2003年12月13日(土) |
NINAGAWA『ハムレット』 |
2回目の『ハムレット』です。前回裏側(笑)でしたが、今回は反対側からの観劇でした。 同じ芝居を表裏から観ることができるというのは貴重な体験でした。 しかも、裏側なんぞと言ってますが、実質的に裏側なんてものはどこにも存在してません。 どこから観ても、楽しめるようなそんな舞台構成でした。 …両側から観ると、それがよくわかります。
前回よりは台詞に翻弄されている感は薄まってましたが、でも前日に『リチャード三世』を観てしまったので…どうにもこう、物足りない感がありました。 悪くはないんだけど、全体的に青臭く、それをフォローするべきベテラン勢も自分のことで手一杯でフォローしきれてないってところがネックでしょう。 もう、終わってしまってますが…多分、あと一月上演されていればまた感想も違ったものになっていたのではないかと思います。 しかし、あと1ヶ月あったら…フェンスが持たなかったでしょう。藤原君なんか思いきり体当たりしてましたから、11月の時点でも結構、フェンスがたわんでいた。もう、この日も更にたわんで…今度やる時は新品に替えてあげてね…って思うほどでした。
ただ、若い子達の上達の度合いってのは目覚しいものがありました。持って生まれたキャラクターはしょうがないんですけど、最初は噛んでばかりいた台詞を随分と自分のものにしてました。むしろ、あまり変わってないのはベテランの方々…最初からある程度の力量はあるからはっきりとした変化は望めないのかもしれないけど、与えられた台詞を繰り返ししゃべるだけなら鸚鵡の方がいいです。だから、ところどころ睡魔に襲われ、かく〜んかく〜んと身体が揺れる。それも決まった人が出ている場で。
相変わらずオフィーリアは元気いっぱいで、生命力に溢れていて…芝のぶちゃんのが可憐だった。(ぼそっ)オフィーリア…狂いそうにないオフィーリア…何だかねー。(^^; 決して下手ではないだけにそのギャップが可哀想。 この子はオフィーリアをやるには時期が早すぎるという印象だけが残りました。
井上レアティーズは私の目の前で死んでゆきました(笑)。<厳密にはちょこっとずれているし、この日は2列目 随分とがんばってましたが、やはりね…歌がないと寂しいです。しかも、まだまだ喋りに翻弄されている。がんばってはいるんだけど…だけど…嗚呼、もう一度あのルドルフ君が観たかった…。 上演中よりはむしろ、カーテンコールの時に井出さんにあの角でお尻をつつかれていた時の姿の方を真先に思い出してしまう…(苦笑)何ごともないかのようにすましてましたが、それでも…(^^;
フォーティンブラスはやはりちょい落ち…でも、ラストのあの場面は眼福でしたので許す! 今は学芸会レベルでも、これから上達してくれればいいから〜! だからこれからも舞台でがんばって〜!
でも、先月観た時はそんな場面は覚えてない…やってなかったんだろうか? まあ、やっていたらもっと大騒ぎをしていたような気がする。 ……あとは観てなかった?(^^; 確かに、あのへんの場はレアティーズのぺこぺこと動くお腹を観てた気がする…! う〜、見逃していたのだろうか。
白雪姫と違って生き返ったりはしなかったけど、死んでるくせにやはり、レアティーズと同様、ぺこぺこ動いてた藤原君のお腹がほんのわずか止まってました。 …やはり、キスされる側というのは緊張するのでしょうか? ぜひ、どなたかインタビューしてもらいたいものです。
2003年12月12日(金) |
『イーストウィックの魔女たち』&『リチャード三世』 |
この日は…というか、この日も2本立て。 マチネに『イーストウィックの魔女たち』、ソワレで『リチャード三世』 『イーストウィックの魔女たち』・・・観に行こうかどうか散々迷ってたんですが、結局行ってきました。久々の帝劇B席です。<傲慢な表現(^^; 例によって例のごとく、『コアなファンの席』じゃないので、隣の席で上演中に携帯をチェックしだす(多分)高校生がいました。ちょこっとチェックするだけならそのままにしようかと思ったのだけど、メール返信をしようとしたので、注意! …すぐに止めたし、その後も出さなかったけど、そのまま続けるようならロビーに摘み出そうとか思ってました。保護者同伴で来ていたくせに保護者は何故、注意をしないのか!何で私が注意をしなきゃいけないのかと思うと釈然としない。 …それでもやはり、マナーは若い頃からきっちり叩き込まないと。(▼▼メ
