解放区

2014年12月28日(日) 麻黄湯マジック2

続きを書こうとしていると瞬く間に時間が立ってしまったので、一気に省略。


3日目

朝起床すると、解熱していた。発汗がものすごく、着ていた服だけではなく布団までビショビショで、服と布団を取り替えた。汗が出て解熱したということは、麻黄湯の効果が十分に発揮されたということだ。

そんなわけで、麻黄湯の服用を中止した。結局麻黄湯は五包内服しただけに終わった。残りは次回発熱した時のために置いておくことにした。

体はずいぶんと楽になったがまだ食欲はない。体重も結構減っただろうが、測る気力もわかない。

昼から今度は猛烈な下痢になった。知識としては、インフルエンザで腹部症状が出現することは知っていたが、知っているのと経験するのはずいぶんと違う。

それと、強烈な筋肉痛は数日続いた。あの痛みは忘れられないし、貴重な経験となったと思う。


臥床中は勉強する気にもならず、ただたくさん本を読んだ。本っていうか、主に漫画。


「球道くん」全19巻

いつの日か読もうと思い大人買いしたままだった漫画。水島新司の漫画は大好きだが、球道くんは未読だった。そんなわけで今回初めて読んだのだが、1巻を読み始めたら19巻最後まで一気に読み通してしまった。

水島新司は野球漫画をもっぱら書いている作家だが、彼の漫画の特徴は「スポ根」ではないところ。そして、特に「大甲子園」以前の漫画は、野球を扱っているように見せてその実は「貧困」を扱っている作品がとても多い。球道くんも単純なスポ根漫画ではなく、その世界が非常に面白かった。




「大甲子園」全28巻

引き続き水島新司で大甲子園。彼の集大成の作品で、球道くんに引き続き読んだ。

水島新司の高校野球を扱った作品は、「ドカベン」「球道くん」「ダントツ」「一球さん」などなどたくさんあるが、実はすべて高校3年生の春まででストーリーが終わっている。

それはなぜか。まあ、ここまで書いてしまえば理由は明白だが、彼の思い入れのあるキャラクターを全て一つの作品で、しかも高校3年生の夏の甲子園でまとめて戦わせようという、まあ言ってしまえば男の夢みたいなもので。それがこの「大甲子園」。上記のキャラをガチで戦わせた結果、果たして誰が優勝するのか。作者としては最高に楽しかっただろうな。




「聲の形」

kindleで大人買い。読みたいときにすぐに購入できるなんて、なんて素敵な時代になったことだろうか。感想はまた今度。




「おしゃべりは朝ごはんのあとで」

朝ごはんは食べない自分だが、人が食べているのを読むのが大好き。そういう意味で結構楽しく読んだ。





「弾左衛門とその時代」

部落問題に対する勉強はてめえの人生のテーマだが、あらためて弾左衛門についてのお勉強。今度東京に行った際には浅草に行って、弾左衛門の軌跡に触れてみたい。





漫画ばかり書いたが他にも本はたくさん読んだわけで、なんだかもうどうでも良くなってきたのでこの辺りで終わり。てめえはたくさん写真集も持っているが、それらも読み返したり。要は頭をあまり使わない本を読んで、がっつりリフレッシュしたわ。



2014年12月26日(金) 麻黄湯マジック:インフルエンザに罹ってしまった!

今回はとても長くなるが、自分がインフルエンザに罹ってしまった記録と、抗インフルエンザ薬を使わずに麻黄湯で治療した記録。


麻黄湯【マオウトウ】 構成生薬:麻黄、桂枝、杏仁、甘草

傷寒論を由来とする。麻黄及び桂枝にはいずれも発汗作用があるため、強力に発汗を得ようとするときに組み合わされる。杏仁には鎮咳・去痰作用がある。



以下は添付文書より。
【効能又は効果】

悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症: 感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の 鼻閉塞、哺乳困難

【用法及び用量】

通常、成人1日7.5gを2 ~ 3回に分割し、食前又は食間に経口投与 する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

