Stage Diary
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Yoshimi.Aが観た舞台の感想です。
レポートではなく感想だけを載せてたりすることが多いかも…。(^-^;


2002年07月20日(土) 『オイディプス王』

暑さで焦げるかと思いながら、大阪まで行ってきました。
蜷川氏演出のギリシャ悲劇『オイディプス王』を観に…!
通いなれた(笑)場所にあるシアター・ドラマシティでの公演でした。
この劇場は観る側としては、どの席からでも観やすいので気にいってます。
…音響なんかが多少古びている論理で建てられた感が否めないものの、わりと好きな劇場になるのでしょうか。梅田コマ劇場も近くにありますが、こちらの劇場のが舞台との一体感をより感じられるので、コマよりも好きかもしれません。(広さもこれくらいがちょうどいいと感じるのです。コマは大きすぎるよ…)
まあ、好き嫌いを論じるなら大阪にあるそのほかの劇場よりも好きだと言えますが、阪急インターナショナルの地下にあるのでアフターシアターも楽しいというのが好きな理由の一つだと思います。(^-^;

ま、それはともかく…今回も、今までの蜷川演出の例に洩れず、通路まで使っての演出でした。通路を役者さん達が駆け抜けたりしましたが、萬斎さんは5列目くらいまで降りてきてくれただけ…麻実さんは全然降りてきてくれなかったので、ちょいがっかり…。まあ、いつも幸運ばかりはやってこないということですね。
今回、ドラマシティ倶楽部でチケットを確保したわりには後ろの方でしたが…通路脇の席なので、近くを役者さんが通ってくれるのは嬉しいことです。
でも、夏場はちょっと鬱陶しいですね…汗臭さが!
普段、男の人が香水をつけているのは敬遠したいんですが…こういうときには身だしなみとして必要だと思いました。本当に…!
不覚にも、匂いを嗅いでしまったとき…『香水が発展したのは媚薬としても然ることながら、水が貴重な文化において、消臭の意味もあった』…という香りについての書籍の一文を思い出してしまいました。

『オイディプス王』は麻実さんと子役の女の子達のほかは萬斎さんをはじめとして男の人ばかり……言葉を選ばずにはっきり言うと……むさ苦しいおっさんばかり!
萬斎さんがすっきり耽美系に見えるほど(失言)、濃ゆい顔のおじさまが揃ってました。若い人も…端正という言葉からは程遠く………。
面食いではないけれど、唯美的な私の苦悩と困惑をわかってください(苦笑)。
ただでさえ、暑苦しい表情なのに(悲劇ですから、シリアスな表情をしながら通る事が多いのです)汗臭いのは勘弁してください。<(_ _;)>
再演するときは夏を避けて欲しいモノです。(切実…)

そんなだもんだから、麻実さん…数少ない華ですね。
この方の存在がどれほど清々しく感じられたことでしょうか。『蜘蛛女のKiss』であの美しい足に惚れ惚れとして以来な気がしますが、相変わらずお美しかったです。今回は残念ながら衣装の関係であの美脚にお目にかかれませんでしたが…それでも、本当に5○歳とは信じられません!
気高く、気品溢れる王妃の役にぴったりでした。
真白な衣装に身を包んだ麻実さんの姿は本当にお美しかったです。
…それだけに、神託が成就した凄惨さが強調されるのですけど。
萬斎さんのオイディプス王と夫婦…と言われれば、本当に寄り添っている姿などはこれ以上もないくらい想いあい、労わりあっている夫婦だという感じがよくわかるのですが…でも!やっぱりどこか母親の顔をしているのが何とも素晴らしかったです。
この回の舞台自体はそんなに役者さん達のテンションが高くなく、淡々とそれぞれの役割を忠実に演じているようでしたが、麻実さんと萬斎さんの醸し出す雰囲気はとてもよかったです。ごくごく自然な空気の中に僅かな違和感が紛れこんでいましたが、それすらも計算されたものだとしたら、麻実さんと萬斎さんは役者として恐ろしいです。
むさ苦しいなりに(苦笑)、脇の人たちも演技の上手い人を集めてたので、見ごたえありました。嘆願者達が20人…赤の衣装で嘆きながら踊ってる場面は迫力がありました。
20人で声をそろえて喋るのはさぞ、大変だったろうと思います。
でも、さして声がぶれることなく重なってました。東京公演の後というのもあるでしょうが、蜷川氏の舞台はカンパニーの団結力は高いようです。
これは内容も然ることながら、キャスティングの勝利ですね。
蜷川氏の舞台はキャスティングの当たりはずれが大きいですが(笑)、この舞台は大当たりだと思えました。それぞれが役を大切に演じていて、それが客席にわかるほどだというのが…観ていて気分がよかったです。