そして、係員…開演前に劇場内を見回るくせに、携帯は切れと連呼しているくせにほんの1mもないところでClieを使ってる人間がいるのに知らん顔。 Clieだって、きっちりと切るべきだし、大容量メディアを搭載してる分だけ携帯よりもタチが悪いと思う。 そういう係員の態度が何だか釈然としない。
で、まあ…そんなことを冒頭に書き出す様子から察していただけると思いますが、あまり出来はよくなかったです。キャメロン・マッキントッシュな割にはキレがない。 一路さん、森さん、涼風さん…と揃ってる割には、今ひとつ盛り上がらなかったです。 フライングも…前宣伝ほどではなく、ただ1F席のお客様は楽しそうでしたけどね…森さんが高く上がるかに見せかけて低空飛行だったからさぞかし、スリリングな思いをした方もいらっしゃると思います。 …迷ってないでろっくりばーでチケットを取ってもらえば、そのスリルを味わえたかもしれなかったのが残念です。 ま、直前になってから決める方がいけないんですけどね。(^^; 2F席からじゃ、どうしても目線より低いままなので、せっかくのフライングもあまり楽しくはないです。<迫力が… 多分、演出家が呪われたあの方でなければすんなりチケットを取ったと思うのですが…しかし、今回はB席で正解でした。
舞台装置は大掛かりで、とってもエロティックなテイスト満載。 舞台フロントに唇、くるくるくる回る傾斜舞台は胴で、トルソーみたいなカンジでした。 その真中にお臍のつもりの穴があって…一路さんを初めとする出演者達のお家はくるりと反転させたなら女性の胸のような…というもので、かなり大掛かりなので、舞台装置は2F席のが断然よく見えたと思います。 たぶん、1Fだと唇やトルソーに気づきにくいと思うんですよね。
舞台装置だけでなく、衣装も内容もそういうテイスト満載でした。 全体にセクシャルな雰囲気が流れているのですが、それをあっさりと流したり、笑い飛ばしたりしてるので、全然嫌味ではありません。
ただ、終わった後に繰り返し口ずさみたいような曲はなく…コメディだというのに、イマイチすっきりしない。
それというのも、核となるあの役が大きな敗因。
何だか、あまり上手くはないというか…まあ、そういうのはいいんですが…キャラ的には面白いんだけど、どうもこう…違和感が付きまとってしょうがないです。 一人だけ、歌ってるのにCDを聴いてるかのような錯覚に陥ったりして、にぎやかで楽しい舞台なんだけど、それが空回りしちゃって、2F席まで心に響いてきません。 だから、携帯を弄りだすお子ちゃまもいるし、寝ているお姉さんもいる。 今回の舞台は『ロックを歌える人』というのが条件にあったらしいけど、それならばいっそ、ロックミュージシャンだった人ではなく、現役のロックミュージシャンにやらせた方がよかったと思う。 どこもかしこも…何か釈然としない。
そんな中で、今回の収穫はといえば、一路さんが新納さんのお母さんだったこと。 …嗚呼、もうそういう役をやるようなお年なんですね…。 いや、相変わらず凛としてお美しく、お子様持ちといえどもヤンママだったみたいだけど…でも、ドライブインで働く青年のお母さん…18歳の息子がいる…役…(^^; 3月からは16歳のエリザベートになったりしまうんだから舞台の魔力ってすごい…。
森さんもあのビブラートを堪能するまでない曲で…キャラが引っ込み思案で口下手(笑)な役どころなのでしょうがない面もあるんでしょうが…確かに、ドレス姿やらテニスルックやら、いろいろな衣装でも楽しませてくれましたが、どうしたってこの雪辱は『レ・ミ…』で晴らしてもらおうじゃないか…という気になりました。 多分、役柄ばかりではなく、季節もこういう季節だし、劇場も強烈に乾燥していたので、喉の調子が悪かったのでしょうか。<心配
涼風さんは…お久しぶりです…な思いでした。すごく久しぶりに名前を聞いたという気がしましたが、以前とはちょっと雰囲気が変わってました。 役柄的なものもあるんだろうけど、ちょっとだけマニッシュに。 しかし、頭の中では…るろうにが…(T^T)<わからないかたはスルーしてください。 この舞台は森さんの不倫相手の安原さん(@『待て〜ぃキャッツ!』だから…<わからないかたはスルーしてくださいPart2)といい…どうも視覚と頭の中が乖離したまま舞台の進行を見守ってました。
そんな中、一番好きだったのは…保守的で一路さん、森さん、涼風さんを目の敵にするがみがみおばさんなフェリシア…大浦みずきさん…すごくいい味出してました。 そうそう、ああいう人っているよね…って思ってしまう微笑ましさ。 教条的に生きて、それが正しいと信じ、他人にまでそれを押し付ける…実際にいたら思いきり距離を置いちゃうけど(笑)、舞台をパシッと引き締めるいい毒加減でした。