【使用上の注意】

1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

(1)病後の衰弱期、著しく体力の衰えている患者[副作用があら われやすくなり、その症状が増強されるおそれがある。]

(2)著しく胃腸の虚弱な患者[食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐 等があらわれることがある。]

(3)食欲不振、悪心、嘔吐のある患者[これらの症状が悪化する おそれがある。]

(4)発汗傾向の著しい患者[発汗過多、全身脱力感等があらわれることがある。]

(5)狭心症、心筋梗塞等の循環器系の障害のある患者、又はその 既往歴のある患者

(6)重症高血圧症の患者 (7)高度の腎障害のある患者 (8)排尿障害のある患者 (9)甲状腺機能亢進症の患者

[(5)~(9):これらの疾患及び症状が悪化するおそれがある。]





以下は東洋医学会HPより引用

基礎研究では麻黄に含まれるタンニン(エピカテキン)に塩酸アマンタジン 類似のウイルス不活化作用のあることが明らかにされており、また桂皮のシンナムアルデヒドにはウイルス遺伝子転写後の蛋白合成の阻害による抗ウイルス 作用が明らかにされています。抗インフルエンザ薬とは作用点が異なります。

引用は以上







1日目

この日も朝から仕事。数日前から、明け方に出現する空咳に悩まされていたのだが、この日は咳だけではなく鼻水も認めていた。

明け方の咳はなんだか喘息っぽい咳だなあと一寸うんざりしていたが、我慢できないほどでもなく様子を見ていたのだ。しかし鼻水が出てくると喘息ではない。「風邪、引いたかなあ」ともう一度うんざりする。

がっつりマスクをはめて仕事を開始した。なるだけ患者さんにうつさないようにしないと。

夕方にかけて咳と鼻水はどんどんひどくなっていく。この時点で熱っぽさはなかった。念のために途中で熱をはかったが平熱だった。

寝る前には倦怠感が強くなってきていた。ちょっと熱っぽさを感じて再度熱を測ると、37℃台の微熱だった。しかしまあ寝たら治るやろうといつものように晩酌して寝た。

2日目

起きたら身体中が痛い。寒気が強くて身体中ががちがち震える。倦怠感というよりは眩暈がする感じ。熱を測ると39℃を超えていた。咳鼻水などの気道症状、悪寒と筋痛、これってインフルエンザやんけ。まじっすか。ちゃんとワクチン打ったのになあ、でも今年は、きちんとワクチン打った人が罹るパターンがやたら多いのだ。くそう、今年のワクチンはハズレやったな、などと悪態をつく。

この日は休日だったのでしばらく布団の中でゴロゴロしていたが、意を決して病院に行くことにした。しかしあまり早く行きすぎると、インフルエンザに罹っていても検査で陰性になってしまう「偽陰性」になってしまう。そうなると、翌日に再検査となるのでそれだけは避けたい。

というわけで、昼過ぎに病院に行くことにした。しかし本当に体が動かない。食欲も全く起きず、かと言って脱水が一番怖いので、てめえが株主になっている大塚から送られてきたポカリスエットを枕元に置いて水分だけは摂るようにした。

しかし、どうやって病院に行こうか…。平日なら歩いて行ける最寄の病院に行くが、この日は休日なので休診である。救急病院はどこもそれなりに離れている。てめえの勤務先も救急受け入れはしているのでそれなら勝手知ったてめえの病院が良い。

しかし、どうやって病院に行こうか。歩いて行くのはほぼ無理な距離だし、かと言って公共交通機関を使うのはインフルエンザの可能性が極めて高い今ほぼバイオテロである。タクシーも選択肢の一つだが、あの密閉空間では運転手に感染させるのはほぼ間違いない。

うんうん唸っていた午後12時前。一瞬だけ、ふと体が軽くなった。もしや熱が引いたのか、と思い再度体温を測ると39.6℃と本日最高値をあっさりと更新していた。しかし体は不思議なほどに軽い。今だ、この瞬間だ! と思ったてめえは急いで支度を整えて愛用のバイクにまたがった。

