日記でもなく、手紙でもなく
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2002年05月28日(火) 宇治平等院参道<稲房安兼>の茶だんご

 お元気でお過ごしのことと思います。
 今回は、久しぶりに宇治を歩いた話でもさせて下さい。

 京都駅前の宿で一泊した次の日の土曜日は、早めにホテルを出て用事を済ませ、久しぶりに宇治まで行くことにしました。
 JR奈良線<やまと路快速>に乗ると、六地蔵の次が宇治。京都から2つ目で、僅か15分で到着します。

 JRで宇治まで行くのは初めてのことで、駅前の地図をよく眺めた上、平等院の方向へ歩いていきました。道幅の広い道路から一本入ったところに宇治の商店街がありますが、ここを通っていくと、平等院の参道がすぐわかるところに出ます。
 この商店街、当然なのですが茶を扱っている店がやはり目立ちます。茶の「小売致します」と掲げた店もあって、いかにも古い感じ。ただ、そのような茶の店を除けば、よくありそうな商店街という感じもします。

 この商店街の中ほどに、特に古くから茶を扱う上林(かんばやし)の看板。本当に古そうな門構えなども残っています。
 平等院参道に入ると、いくつか店が並んではいるのですが、以前の記憶からすると、これくらいの数しかなかったかと思うくらい。長々と続く店という感じではありません。
 平等院そのものは、もう何度も見ていますので、左側に続く道をいくと、すぐ宇治川に出ます。

 川中にある小島にかかる橋を渡り、上流を望むと、本当に絵に描いたような風景が広がっています。新緑の小高い山が川の両側に連なる風景は、目に優しく映ります。嵐山の風景と、どこか一脈通じるものがありそうな。
 川の水量がかなりあって、流れも比較的速く感じます。

 橋を渡ったたもとに、宇治十帖の記念碑があり、宇治神社の入り口が目と鼻の先です。
 
 宇治神社には、日本最古の木彫狛犬像が残っているとはいうものの、神社の境内には、さほど見るものはなく、すぐ隣の恵心院に行くことにしました。
 小さい寺ではあるのですが、空海が開祖とされる、宇治ではなかなかの古刹のようです。
 小さい観音が本尊。外からこの像を(ガラス戸を隔てて)覗き見ることができます。

 目ぼしい建物はあまり残っていませんが、寺の敷地の半分以上は、花木が植え込まれた庭。ここを自由に見て回ることができます。ガクアジサイの青い花が既に開いていました。

 考えてみれば、日本の仏教の寺というのは、庭に木や花を植え込んでいるところがとても多いように思いますし、それが有名になっていることすらあります。確かに禅寺などでは、枯山水のような庭もありますが、それでもその周囲には草木が植え込まれていたりすることも多いのです。
 やはり、日本の寺空間、寺の敷地というのは、意図せずして、より<自然>を取り込んだ形になっているのでは、などと感じたりしていました。

 更に川沿いに歩くと、宇治発電所からの水が宇治川に流れ込むところに観流(かんりゅう)橋がかかっており、ここの流れの音はかなり大きく響いています。

 川沿いに更に上流方向に歩いていくと、木々のトンネルを通っていく感覚。夏でも比較的涼しそうな道です。今回は時間がなくて途中で引き返したのですが、観流橋から2km弱のところに、天ヶ瀬吊り橋などがかかっている場所があるようです。あと一時間くらい余裕があれば、そこまで行って戻ってくることができたのですが。

 平等院参道や宇治商店街などには、茶だんごを置いてある店が多数あります。茶を売っている店でも、茶だんごがお土産用に売られていることもあるのですが、菓子の店としては、参道入り口の宇治駿河屋と稲房安兼という菓子店が少し目立つ感じもします。恐らく京都に住んでいるような人なら、茶だんごは、このどちらかの店で買うような人が多そうです。

 我が家のおみやげは、どちらかというと、稲房安兼で買うことが多くなってきています。稲房安兼は享保二年創業というかなりの老舗。老舗ながら店構えはそっけない感じもあり、むしろ駿河屋のほうが、偉そうな店構えに見えてきます。
 宇治で売られている茶だんごというのを、いろいろ食べ比べてみたわけではないものの、4−5店比べてみても、この稲房安兼の茶だんごは遜色がないように思えます。
 生菓子で、本当に日持ちがしないので、その日のうちに家に帰るというような日でないと、なかなかおみやげにしにくいところが、難点といえば難点でしょうか。 京都の河原町とか京都駅ビルなどに置かれていれば、このだんごをおみやげに持って帰る機会も増えるとは思いますが、わざわざだんごだけ買いに(宇治まで)来るわけにはいきません。やはり5〜6回ほど京都に来て、やっと一回くらいおみやげにできる、みたいなところもあります。

