私は昔 柔らかく波打つ豊かな髪を持っていた
ジョキジョキ 跳ねるように軽やかにハサミは 私の髪を切り落としていく
私は目を瞑り あのころの私を想いだしている
涙を流すたびに 私の髪は短くなった
孤独を感じるたびに 私の髪は短くなった
頼ることをやめようと思うたびに 私の髪は短くなった
出来上がった私を見て 鏡の中の私が微笑んだ
軽やかになった私を見て 娘が言った ママさんバレーみたいね
こんなにも辛いとき
私は あなたとの別れを想い
あなたは 私と生きる道を探す
こんなにも辛いとき
私は あなたの愛を 信じようと思う
私は両親に たっぷりと愛されて 育った
しかし妹は言った それは妄想よ
父の愛なんて 最初っからなかったし 母の愛も大したものじゃない
お姉ちゃんは 愛されたかったから 愛されているという妄想を 作り上げたんだわ
母の愛を見失って さまよう私に 妹の言葉は まさに青天の霹靂
私が信じていた愛など 最初から全て 妄想だったのだろうか
愛なんて 現実に存在するものではなく 妄想の世界に存在するものなのだろうか
今 詩は書けません
冷たい滝の下 真っ白い水しぶきの中で 心が縮み上がっているので
今は無理なのです
もう少し経ったら もう少し大きな心になって もう少し強い心になって 滝の下から出てきますから
それまで待ってください
でも 大きくも強くもなっていなかったら ごめんなさい
今は 何を言っても 愚痴になるから 何も 言わないでおこう
昨日があるから 今日がある
昨日に感謝して 今日を生きよう
まんざら 歳だけを取ったわけではないよね この私
春霞の空に 微笑みかける
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