絶対に間違いを起こしてはいけないので、ありえないくらいの安全運転で病院に向かう。冬の冷たい風が火照った体に妙に心地良い。そろりそろりとバイクを運転して、何事もなく病院に到着した。

バイクを置いて受付に向かう足取りも異様に軽い。まるで病原菌が消え去ってしまったかのようだ。なんだろうこれは。実はインフルエンザでもなんでもなかったというオチは勘弁な。

しかしやっぱり自分が長年働いている病院だけあって、ホームグラウンドにいるという安心感が押し寄せてくる。受付の休日アルバイトのおじさまも、救急のナースもみんなよく知った人ばかり。さくっと受付を済ませてバイタル測定を行った。

血圧は140くらい。普段のてめえの血圧よりは高いが体調が悪いからだろう。極端に高かったり低かったりすると問題だが、まあこんなものか。

脈拍は110くらい。ちょっと早めだが、人間は体温が1℃上昇するたびに脈拍数が約10上昇する。体温が39℃台であれば普段よりも3℃上昇しているわけで、脈拍は約30上昇していると考えられる。とすると、平熱換算するとだいたい80くらいなので、まあこれもそんなものか。

体温は38.7℃だった。冬の風に当てられて少し下がったか。でもやっぱり発熱はしている。

というわけで、検査結果が出るまで感染症患者を隔離する部屋に案内された。というより、自分で向かった。そして自分でインフルエンザ検査キットを鼻の穴に突っ込んで結果を待つ。

果たして結果は陽性だった。

「どうさせていただきましょ?」と、初めて当番の医師が登場した。本来であれば問診や診察を終えてからの検査になるのだが、身内同士なのでよほどのことがない限り問診も診察もせず、検査結果が出てからの相談となる。

この場合も、医師同士の場合は、基本的に相手の希望する通りに処方を出す。これはてめえの病院に限らず日本中どこでもそうなのではないだろうか。少なくとも京都の他の病院でもそうだし、沖縄でもそうだった。外国の場合は知らない。

「麻黄湯をください」とてめえは言った。そう、インフルエンザに自分が罹った時には、麻黄湯のみで治療してみようとずっと考えていた。以前にもどこかで書いたがタミフルやリレンザなどのノイラミダーゼ阻害薬は全く使う気がしない。


そんなわけで麻黄湯をいただいて、またそろりそろりとバイクを運転し帰宅した。「麻黄湯の効果、また教えてくださいね」と言った当番の医師は、おそらく麻黄湯を処方したことがないのだろう。

なんとか無事に帰宅したてめえは、さっそく麻黄湯を二包、アツアツの熱湯に溶いて服用した。時間は午後1時だった。

ちなみに麻黄湯の、保険収載上の使用法は「一日に三包を毎食間に服用」となっている。ところが、実際の漢方ではそういう服用の仕方はしない。とにかく大量の汗が出て解熱するまで、2−3時間毎に服用するのだ。このやり方だと一日三包どころではないし、そもそも保険を通らない。ので、処方箋状は「一日に三包を毎食間に服用」と書くしかない。てめえのような飲み方をするのは自己責任である。

この場合副作用として気をつけなければいけないのは、麻黄湯に含まれる「麻黄」の作用である。よく知られているように、麻黄には成分として「エフェドリン」が含まれている。これは強心作用を持つため、心臓の弱い人や血圧の高い人はそもそも服用を避けたほうが良い。もう一つ忘れてはならない作用としては、胃を荒らすことがあるということ。だから、胃の弱い人は、麻黄湯を飲む際には胃藥も併用した方が良いかもしれない。

ちょっと漢方マニアックな話になってしまうが、風邪薬としてあまりにも有名な葛根湯も、実は構成生薬として「麻黄」を含む。しかしあれだけ老若男女が市販品を含めてガンガン使っているにもかかわらず、胃を痛めるという話をほとんど聞かないのは、実は葛根湯の中に胃藥としての生薬(生姜+大棗+甘草)が含まれているからである。まあ、なかなか良く考えられているものだと感心する。

「麻黄湯」にそう言った配慮が全くされていないのは、この薬自体が超短期決戦のための薬だということを示しているのではないだろうか。そう、この漢方薬は最強の有効成分だけをシンプルに配合してあるのだ。