 ところで、この茶だんごですが、一つ、二つ、また一つと食べているうちに、あっという間に十や二十くらい、大人でも子どもでも食べられます。飽きずに食べられる菓子というのは、なかなかお目にかかれるものではありませんが、この茶だんごはその右代表みたいなところがあります。
 中にだんごが入っている箱を手で持ち上げてみればわかるのですが、結構な重さがありますので、そんなに数は食べられない−−ような印象も受けますが、これが大違いです。

 一般的には串にささず、小さい粒のものを、楊枝で食べることになります。上品に一粒づつ食べていても、最初は味がわかりにくいので、2〜3粒まとめて食べるとこのだんごの特質がよくわかるように思います。
 ほんのりと茶の香り、ほんのりとした甘さは、なかなか他所では見つけることができません。
 このだんごを食べてしまうと、花見だんごというのは、いかにもお子様向けに作られているような感じもしてきます。
 たかがだんご、されどだんご。そんなことを言いたくなってしまう典型。
 
 京都へ戻る帰りの電車も、ちょうどやまと路快速になりました。ただ、奈良線というのは単線なので、快速が停まらないはずの駅で、反対方向の各停電車が来るのを少し待つ、ということもありました。
 
 少し、気分の良い時間が過ごせた土曜日でした。


2002年05月25日(土) 渋谷<雪月花>

 東京駅に夕方戻り、午後7時30分に渋谷で知人と落ち合うことにしていた。
 携帯に連絡が入り、遅れそうだという。

 胃の調子があまりすぐれなかったので、できれば和食にしたいという話をする。
 渋谷で和食といっても、まあまあのところは限られる。少し考えて<雪月花>まで行くことにした。たぶんこの店なら駅からかなり離れていることもあり、行けばすぐ席があるだろうと思ったからに他ならない。
 渋谷公会堂から原宿方面への坂を少し下ったところの地下にある店。

 現在は和風家庭料理と会席、それにバーだが、10年以上前は、和風家庭料理ではなくて、フランス料理だった。和風家庭料理というのは、7−8年ほど前からだが、1〜2回行ったきりで、かなりブランクが空いてしまった。
 当時、味的にさほど感心しなかったというのが、たぶん一番大きな理由だろうか。ただ、会席のコーナーには、その頃でも数度行った記憶が残っている。

 行ってみて、ちょうど、2人分の席だけが空いているだけだった。周囲には確かにこれという店は少ないのだが、久々に来て、あまりの賑わいに少し驚いてしまう。
 
 この賑わいが何か、続けて何品か食べてみるとよくわかった。以前来た時よりも、かなり洗練されたメニューが多くなっているような.... 根菜類がしっかり食べられるメニューが多いのも特色の一つ。
 かぼちゃと大根の炊き合わせでは、かぼちゃは型崩れせず、硬くなくほくほくに仕上げられて色もきれいだったし、その下に置かれた大根は出汁がよくしみてやわらかく仕上がっていた。
 魚料理は刺身は避けたのだが、甘鯛と蕪の酒蒸や、銀鱈の粕漬焼など、どちらも美味しかった。治部煮だけは、金沢の山芋を使ってとろりとさせた治部煮とは違って、少し濃い目のさらっとした出汁を使った治部煮だった。

 一品一品はさほどボリュームがないので、結果としてかなりの品数を頼むことになるが、どれもちょうどよい味に仕上げてあり、感心してしまう。恐らく、飲み物は別で、一人3〜4品+おにぎり(またはお茶漬け)くらいを頼むと、三千〜四千円くらいになる感じ。量は少なくなるが、2人でとりわけて食べるのなら、取り皿をもってきてくれるので、より多くの品数を食べることもできる。
 家庭料理とはいえ、会席で出てくるようなメニューも多々あるので、満足感は高いのではないかと思う。デザートには、わらび餅も置かれていた。

