来てあげた」と言うんだろう。
昔も今も、 私が望んでいるのはそんなことじゃないのに。
なのにそれを伝えようとすればするほど、 私は親不孝な娘に成り下がる。
歯車が上手にかみ合わない。
彼は優しい。 それは間違いないと思う。
でも、その優しさはいつも小さじ一杯分で、 欲張りな私が大さじを求めてしまうと、 するりと拒絶される。
私に宿っているかもしれない命を盾に、 あなたを責める気はないから、
不機嫌になるくらいなら、 私の世話は一切焼かないで欲しい。
昔から優しさの方向がずれているのは、 判ってたし。
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