逆に言うと、体力のない人にはお勧めできない薬だということになる。

そんなわけで効果が早く出るために、最初だけ倍量で内服する。そのまま布団にくるまった。バイクの運転で神経を使ったせいか、どっと疲れが出てあっという間に眠ってしまった。

15時半頃に目が覚める。体熱感は強く、汗は全く出ていない。まだ麻黄湯の効果は出ていない。というわけで、さらに追加で一包を熱湯で溶いて服用した。寒気が強く、身体中が痛い。「これほどの痛みがあるのか!」というくらい痛い。そうか、インフルエンザの痛みはこんなに強いのかと実感する。インフルエンザって高熱を出す病気だと思っていたけど、全身の筋痛を来す病気だったんだなと実感する。発熱はおそらく二の次だ。そういえば、全身の痛みだけで熱もなく、念のために検査したらインフルエンザ陽性だった患者さんもいたわ。

今度は身体中の痛みで眠れない。スマホで時間でも潰そうかと思うが文字が全く頭に入らない。諦めて音楽を流すことにした。これで少しは気が紛れる。

気がつくと眠っていたようだ。外も真っ暗になっていた。時計を見ると18時だった。まだ麻黄湯の効果は出ていないようだ。

さらに一包を追加して服用する。身体中に熱が篭っているのがわかる。身体中の痛みもますます強い。そろそろ効いてくれよ、とてめえは願った。

18時半頃、いきなり身体中が燃え上がるように熱くなった。ものすごい熱で、頭も朦朧としてまるで夢の中にいるようで、目を開けると世の中が歪んで見える。しかし今までの全身の痛みは少し軽くなったような気がする。今まで全く経験した事のない感覚だ。麻薬でハイになった時はこんな感覚なんだろうか?

とにかくすごい体験で、体の中から燃え上がるような感覚。まるで全身の免疫系がファイアーして、一気にインフルエンザを燃やし尽くそうとしているような感覚。

西洋薬だったら、症状を抑えようとする「陰性の作用」が主なのだろうと思う。病状が陽なのであれば、それを叩く、逆方向に持って行こうとする。

しかしこの麻黄湯は違う。「陽」を極限まで燃え上がらせた上で、鎮火させる如く作用する。これは体力のある人には可能な治療法だが、高齢者や免疫力の落ちた方などは下手するとそのまま持って行かれるのではないか。

などと考えていると、19時頃に一気に発汗した。身体中の熱が汗と共にあらゆる毛穴から抜けていくような感覚に襲われる。ぐっしょりと発汗したあと、一気に体が軽くなった。おお、これが麻黄湯マジックか。

それでも完全に解熱したわけではなく、まだ37-38℃台の発熱が続く。20時半ごろに胃に違和感を感じたのはおそらく麻黄の副作用だろう。手持ちの胃薬をこの時点で内服した。

かなり体は軽くなったがまだ38℃台の熱はあったため、21時前に麻黄湯をさらに一包服用した。これで計五包。だいぶ体が軽くなったので、これを最後にもう寝てしまうことにした。

続く。



2014年12月10日(水) 備忘録

ほんまにもう、どうしたらいいのかわかりません、とてめえの後輩は泣きそうになりながら言った。入院している患者さんの治療についてである。

今まで断続的に相談を受けていて、できる限りの治療オプションは提案していた。空き時間に文献を漁り、お互いの考えをつき合わせながら治療方針を微妙に修正する。

しかし患者さんの病勢は強かった。どんな治療をしても反応しない上に、どんどん弱っていく。主治医である彼は常に「自分の力量が足りないのでは」「治療方針が間違っているのでは」という強迫観念に駆られていた。

いや、そうじゃないんだよ。と、てめえは言いたかった。言いたかったが、あえてその言葉は封印していた。ここはとことん悩んで欲しい。そして考えて欲しい。この経験は、必ず彼の医師人生にプラスになるはずだ。