 お腹の調子が今ひとつでも、こういう食事をすると元気回復。そんなことがよくわかった日。


2002年05月24日(金) 京都駅八条口 ホテル・セントノーム

 20時東京発のぞみで、京都まで。比較的混んでいる。買った弁当を食べ終わって、1時間ほど比較的ぐっすりと眠る。気が付くと名古屋駅に到着する直前の時刻。
 のぞみだと、名古屋を過ぎると、あっという間に京都に着いてしまう感覚がある。

 22時20分過ぎ、ホテル・セントノームにチェックイン。ここは2回目の宿泊。
 京都駅八条口には、ホテル京阪やエル・イン京都とこのセントノームがやや東の位置に、新都ホテルが西の位置にある。ホテル京阪には3−4回泊まっている気がする。周りはさほど賑わいはない(店も少ない)が、駅には近いこと、翌朝京都駅からJRや近鉄などで移動する場合は、八条口のホテルというのは意外に便利に使える。
 同時に、新しい駅になってから、以前のように東側の地下鉄通路だけではなくなって、駅中央あたりで、烏丸口と八条口をつなぐ通路ができ、烏丸口方面にある駅から少し外れたホテルよりも、かえって便利かもしれない。

 セントノームは、八条口にあるホテルの中で恐らく一番新しいが、ちょっとはずれにある感じもある。はずれにあるといっても、駅からは歩いて僅かの距離。駅や竹田街道からは少しはなれている分、比較的静かな感じもする。
 
 5Fまでエレベータであがって、もらったキーの部屋ナンバーの位置を確認すると、角部屋だった。部屋に入ってラッキーと思ってしまったのが、今回はツインのシングル使用。
 前回ここに宿泊した時は、窓が駅に面した位置の部屋で、窓を開けるとホームのアナウンスなどもよく聞こえたのだが、今回は窓を開けていてもホームのアナウンスはさほど聞こえてこなかった。
 ホテルにしては低層の建物で、窓が片側引き戸形式で開くところが、少し気に入っている。

 ちょっとゆったりとした気分で、普段よりも早めに眠ることにする。


2002年05月23日(木) 熱波 Heat Wave


 インドの南の方のエリアで、このところ熱波に襲われ、一部のエリアでは最高気温が48℃にまであがり、その暑さのために死者が1000を越したと報じられていた。
 サハラ砂漠の真中なら、日中それくらいにはなるだろうが、人の多いインドでこんなに温度があがってしまうと、いったいどうなってしまうのか、想像もつきにくい。

 先週小雨が降って、少し温度は下がったらしいのだが、20日以降は、またまた熱波が襲っているという。

 以前、マルタ島に1年ほど住んだ人の本を読んだ折、あの島も夏は日中40℃以上になるのだが、乾燥しているので汗が出ない、そのため普通に動いてしまうと疲労困憊してしまうという。
 現地の人は、そのような時間帯は、お昼寝の時間に充てているという。寝ないと体が持たないのだ。

 48℃、寝るくらいだけで良いものか? とも。


2002年05月19日(日) 埼京線工事


 午前中は久しぶりに太陽が顔を覗かせる。
 布団をベランダに干し、昼過ぎいつもの買い物から戻ってくると、またまたかなり曇ってきたので、あわてて取り込む。
 午後3時過ぎ、新宿まで行く用事があり家を出ると、とうとうぽつぽつ降り出した。

 赤羽で降りて乗り換えようと思ったら、本日は工事のため赤羽−恵比寿間は、午後10時頃まで埼京線が動いていない、赤羽で折返し運行だという。そういえばこのところ、そのようなアナウンスを埼京線に乗るたびに、聞かされていたことを思い出した。

 しょうがないので、秋葉原か神田で、総武線か中央線に乗り換えることにしたら、電車の中で急激に眠くなり、気がついたら神田を出たところだった。
 中央線で新宿まで出たが、埼京線が新宿まで来ない分、人が少なくなっているかもしれないと思ったが、まったくそのような雰囲気は感じられなかった。あたりまえといえばあたりまえなのだが。

 新宿からの戻り。まだ午後10時には2時間ほどかかる時刻、JRの改札近くでは、池袋の一つ先、板橋までおいでになる場合は、池袋から東武東上線をご利用ください、というアナウンスが聞こえる。十条のことは何も言っていないようだ。
 赤羽から先へ行く場合は、京浜東北か、上野から高崎線・宇都宮線を使って(赤羽へ出て)欲しいと言っている。休日とはいえ、今までほとんど一日、工事のために不通になるようなことはさほどなかった気がする。
 できたばかりの頃と比べると、今や埼京線もかなり重要な幹線になってきているようだ。