それから、今回の舞台で音楽を担当なさってるのが東儀秀樹さんだったので、それも楽しみのひとつでしたが…東儀さんの音はやっぱりどこか懐かしい音がします。
不思議と笙の音などもギリシャ世界に違和感なく溶け込んでました。
嘆願者達の役者さん…20人ほどが笙を実際に吹いてらっしゃったのですが、人によって音が違うのが面白かったです。
笙の音というのは天上の音というように勝手に解釈していたのですが、天上に行けずに中空から落ちたような音もありました。
『ファーン』という音を出す人もいれば『ぷぁ〜ん』という音を出す人もいる(笑)。
それも、通路を通りながら吹いてくれたのでわかったことですが。
そんな中で、『オイディプス王』の要所要所で流れるテーマソング的な音に聞き覚えのあるメロディラインが流れてきて、ずっとどこで聞いたのか考えてたんですが、何回目かのリプライズで気づきました。

………『ハムレット』で聞いたメロディじゃん!

使いまわし…?リサイクルって言った方がいいの…?
それとも、蜷川的悲劇のテーマなの…?

どちらなのか気になるところですが、『ハムレット』の時にとても気に入っていたメロディラインだったので、また聞けて嬉しかったです。
しかも、アレンジは東儀さんがなさったのでしょうか。雅楽チックになるとまた変ったカンジで本当に同じ曲だと気づくのに時間がかかるほど違った味わいが楽しめました。

そして、長々語っている割にはわざとのように主役の萬斎さんには触れてませんが、この人は底知れなくて…どう語ればいいのかわからないと言うのが正直なところです。たった1度生で観ただけでは、よくわかりません…。(^^;;;
技術だけを論じるなら、演技者として(役者としてはまた別問題)必ずしも演技が上手いとは思わないんだけど…それでも、存在が気になってしまうという…だからといって、私の好みの顔をしているわけじゃないし、もちろん役者としては声だってイマイチだと思ってます。
映画の『陰陽師』は寒かった(笑)。狂言もTV観劇でなら観たことありますが、雰囲気作りは上手いけど、謡いがイマイチだった覚えがあります。<まだ若い頃のだったし、一緒に出ていた親父と比べちゃいけません。(^-^;
それでも、なお!彼はいたるところで存在を主張しまくり!!…今が旬だからか。(-。-;

真実を知り、自らを傷つけ、崩壊する様は血塗れなんですが…それだけに白を基調とした衣装とのコントラストが美しく、緊迫し、それがとても迫力があって…この場面が一番好きでした。物語的にも一番の山場ですしね。
多分、『オイディプス王』のことを聞かれたならば、真っ先にこの場のことを話すでしょう。それほどまでに強く印象に残る場面だったのです。

それなのに……どうして!これだけカチッとしたストレートプレイを演じる人々の中で、一人だけ!マイペースにいつもの狂言と変らないままの演技なの!?
ヘンだけど、そのマイペースさが調和してるのが面白すぎます。
ストレートプレイなどで培われた役者さん達と混じると狂言独特の節回しや、着物での動きが基調となっているのがありありとわかる立ち姿とかで、異彩を放っているのは当然なんだけど、それが面白いってことは私が色モノ好きということだけでなく、それだけに留まらない得体の知れなさを持ってるということですよね。
ホントに、立ち姿は綺麗でした。マントの捌き方が綺麗で…某4のつく劇団の某柳のつく役者に教えてやってほしいくらいでした。
もう少し端正なお顔で、もう少しお声が低くて渋い声だったら…はまってたかもしれないですが、そこまでいくには足りないエッセンスが多すぎるようです。
How I Wonder What You Are?
…とでも申しましょうか。
まあ、この先いくつかの舞台を観れば、わかる日も来るでしょう。