そんなわけで、一緒にとことん悩んだ。だが、てめえは結論が見えていた。この患者さんは、どれだけ力を尽くしてもおそらく助からないのだ。

「この人はもう助からないと思うよ」というのはとても簡単だが、そう考えるに至ったてめえの思考回路や経験は、残念ながら彼と共有することはできない。てめえも駆け出しの時は、指導医が最も簡単に治療を投げ出すことに疑問を感じていた。もちろん、今はそうした指導医の気持ちが痛いほどにわかる。

病棟のナースは「この患者さんに追加の検査をする意義はどこにあるのですか?」と彼に詰め寄った。そのエピソードを聞いて、てめえはようやく彼に話をすることにした。てめえは、そう言わざるを得なかったナースの気持ちも、また治療を諦めきれない彼の気持ちも痛いほどよく分かる。

「もう、他に手段はないのですか。ただ悪化していくのを見ているだけというのは耐えられません。」
「気持ちはよく分かる。わかるよ。でも、もうこの患者さんは、おそらく一線を越えてしまった。残念ながら医学というのは敗北の学問で、どの患者さんも最後には必ず治療に全く反応しない時期が来て、亡くなる。これは必然やねん。この患者さんもその時期が来たのだと思う。これからはそれを家族に受け入れてもらうところなのちゃうかな」

そう、医学の、特に内科は必ず最後には亡くなられる。付き合いの長い患者さんが目の前で亡くなっていくのを見るのは正直とてもつらい。でも、それは必然なのだ。そしてこの仕事をしている限り、その運命から逃れることはできない。

病状が悪化したら大きな病院に送り、患者さんが亡くなったことを知らない開業医も多いが、病院に勤務している限りその運命からは逃れることはできない。

とりあえず二人で家族さんに病状説明をした。手は尽くしたが、残念ながら病勢は強く、これ以上の回復は望めない、ということ。

「あと、どれくらいでしょうか」
と娘さんが聞いた。
「それは…」
と絶句した彼の代わりに、てめえが応えた。
「おそらく、あと二日くらいでしょう」


その話をしてからきっかり二日後に、患者さんは亡くなった。後輩の初めての「死亡症例」だった。「モニター上心電図がフラットになりました」との電話が入り、一緒に死亡宣告に行った。

ベッドの上で、患者さんは安らかな表情をされていた。後輩に促し、かれはぎこちなく心音がないこと、呼吸音がないことを聴診器で確認し、最後に指で眼瞼を開いて瞳孔が開ききっていることを確認した。それから時計を確認し、死亡宣告を行った。これから長く続く彼の医師人生での初めての死亡宣告 となった。

それから彼と二人で死亡診断書を書いた。あのモノクロな用紙はどうしても気が滅入る。その間にナースが体を清めてくれる。

「なにがあかんかったのでしょうかね」
と、彼は無念そうにてめえに尋ねた。
「あかんかった事はないで。君は十分患者さんに尽くした。最善を尽くした結果やと思う」
と、てめえは言った。

それからご家族さんと話をした。

「まったくこちら側の力が足りず、残念でした」
と、てめえらは頭を垂れた。

「いえ、よくしてもらいました。正直、家族から見ても、もうあかんという覚悟はしてました。でも、主治医の先生は、まるで自分の家族のように悩んでいろいろ治療してくれた。だからね、ちょっとだけ期待したんですよ、もしかしたら少しでもよくなってくれるかもって…。だから、本当に感謝しています。ありがとうございました」
と、娘さんも頭を垂れた。



2014年12月08日(月) ニューオーリンズ

自分の手元に捨てられないでおいてある旅行ガイド「ニューオーリンズ 2008年度版」。旅行で行くはずだった場所は、結局行けないまま人生の宿題となってしまった。

社会人になってから、休暇の度に海外旅行に行っていた。台湾、カナダ、ベトナム、ラオス、中国、などなど。そして、その年はアメリカのニューオーリンズに行くと決めていた。

アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ。アメリカ南部に位置する街で、長い間フランス領であった街。そしてジャズが生まれた街。黒人のソウルフードが息衝く街。そして、本場のケイジャン料理が食べたかった。