2002年05月16日(木) 銀座の昼顔の花


 既に営業をやめた銀座第一ホテルの脇の生垣に、日曜日見たのと同じ昼顔の花一輪。同じ色、同じくらいの大きさで。
 しかも、同じ赤い花をつけた大きさも同じくらいのつつじの中に咲いている。

 偶然通りかかり、偶然同じような環境・周囲にほとんど同じ花を見つけてしまった偶然。


2002年05月12日(日) 昼顔の花

 交差点での信号待ち。
 脇に小さなつつじの生垣があって、花をつけているものも、既に花がほぼおわって枯れたような株もあるのだが、よく見ると、雰囲気が違う花をつけているものもある。
 何だろうと良く見ると、薄い肌色とピンクの間の色をした昼顔の花。3つほど、そのつつじの株に絡まって咲いている。

 ここ2〜3日、少しうっとうしい日だったが、今日はさわやかな、いかにも5月らしい日。


2002年05月09日(木) 京都へ行った折の話など

 お元気でお過ごしのことと思います。
 連休前半、京都へ行った時のご報告を兼ねた、Season's Greeting メールです。以下、お暇な折にでもご覧下さい。

  ***

 今回、特に関西までどうしても行きたかったということではないのですが、3月の春分の日がちょうど木曜日で、その前後にいくつか仕事の予定があったため、墓参を見送ったことが一つ。もう一つの理由は、一昨年垂水で喫茶店をやっている知人のところに、貸出用CDを送ってはいたものの、店のほうまでなかなか行けないうちに、(葬儀やら、墓をたてかえたいとか、あるいは四十九日だとか、京都まで行く機会は多くなった半面、用事で時間をとられてしまい、友人や知人に会う機会や時間がとれないまま、)あっという間に1年半近く経ってしまい、CDの追加・交換にそろそろ行こうかなどと思っていたことなどがありました。
 それなら、ということで、予め知人の店のほうの都合だけを確認すると、4月27日(土)は普通に営業しているということでしたので、その日に垂水まで行き、夜中に京都まで戻り駅に近いホテルに泊まることにしました。

 午前10時過ぎの新幹線に乗ると、途中山頂にかなり雪がまだまだ残る富士山がよく見えました。去年から今年にかけて、明るい時間に6回ほど、関西方面まで行っていますが、富士が見えたのは今回入れてやっと2回だけです。

 梅田では、例によって、ラテン専門のCD店に久しぶりに寄りました。やはり、棚を物色すると、初めて見かけるような盤が多いのも、この店の特長でしょうか。 何枚かを買い込んで、ふと気がつくと既に午後3時半近く。午後4時過ぎくらいには垂水に着きたいと思っていたので、あわてて大阪駅まで戻り、神戸方面へ向かう電車のホームに出ると、2番目の電車が新快速。
 乗ってから、確か垂水というのは、新快速は停まらなかったと思い直しました。芦屋、三ノ宮までは、ほんとうに僅かな時間しかかからない感覚です。神戸で各停の電車に乗り換えた時に、やっと垂水の位置というのが、子どもの頃一度だけやってきた、須磨と舞子の間だということを初めて認識しました。
 小さい子供のころに一度だけ、須磨−舞子−明石とやってきたような記憶がありますが、その後神戸に来たのは、一番西が神戸駅。三ノ宮までは何回かきてはいるものの、目と鼻の先の須磨や舞子には何十年かぶり。もちろん、子供のころの記憶が残っているわけでもないので、初めて来るような感覚です。
 須磨のあたりから線路は海岸近くを通り、明石海峡大橋などがよく見えてきます。

 垂水駅東口から出て、知人のやっている店は、東口から歩いてすぐのところにあるかなり大きい建物の1F。駅から一番近い、ビルの南西角にある店の位置表示を見たら、ビル南側に並ぶ店の一番東にある店でしたね、これが。
 駅前は工事中で、後で店をやっている知人に尋ねたところ、ビルが建つわけではなくて、駐車場とグリーン・エリアになるとのことでした。