その後はホテルで寛いでから(帝国ですよ、帝国ホテル…)『リチャード三世』を観ました。 これも東京だから、行こうかどうしようか迷っていたのですが…チケット発売日を過ぎていたにも関わらず、1F A列 28番という席を見つけてしまったので。(^^) そんな席を見つけてしまったら、これはもう『行け』という天の啓示しかない(笑)。 …ってことで行ってきました。 しかも、いつもの貧乏旅行よりもちょっとだけ奮発して。
その甲斐あってか、最高に素晴らしい気分でした。 例えて言うなら、『イーストウィック…』はオードブルでした。 『リチャード三世』はもちろん、メインディッシュ…程よく焼けた子羊のローストに濃厚なマデラソースがよくマッチしていて…って語りたいくらいに(笑)美味しい舞台でした。 蜷川氏の舞台は当たり外れが大きいと何度も力説しているが、これは大当たり!! …市村さんの演じるリチャード3世のなんと素晴らしいことか。 その他のキャストもほとんど前回公演と同じでしたが、アンが久世さんから香寿さんへと変わっていたり…若干寂しい思いをしました。 久世さんは涙を呑んで諦めもしましょう。 しかし、私は…有馬稲子さんは変わって欲しくなかった! 声の抑揚といい、場を引き締める立ち居振舞いといい…私はあの迫力が忘れられない。 どうしても、以前に…しかも初めての舞台でそんなすごいものを見せられているから今回はお母さんはイマイチ…。 しかし、今回はすごい収穫でした。 …夏木マリさん!すごい人だってのは前からわかってたけど…鬼気迫るものがありました。 市村さんはいつも楽しく安定して観てられますが、『演技の市村』と言われただけあって、私は市村さんに関する限りはミュージカルよりもストレートプレイの方を楽しみにしてしまいます。市村さんも前回より役がこなれて、こう…やはりお年の関係上、声の張りだとかダンスだとかが体力的なものは年々削がれていってるな…という気がしますが、でも、それを上回る何がしかのものを感じさせてくれる人です。 そんな、市村さんと夏木さんの共演。 リチャードとエリザベス王妃の掛け合いは本当に凄まじいとしか言い様もなく、しかも、台詞の応酬のたびに迫力が増していくかのようでした。あんなにすごいのは滅多に観れないどころか…一生のうちでも何度も観れないものでしょう。 …それだけでも一見の価値はあります。 息をすることすら忘れて、舞台に魅入ってしまう…そんな貴重な時間でした。 夏木さんは以前、マダム・テナルディエで観て、美人なのに、美人ということを捨て去った突き抜けた演技で、とても楽しませてくれる人だという認識はありました。 『ハムレット』ではガートルード王妃で、あの役をやるにはキャラクターが鮮烈過ぎてアバンギャルドすぎる印象がありました。市村さんとは親子であるよりも敵対する関係のが相乗効果でどちらもより素晴らしいものになっていた気がします。 TVドラマなんかはちょっと…な役が多かったので、あまり好きではありませんでしたが…舞台で観るのとでは全然違ってます。 はっきりと断言しますが、舞台の方が生き生きしていてとても素晴らしい人ですね。 前に観た時は夫を亡くしたアンをリチャードがかき口説く場面にくらくらとして、エリザベスの印象は残ってないんで、どなたがやってらしたのか曖昧ですが、今回はエリザベスのがインパクトありました。しかも、つ〜んと取り澄ました王妃の頃より、リチャードに追い詰められ、髪を振り乱して嘆くシーンの方が…ぐっと印象に残ってます。 もう一人のヒロインが…だっただけに、印象が強いのもありますが。
香寿さんは…ただ一言いいたい…感情を迸らせるのと、叫ぶのとは違うということを。
あと、もうひとつの発見は…リチャードを殺す役をやってらしたのは、昔、TVドラマで暴走族やチンピラ役ばかりをやっていた方…(^^; どこかで観たことがあったのはわかったけど、即座に思い出せなくて…悶々としてましたが、ラストの市村さんとの戦いで思い出しました。 …そうだ、昔もあんな乱闘ばかりやっていた(笑)。 それがわかっただけでも何だかすっきりしました。
あと、どうしてもいただけなかったのが…出演者の方が皆、目の上青いんです。(ノ_;) リチャードは全体的にああいうスタイルだからいいとして、クラレンス公もバッキンガムも…その方が舞台栄えするのかもしれないけど、間近で観ると怖かった。 下からライトがあたった時が特に。(>_<) それさえなければ……もっと平静で観ていられたのに。
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