てめえが住んでいた沖縄県名護市東江の海岸沿いにケイジャン料理の店があった。仕事を終えてそこでよく一杯飲んだものだった。それはまさにニューオーリンズのソウルフードで、いつもこんな沖縄の方田舎のまちの外れによくもこんな店があったものだと感心していた。

ご主人はニューオーリンズの出身で、奥さんが沖縄の方ということで店を出していたようだ。

名護の街はとても面白い街だった。沖縄っぽくて、沖縄っぽくない。沖縄にある「市」の中で、唯一と言っていいほど市街地に米軍基地がない街だった。だからアメリカナイズされている部分はほぼなかった。その代わり、昔ながらの沖縄が残っていた。

その一方で、ケイジャン料理の店もあるくらいな多様さがあった。小さな街にもかかわらず東京で修行してきた本格的な寿司屋が複数あったり、台湾人の経営する本格的な中華料理屋があったり、一見さんお断りの看板のないイタリアンがあったりケイジャン料理もあったり東西南北のインド料理を網羅したインド料理屋があったりととても面白い街だった。

その一方であぐー料理専門店もあり。あぐーは沖縄の代表的な豚と認識されているが、それを保存しブランド化したのは名護である。

麺好きとして忘れられないのは、名護のバスターミナルの近くに「香菜ラーメン」を売りにしたラーメン屋があったこと。香菜の香りを生かしたラーメンは好き嫌いを選ぶと思うが、これが沖縄の一地方都市で味わえるとは本当に感動したわ。

話が飛びに飛んでしまった。というわけで、元に戻る。


ニューオーリンズに行けなかったのは、親父が倒れたからである。まったく外国旅行どころではなくなってしまったし、今後も行けるかどうかわからなくなった。まあ、それも人生やな。でもいつの日か行ってみたいと思うぜ。





てめえの大好きな曲を、ボガンボスとソウルフラワーユニオンが演奏している。正直これは神。何が神なのかは、また今度。



2014年12月05日(金) 老後資金の追記

今日になって閃いたけど、単純積み立てをNISA口座で行うと税金が全くかからないので、これが一番お得かも。これを4として、まとめておく。


1。金融商品としての「個人年金」

メリット:掛け金を所得から控除できるので、税金対策になる。
デメリット:リターンが少なすぎ。昨日は書かなかったが、20年後に11%のリターンだと、間違いなく物価上昇に劣るので実質的には大きくマイナスになる。20年前の100万円と今の100万円が価値が異なるのと同様で、物価上昇率を考慮しないと騙されそうになる。同様の理由で、学資保険などの金融商品もお勧めできない。

2。単純に投資信託を積み立てる

メリット:リターンはそれなりに期待できる。
デメリット:掛け金を所得から控除できないので、税金対策にはならない。また、解約時に約20%の税金がかかる。

3。確定拠出年金で投資信託積み立て

メリット:リターンも期待できる上に、税金対策にもなる。
デメリット:はほとんどない。昨日は書かなかったが、何があっても60歳までは解約できないことくらい。ただしこれは通常の年金もそうなので、年金と割り切るのであればまったくデメリットにならない。急遽資金が必要になった時は困るかも。

4。NISA口座で投資信託を積み立てる

メリット:リターンは期待でき、税金も払わなくて良い。大きなお金が急遽必要になった場合、いつでも解約可能。
デメリット:掛け金を所得から控除できないので、税金対策にはならない。


こうまとめてしまうと、1と2はないわ。3と4は甲乙つけがたいと思う。

ので、老後の資金対策としては、割り当てる資金を2分割して、それぞれ3と4にするのがいいだろう。大病したり失職して大きな資金が必要になった場合は、躊躇なく4を解約すれば良いのだから。

というわけで、現在2を選択しているてめえは今後3と4の併用にします。そんなわけで、さっそくSBI証券に確定拠出年金の申し込みをしたぜ。NISA口座はどこで作ろうかな・・・。