 土曜日は暇だということだったのですが、午後4時半頃に着くと先客もあり、行った後でも更に2人ほどお客がありました。本当は、持って行く時に納品書ならぬ、貸出CDリストを作っておくのが順当なのですが、そのリストを作る間がなかったので、持っていった貸出用CDを取り出してカウンター席の一番左側に積み上げ、泥縄ですが、そこでリスト用のメモを作成したりしていました。
 客は顔見知りの人が多いようで、CDを積み上げていると、クラシックはだいたい聴いたのでこれから何を聴こうか考え中という人が興味深そうにそのCDに目を遣っていました。
 それならカンツォーネなどは、ということで持っていったウィルマ・ゴイク(といっても、歌手の名前ではあまりわからない人が多いのですが)その盤の2曲目に入っている曲(花のささやき)をかけてもらいました。コーラス部分は確かに聞き覚えがある、20年ほど前にこの曲を聞いたことがある、という話になったりもしました。

 リスト用のメモをつくり、シールを貼り込み終ると、午後6時半近くになってしまっていました。午後7時くらいまで店にいた後で、歩いて5分ほどの中華料理店へ行くことにしました。
 オリエンタル・ホテルでシェフをやっていた人が、その後この店をやっていて、ここの味は保証つきだということでしたが、烏賊を使ったつきだしが出てきたのを食べてみてすぐ納得しました。なるほど。

 9時を回って、垂水駅前で、ではまた、ということで分かれた後、神戸で乗り換えた新快速の中で、結構ぐっすりと眠りこけてしまいました。ふと気がついたら既に乗り過ごしていて大津。どうも雰囲気が田舎っぽい.....

  ***
 
 ホテルは、悪くもないかわりにさほど良かったという感激もない、いかにも駅前のホテルではありましたが、予約した時の金額に含まれているバイキング形式の朝食のパンは、どれも比較的美味しい感じがしました。卵やソーセージ、サラダなどは、このようなホテルではまあまあのところでしょうか。この朝食がついていれば、京都でこの値段なら、さほど悪い気はしませんでしたね。

 ホテルを出たのがまだ午前8時30分頃で、どこかを見てからわが家の寺へ向かおうという気になり、来たバスに乗り込んで京都博物館前で下車しました。博物館に入っていく門の横に、建仁寺開創800年記念の特別展示案内、俵屋宗達の風神・雷神図が描かれたポスターが掲示されていました。これはいいかもしれないと考えたのですが、博物館の開館は午前9時30分。時刻はまだ9時前ですので、かなり待つことになってしまいます。

 博物館の目の前にあるのが、三十三間堂(正式名称・蓮華王院)。いかにもおのぼりさん風ではあるけど、まだ中をよく見たことがないので、博物館の開館を待つよりも、ここを覗いておこうと考えました。
 何回も京都に来ている割に、その上この左隣にあるパークホテルに4〜5回は泊まったことがあるにもかかわらず、実はこの三十三間堂というのは、見たことがなかったのです。見ても、京都観光ガイドの写真のように、多数の千手観音が並んでいる、というわかりきったイメージしかなかったので、入ってみようという気にならなかったのだろうと思います。

 拝観のための入口は、見事なほど団体観光客向けにしつらえてあることに感嘆しながら、堂に入ると、写真では何回も見ているものの、その千手観音が整然と並んだ光景は、やはり迫力がありました。まさに千躰仏。一体が思っていたよりも大きいので、一層迫力があります。
 実は、(恥ずかしいことに)よく知らなかったのが、中央に巨像(中尊)の座した千手観音像があって、千手観音の前には風神雷神、観音二十八部衆なども置かれているということでした。千手観音(正しくは十一面千手千眼観世音像)は、中央の巨像の両脇に500体ずつ、合計1001体置かれていることになります。あわせて二十八部衆は、インド起源の仏像が多いのも、やはりこの寺の古さをよく伝えているようです。
 中尊の写真というのは、あまり本などには出てこないのですが、この寺の仏像配置の一番興味深いところは、このあたりにあるように思います。

 中尊は湛慶(運慶の長男)の作と伝えられる鎌倉期の作品で、創建時(平安期)の千手観音像は124体がまだ残っているとのこと。
 ちょうど仏前結婚式が開かれるようで、中尊の前では、その準備が行われている最中でした。マイク・テストをやっている僧などもいて、観光客向けの入口のつくりといい、商売熱心な寺であると実感しましたね。

 この千手観音を一通り見ると、裏手へ回って入口へ戻ることになりますが、この通り道に、寄進されたものや、寺にこっそり捨て置かれたような仏像が並べられているのを眺めると、その中に結構変なものもあり、可笑しくなってしまいます。