それまでにもうちょっと勉強しておかなくては…ということで、それを理由にこれからもいろいろな演目を観たいと思います(笑)。



2002年07月05日(金) 『源氏物語』

瀬戸内寂聴 現代語訳による 白石加代子の『源氏物語』第二夜…明石 でした。

う〜ん…これはなんと言ってよいのやら、迷う舞台でした。
先ず、以前に『百物語』を行き損ねていたので、朗読劇という形も初めてでした。実際に観るのはどんなものかと思ってましたが、『本を読みながら話を進める劇』に終らないのは白石さんならではでした。朗読主体で動きが少なくて、もっと退屈してしまうかも…とか、仕事帰りに行ったから寝てしまうかも…とか、思ってたんですが、まあ退屈することも寝ることもなくすみました。
普通の劇のようにオーバーアクションはないけど、結構、舞台を歩き回ったり…何より!何をしだすかわからないところのある人だから(笑)、目が離せない。

しかし、どうでしょ…現代語訳とは言えど、古語のニュアンスをそのまま伝えたいものはそのままだったので、現代じゃ使わない言葉だらけだし、和歌は当然そのまま…その意味も解説しながらの(親切といえば親切な)朗読劇でしたが、なんかまだるっこしさを感じてしまって…ちょこっと冗長…?
プログラムの中でも白石さんが語ってらしたのですが、『古文はほとんど外国語のよう』ですって。
『源氏物語』は小学校でマンガで読む古典…みたいなのでさわりだけ読んで、中学で現代語訳で読んで、高校くらいのときに姉が買った『あさきゆめみし』を全巻通読…その頃、好きだった漫画家が描いた『源氏物語』のコミックスを1冊読む。
それ以来、『源氏物語』に触れてもいなかった私はその意見に激しく同意したいです。

須磨・明石…と聞いていたので、明石だけかと思ったら、朧月夜や末摘花も朗読されていて得した気分といえば得した気分でしたが…第一夜は六条御息所で、夕顔も若紫も出る…と知っていれば、第一夜の方を見てみたかった。<若紫好き(笑)
でも、休憩の時に第一夜も見た人が『昨日の方が情念渦巻いてるような話だからわかりづらかった』と言っていたので、第二夜の方を選んでよかったのかも(笑)。
プログラムにも『野分』は原文…と書いてあったので、観に行ってたらツライことになっていたかもしれないとも思いました。(-_-;

しかし、登場人物によって声の調子を変えるだけで、場面が変わったことがわかるのは…やはり、才能としか言いようがないですね。
舞台や背景がシンプルだけに、そこが即座に宮中にも明石にもなる。何もないことで、かえって何処にでもなるというのは画期的なことですが、役者さんと演出家の先生がしっかりしてないとこれはコケてしまいます。
姫も、それぞれ性格の違いが声の調子だけでなく、細かなしぐさで表現されているところは流石なのですよ。
おまけに…源氏物語は恋の物語なので、艶やな場面も出てきますが…『これ以上はここではお見せすることができません』と言いつつ、エロティックな香りが…!
見せない方がイロイロ想像してしまって…エロティックだと思うんですが。(^^;

まあ、あとは末摘花ではお鼻を本当に赤くしてらっしゃって…笑いました。
笑えるところは軽妙に笑わせてくれる、シリアスなところはシリアスに…というのは瀬戸内寂聴さんの『源氏物語』そのままですね。
寂聴さんが『白石さんにやって欲しい』と思ってただけあってはまってました。
しかし、久々に触れた『源氏物語』だったわけですが、光源氏ってヤな男ですね。
言い訳の達人で、どの女性にも調子よくて…本当に、どーしよーもない(笑)。
それでも、『源氏物語』に惹かれるのは登場する女性たちの方が好きだからなのだけど…光源氏がどうしようもないような男だからこそ、物語が面白いのかなぁ。

…第三夜の予告も入ってましたが、いつやるんでしょうね。


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