2014年12月04日(木) 老後資金の作り方。

不本意ながら不動産の売り買いをしたり、そのため自分でも予想していなかった「副業持ち」になってしまった結果として毎年確定申告をしたり、いろいろとお金のことについて自分なりに勉強してきた。その中の一つに「老後資金について」がある。

自分なりに老後資金の事について勉強した結果、自分なりの結論は「投資信託のインデックス型をひたすら積み立て続ける。可能であれば確定拠出年金で」であった。それが本当に正しいのかどうか、FPの試験勉強をしている手前ちょっと検証してみる。

ただし、FPのテキスト的にはまだそこまで到達しておらず、きちんと勉強していないことをここに書き残しておく。

検証前のてめえの予想は、ぶっちぎりで投資信託の積み立て(そしておそらく確定拠出年金)の勝ちであるが、さてどうなることやら。



老後資金で最も汎用されているのは各保険会社の金融商品である「個人年金」だろう。この個人年金と、単純な投資信託の積立と、これを確定拠出年金で運用した場合について計算してみる。

条件が揃うように、40歳から60歳まで毎月2万円の積み立てを行い、60歳から10年に分けて受け取るものとする。

1。金融商品としての「個人年金の場合」

自分で調べた限りでは、最も受取額の多い個人年金は「東京海上日動あんしん生命の個人年金保険」であった。

毎月2万円を積み立てると1年で24万円、20年で480万円である。そしてこの個人年金の受け取り額は総額5336200円。トータルリターンは11.1%で、プラス536200円となる。

1年あたりの受け取り額は533620円、月あたりでは44468円となる。

受け取る時には税金が発生する。この場合、「雑所得」になるので、25万円を控除した顎の10.21%の税金が発生する。

面倒臭いので計算式は書かないが、毎年の必要経費は480000円となり、雑所得は56200円。この額は25万円に遠く及ばないので、結果として税金はかからない(逆に言うと、毎月の積み立て額を増やすと税金がかかってくる可能性がある)。

したがって、この場合の月あたりの受け取り額は44468円である。

あとは計算できないメリットとして、積み立て中に積み立て額を控除できるということがあるが、これは確定拠出年金の場合も同様である。

2。単純に投資信託を積み立てる場合

てめえが粛々と積み立てている「先進国株式インデックス」は、直近の1年の利率は26.81%であった。「いやこの1年は好景気だったからだろ」という批判もあると思うので、ここ5年の平均を見てみると年平均17.49%であった。ちなみに、てめえが積み立てている間の平均は年平均19.8%。

さらに甘く見て、年15%で計算してみる。もう気づかれたかと思うが、たった1年で上記の個人年金のトータルリターンをすでに超えている。

楽天証券の積み立てシミュレーションにこれを入れると、積立総額は29944790円。1の場合の約5.6倍となる。




仮に一括で受け取ったとすると、この総額に20.315%の税金がかかるので、この税金分を差っ引くと受け取り総額は23861506円となる。1年あたりは2386150円で、ひと月あたり198845円。

しかも、一括でなく、月あたり分を一月ごとに解約していくと、残金はさらに利率がかかるのでもらえる額はさらに増える。

1との違いは、積み立て中に積み立てている分を控除できないということ。ただし、税金の控除分など問題にならないくらいのリターンであることは言うまでもなさそうだ。

3。投信積み立てを確定拠出年金で行う場合

ほぼ2に準じるが、この場合「雑所得」になるので税率が10.21%となり、その分月あたりの分配金は増える。

しかも確定拠出年金の場合は積み立て金を所得税から控除できるので、毎年の税金対策にも役立つ。


というわけで、結論は「1<<<<<<<<2<<3」となった。てめえはこの結果を受けて、さっさと確定拠出年金の申し込みをすることにする。


おまけ

さすがに年平均15%をそのまま信用していいものかという気がしてきた。そんなわけで、ダウ平均で別のシミュレーションをしてみる。

ダウ平均は、この20年で約4.65倍になった。年平均の増加率は約8%である。というわけで、この8%でシミュレーションしてみる。

この場合、最終積み立て金額は11780408円となる。それでも積み立て総額に比して2.45倍。1の場合の受取額の倍はありそうだ。


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