 更にバスで五条坂まで出て、そこからぶらぶらと、五条松原の方向へ。
 五条坂というと、清水焼の店や窯元などが集まっているような場所です。かつて、清水焼の窯というのは、清水寺の管理下にありました。この付近の土は、さほど良いものではなかったため、清水焼の場合デザインで勝負せざるを得なかったとも言われています。このへんも、なかなか京都的ではあります。

 少し方向を修正しながらも、大黒町通にある壽延寺へ辿り着き、一周忌のスケジュール確認などをした後、確かここから少し大きい寺が近くにあったことを思い出し、その方向に向かって歩いていきました。
 その寺はすぐ見つかりました。何のことはない、開創800年の建仁寺でしたね、これが。南門から入ると、生け花のイベントが大々的に行われていたり、草鞋を履いた托鉢姿の僧が3人または5人、広い境内を歩いていたりして、なかなか活気があります。

 方丈と法堂に入れるようで、特に何の期待もなく入場料を払って入ってみました。方丈のほうの橋本関雪による「生々流転」と名づけられた襖絵などが、枯山水の庭に面した部屋にあるのを覗き、また、裏手に回ってみると、そこに俵屋宗達筆と伝えられる風神雷神図が目の前に置かれていました。
 博物館の中へ入っても、ポスターに描かれていた作品は、見られなかったことになります。一瞬唖然。

 法堂のほうでは、本尊とともに、開創800年を記念して天井に描かれた小泉淳作双龍図を見ることができます。本尊を拝む人よりも、腰をおろして双龍図を眺めている人が圧倒的に多かったのも、面白いところです。

 買い物があったので、まず高島屋の地下を覗いてみたところ、<きょうの味どころ>というのがあって、そこで、数日間ごとに、異なる店の味が楽しめるしかけになっていました。<きょう>は京と今日がかけられているようで、安くはないものの、実際の店で食べるよりはお手軽な価格設定になっています。

 ちょうどその日は、伏見・魚三楼の点心コース。
 初鰹の季節に入っていますが、その鰹の燻製が粒マスタードとともに、最初に供されます。上に鰻を乗せ、もち米を小さな「せいろ」を使い蒸しあげた最後(その後更に果物のデザート)まで、決して値段が高いと感じさせないところは、やはり京都の味処らしいと思いました。

 錦で本わらび粉と、つくりたての七味(中辛七味と柚子七味)唐辛子を買って帰ることにしましたが、このわらび粉の話や七味唐辛子の話は、既に私のHPに掲出していますので、もし関心あるようでしたら、そちらのほうをぜひご覧下さい。

 本当は、午後宇治のほうへ行くか、あるいは嵐山へいくか、どうしようかなどと考えていたものの、午前中かなり歩いたので、疲れ果ててしまい、カフェに腰を下ろすと、またすぐ来るから、もういいか、という気になってしまった京都ではありました。

  ***

 連休後半は、水墨画の雪村展(松濤美術館)、雪舟展(東京国立博物館)、ミロ展(大丸ミュージアム)などを覗くに止まりました。雪舟展はかなり混みあっていました。(この展覧会のコメントについても、HPのほうに既に掲出済ですので、もし関心おもちでしたらこちらのほうも、どうぞ。)



2002年05月05日(日) 七味唐辛子の容器


 二種類の七味唐辛子を買ってきたこともあり、それを入れて蓋がきちんと閉まるようなテーブルウェアがないか、昨日から店に売っていないかと探していた。
 昨日はちょうど絵を見に行ったついでに、上野(御徒町)にある100円ショップあたりに置かれているに違いないと目星をつけて行って見たら、蕎麦屋に置かれているようなプラスチック製の七味入れはあったが、気に食わないのでやめる。吉池にも松坂屋にも、これというようなものがなくて、意外にこの手の容器というものがないということを実感する。

 今日も、東京大丸へ絵を見に行ったついでに、食器や雑貨売り場を覗いてみたが、やはりこれというものがない。
 蓋付きのガラスの小さい容器というのは、もともと何かが入っているようなものを使い切って、それを使うというパターンが多いから、その手のものは売られていないのかと、結構訝しく思ったりする。ハーブの売り場などに、もっと置かれていても良さそうなものなのだが。

 こうなったら、やはり池袋西武あたり。
 今回の目星は当り。
 透明なガラス容器で、まわして閉める木製の蓋が付いている。一つ220円。高くはない。2つ買っていくことにする。

 モノはあるようで、探さないとなかなか見つからないものもまだまだあることを実感する。


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